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国交省・経産省の議論から見る適正原価制度の課題

2026年10月19日 (月)

ロジスティクス第4回となる適正原価の設定に向けた有識者検討会が19日に開催された。トラックドライバーの処遇改善と物流の持続可能性確保に向け、国土交通省が主導して議論が進められている「適正原価制度」。その具体的な制度設計を議論する今回の検討会では、荷主企業を所管する経済産業省から、制度の実効性と経済への影響に関する審議資料が提出された。

検討会ではまず、国交省から適正原価制度の具体的な運用基準案が提示された。同案では、適正原価を継続して下回る取引が行われた場合における是正指導の対象範囲や手続きなど、実効性を確保するための検討案が示された。

▲第4回適正原価の設定に向けた有識者検討会の様子

国交省案では、適正原価を継続して下回る取引があった場合、運送事業者だけでなく違反の原因行為を行った荷主も是正指導の対象となり得るとされている。これに対し経産省の報告では、適正原価が運送会社全体の一定期間の総稼働時間や収支で判定される仕組みであるため、個別取引を行う荷主側において「自社の発注内容が基準に適合しているか」を把握する難しさが指摘された。

あわせて、閑散期などの合理的な契約が事後的に違反とみなされる懸念や、荷主が確認すべき事項・責任範囲の明確化の必要性について意見が述べられた。

物流業界が直面する2024年問題を乗り越えるため、荷主と運送事業者は現在、荷待ち時間の削減や積載率向上など、輸送効率化に取り組んでいる。

経産省は、稼働時間や走行距離を基礎に算定する仕組みでは、荷待ち・荷役の削減などによって時間や距離を短縮した結果、適正原価の算定額も下がり、効率化の成果が運送事業者に十分還元されない可能性があると指摘した。効率化へのインセンティブを損なう懸念があるとして、荷主側からは、その成果が荷主・運送事業者双方に適切に還元される制度設計を求める意見が示された。

国交省案では、ドライバーの人件費などに加え、人材育成やBCP対策など「事業を継続して遂行するために必要不可欠な投資の原資」も適正原価に含めることが検討されている。 これに対し経産省は、荷主企業へのヒアリング結果から、企業会計上、投資の原資は「利益」から生み出されるものであり、「原価」に含めるべきではないと指摘。安全かつ安定的な輸送力供給に必要な「原価(経費)」と、個別サービスの対価である「運賃(利益を含む)」を明確に区別すべきだと主張した。採用する指標や数値の根拠を客観的にし、事後検証できる仕組みがなければ、荷主側の納得感は得られないとのスタンスを鮮明にした。

トラック事業者の人件費を「全産業平均並み」とする目標や、物価上昇分を反映する仕組みについても、経産省は慎重な姿勢を示した。急激なコスト増はサプライチェーン全体に波及し、最終的に消費者物価を押し上げる可能性があるとして、日本経済全体への影響を抑える導入上の工夫が必要との見解を示した。十分な準備・周知期間の確保や、長期の安定輸送に向けた双方合意の合理的な契約(長期契約など)への柔軟な対応を求めた。

第4回検討会では、ドライバーの処遇改善と早期の賃金底上げを重視する国交省側の制度案に対し、経産省からは荷主の予見可能性やサプライチェーン全体への経済的影響を踏まえた制度設計を求める意見が示され、両省の視点の違いが浮き彫りとなった。

制度が「絵に描いた餅」や「経済の足かせ」とならぬよう、次回(第5回)予定されている制度の全体像と論点整理において、これら経産省側のリアルな懸念がどう制度に反映されるのか。適正原価制度の真価が問われる局面を迎えている。

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