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技術を成果へ、現場起点の改革5件にJILS大賞

2026年10月19日 (月)

認証・表彰日本ロジスティクスシステム協会(JILS)は19日、「ロジスティクス全国大会2026」を開催し、2026年度「ロジスティクス大賞」の表彰式と受賞記念講演を行った。

大会は「経営とともに進化するロジスティクス」を統一テーマに、6日と19日の2日間にわたって開催。表彰式では、ロジスティクス大賞ノミネート委員会委員長を務める横浜国立大学大学院国際社会科学研究院の鈴木定省教授が選考経緯を説明した。

鈴木氏は、今年度の応募件数が例年に比べて大幅に増加し、物流DX(デジタルトランスフォーメーション)、ロボティクス、物流プラットフォーム、社会課題への対応など、多様で質の高い事例が集まったと報告。創造性、成果度、経営革新度、技術革新度、社会性、努力度を審査した結果、特別賞2件、奨励賞3件の計5件を選出したと説明した。

表彰式ではJILSの大橋徹二会長が各受賞者を表彰。続く受賞記念講演では、受賞企業・団体の担当者が取り組みの背景や実践内容、成果を紹介した。

業界共通基盤で軽貨物の安全と適正取引を推進

社会性奨励賞を受賞した全国軽貨物協会は、軽貨物運送業界の安全管理と適正取引の可視化・標準化を目的とする共通デジタルプラットフォーム「K-LINK」の構築と社会実装について報告した。

個人事業主が中心となる軽貨物業界では、安全管理や運行実態の把握、適正取引の確保が課題となっている。K-LINKは、ドライバー自身がスマートフォンなどで点呼、車両点検、業務記録などを管理し、必要な情報を荷主や元請けと共有できる仕組みだ。

全国軽貨物協会は、個社ごとのシステム導入ではなく、業界共通基盤として普及させることで、安全管理の徹底と取引の適正化、業界全体の信頼性向上を目指す考えを示した。

K-LINKの普及を通じて軽貨物事業で顕在化する課題解決に取り組み、そこを起点に日本の物流全体の改善を目指す姿勢だ。

デジタルツインで医療物流の現場改善

現場革新奨励賞を受賞した安田倉庫とイデアロジー(東京都新宿区)は、デジタルツインと最適化シミュレーションによるメディカル物流変革をテーマに、大型設備投資に頼らず生産性を高めた取り組みを紹介した。

医療機器を扱う物流センターの出荷工程をデジタル上に再現し、複数の改善策を比較した結果、作業効率を制約していたボトルネックはピッキング速度ではなく、階層間の搬送能力であることが判明。従来のシングルピッキングからの変更をシミュレーション検証した結果、小口注文をまとめてピッキングするマルチピッキング方式を採用し、WMS(倉庫管理システム)との連携によって、日々の出荷量や配送方面などに応じた作業指示を最適化した。

その結果、出荷作業の人時生産性は26%向上、作業者の歩行距離は25%短縮、トラックドライバーの平均待機時間も20%削減。改善によって生まれた余力を医療機器のメンテナンスなど高付加価値業務に振り向けており、データに基づく業務設計によって既存設備の能力を引き出す改革事例となった。

店舗供給を止めず、荷役の省人化を実現

業界革新奨励賞を受賞した北海道ロジサービス(北海道江別市)は、日本初となる「エルゴローディングシステム」の導入によって、荷役負担の軽減と物流効率化を両立させた取り組みを発表した。

同社はコープさっぽろの店舗物流、宅配物流を担っており、今回の取り組みでは全道130店舗に対して商品供給を止めることなく、老朽化した40本のケースソーターを刷新。ダイフクと共同開発した半自動積み付け設備では、「重力からの解放」を掲げ、重量物を持ち上げる作業をローラー上で滑らせる水平動作に変更。シャトルラックとの連携で積み付け順も最適化して積み替えなどの付帯作業も削減し、作業者の身体的負担と判断負荷を軽減した。

積み付け作業は従来の40ラインから6機による定点作業へ移行し、作業人員を18人から6人に削減、年間5000万円の人件費削減を実現した。さらに店舗の棚割りに合わせた仕分けにより、品出し作業の効率化にもつなげている。

積み付け作業は従来の40ラインから6機による定点作業へ移行し、作業人員を18人から6人に削減、年間5600万円以上の人件費削減を実現した。さらに店舗の棚割りに合わせた仕分けにより、品出し作業の効率化にもつなげている。

AMRとデジタルピッキングで生産性向上

現場革新特別賞を受賞したGROUND(千代田区)は、再春館製薬所の発送センターにおけるAMR(自律走行搬送ロボット)とDPS(デジタルピッキングシステム)のリアルタイム連携による生産性向上の取り組みを紹介した。

対象現場は、取り扱い品目数が比較的少なく、出荷頻度が高い一方、AMRの走行スペースが限られるという特長を持つ。そこで従来のAMR活用方法を見直し、DPSがピッキングを指示し、AMRが搬送を担う役割分担を設計。両システムをAPIで連携させ、作業者の歩行や商品を探す時間を大幅に削減した。

その結果、増員することなく出荷生産性を2倍に向上。従来必要だった在庫残数チェックも撤廃して作業工程を削減した。将来の出荷量拡大を見据え、既存設備と限られたスペースを生かしながら、人とロボットの役割を最適化する物流DXの実践事例となった。

フィジカルAIで工場内物流を統合制御

技術革新特別賞を受賞したMujin Japan(江東区)と三五(愛知県みよし市)は、フィジカルAIを活用した統合制御により、工場内物流の抜本的な改革を実現した取り組みを発表した。

自動車部品メーカーの三五では、生産ラインの集約・コンパクト化を進める一方、製品保管スペースが不足し、外部倉庫への一時保管と工場への戻し輸送が発生していた。そこで新たに多層階建ての製品倉庫を整備し、Mujinの統合制御システムによってロボットやAGV(無人搬送車)、垂直搬送設備を連携。2・3階の無人運用と、入庫から出荷までの自動搬送を実現した。

18台のAGVを活用した柔軟な搬送システムにより、在庫を工場内に集約して外部倉庫との往復輸送を解消し、物流コストや作業負荷を大幅に削減した。個別設備の自動化にとどまらず、生産と物流を一体で捉え、工場全体の最適化を図る先進事例となった。

5事例の受賞事例は、いずれも先進技術や新たな仕組みを導入するだけでなく、それらを現場に定着させ、生産性向上や作業負荷軽減、業務品質向上といった具体的な成果につなげた点が特長となった。

鈴木教授も、「それぞれ異なる課題に取り組みながらも、技術や仕組みそのものを目的とせず、現場や業界が抱える課題を起点に、技術、データ、現場での工夫を組み合わせて成果を生み出したことが共通している」と総括。物流の改善・効率化は、個別現場にとどまらず、サプライチェーン全体の最適化や企業経営の変革、働き方や社会的課題の解決へと広がっているとし、今回の受賞事例が企業や現場の枠を超えて、業界全体に波及することへの期待を示した。

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