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戦時徴用の貨物船めぐり、中国当局が商船三井の船舶差し押さえ

商船三井、差し押さえの経緯を説明、「突然執行を受けた」

2014年4月21日 (月)

話題商船三井は21日、同社運航の鉄鉱石運搬船「バオスティール・エモーション」が19日に中国浙江省で中国当局の差し押さえを受けた、と発表した。

差し押さえられた理由について、同社は1999年に合併したナビックスラインの前身である大同海運が、中国船主の「中威輪船公司」から定期傭船し、その後、日本政府が徴用した後に「貨物船2隻が滅失した」ことから、「中国船主ら原告に対して総額29億円の損害賠償金を支払うよう、中国上海市高級人民法院から判決を受けていたことに関連している」と説明。

同社は中国最高人民法院に対して再審請求を行っていたが、この請求が棄却されたため、「原告側に示談交渉を働きかけていたところだった」という。

同社の説明によると、商船三井の前身の一社となる大同海運は1936年6月と10月に中威輪船公司から順豊号、新太平号を定期傭船する契約を締結したが、傭船期間が終了する前に日本政府が徴用。両船は徴用中に沈没、消息不明になった。

64年に中威輪船公司の代表者の相続人が日本政府を相手取り、東京簡易裁判所に調停を申し立てたが、67年に不調に終わり、70年には原告が東京地裁に損害賠償請求を提訴したが、74年に消滅時効の成立を理由として棄却した。その後、原告は東京高裁に控訴したものの、76年に取り下げ、東京地裁の判決が確定していた。

87年初になって中国の民法上の時効制度が通知され、88年末が損害賠償の提訴の期限となったため、中威輪船公司の代表者の相続人が88年末に大同海運の後継会社となるナビックスラインを被告として、上海海事法院に定期傭船契約上の債務不履行などによる損害賠償請求を提起。07年12月7日、上海海事法院で商船三井に29.2億円の損害賠償を命じる一審判決が出された。

同社は判決を不服として上海市高級人民法院(第二審)に控訴。10年8月6日、上海市高級人民法院から第一審判決を支持する第二審判決が出され、最高人民法院に再審を申立てたが、11年1月17日に却下された。

こうした経緯で同社は「上海海事法院と連絡を取りつつ、和解解決を実現するため原告側に示談交渉を働きかけていたが、今回、突然差し押さえの執行を受けた」として、想定外の事態だったことを明らかにしている。