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ヤマトHD、会長退任要求と赤字の中間決算

2026年11月4日 (水)

財務・人事米ファラロン・キャピタル・マネジメントが、ヤマトホールディングス(HD)株を5.02%保有していたことが分かった。2日に関東財務局へ出された大量保有報告書は、会長の長尾裕氏に代表取締役と取締役を退くよう提案したと記す。4日の東証でヤマトHD株は急伸し、同日には中間決算も出た。ニッコンHDで不動産を問うたファラロンが、ヤマトで問うのは人である。(編集委員・刈屋大輔)

前例は不動産、今回は人事

ファラロンがニッコンHDで取った経路は、ヤマトHDの先行きを考える最も近い材料になる。同社は2025年1月にニッコン株5.05%の保有を届け出た。その後、10.02%、19.72%と短期間で4倍近くに膨らんでいる。

25年5月、ニッコンはファラロンと契約を結んだ。ファラロンは6月の総会に出る取締役選任案に賛成し、取り決めた割合を超える買い増しを一定期間控えると約束した。ニッコン側は、ファラロンが推薦した社外取締役候補1名を加え、不動産の保有・管理・運営方針を見直す社外取締役だけの特別委員会も設けた。

ニッコンをめぐっては、26年5月以降、非公開化の検討入りが相次いで報じられた。会社は非公開化を開示しておらず、ファラロンの要求が引き金になったのか、会社自身の判断なのかは、公開されている情報だけでは見極めがつかない。

一方、ヤマトHDへの要求は、中身が違う。報告書は、26年に社長となった櫻井敏之氏が改革を進めるには、長年社長を務めた長尾氏が代表取締役と取締役を退く必要があると主張する。ファラロンは書簡と面談で、長尾氏の代表取締役からの解職と取締役退任を求め、櫻井氏以外の取締役をすべて社外取締役とする監督型の取締役会への移行も提案した。重要提案行為等の欄は「該当なし」で、今のところ株主提案は出ていない。ただ、役員の選任などで提案に踏み込む可能性には触れている。

▲ヤマトHDの長尾裕会長

市場は、この要求にすぐ反応した。4日の東証プライムで、ヤマトHD株は前営業日比11.5%高の2194.5円で取引を終えた。経営改革への期待が買いを誘ったとみられる。

「事業環境」で説明がつくか

ファラロンが退任を求める根拠は業績にある。ヤマトHDは22年3月期から26年3月期まで、期初に掲げた連結営業利益の予想を5期続けて下回った。不足額は、22年3月期が178億円、23年3月期が309億円、24年3月期が399億円、25年3月期が358億円、26年3月期が117億円である。この間に社長だったのは長尾氏だ。

会社側が反論するなら、論拠は事業環境の変化だろう。だが宅配でヤマトと競うSGホールディングスは、26年3月期の売上高が1兆6448億円、営業利益が902億円だった。収益はヤマトの1兆8657億円に及ばないが、営業利益は3倍を超え、営業利益率は5.5%とヤマトの1.5%を4ポイント上回る。逆風だけでは、この差を説明しにくい。

据え置かれた営業利益420億円の重み

4日に発表された27年3月期の中間決算が、その検証材料になる。4~9月の売上高は9068億円と前年同期並みで、営業損益は17億円の赤字だった。前年同期から20億円改善したが、8月に公表した営業損益ゼロの予想には届かなかった。運賃の適正化で164億円を積み上げた一方、取扱数量の減少が84億円、物価上昇や人的投資が96億円の押し下げ要因になった。

通期は、大口法人の取扱数量の伸び悩みを理由に、売上高を前回予想の1兆9180億円から1兆8950億円へ230億円引き下げた。一方、営業利益は期初予想の420億円を据え置いた。上期が赤字である以上、下期だけで約437億円が要る。前年の下期は約321億円だった。売上高の見通しを下げながら、利益の予想だけは動かさなかった。

ニッコンの争点は資産だったが、ヤマトでは会社側が先に動いてきた。26年3月期は固定資産の売却で特別利益を計上し、今期はヤマトクレジットファイナンスの株式を譲渡して600億円の有利子負債等をオフバランスにした。この譲渡に伴う80億円の特別損失などで、中間純損益は105億円の赤字となった。社外取締役が主体の企業価値向上委員会も、4~9月期に設けている。

ニッコンの前例に沿えば、道は二つある。取締役会に席を用意して合意へ進む道と、センコーのように株主提案が総会で採決される道である。センコーでは、ダルトンが社外取締役1名の選任と、資本コストや株価を意識した経営の開示を定款に盛り込む議案を提出した。6月25日の総会で、賛成はそれぞれ25.83%と24.80%にとどまり、2議案とも否決された。

同じ視線は、ほかの物流会社にも向いている。NIPPON EXPRESSホールディングスには米エリオットが入り、5月20日の声明で、現行のM&A戦略の一時停止と再検証、資本効率を高めるためのバランスシートの適正化を求めた。保有は約6%である。

ヤマトHDが問われているのは、数字そのものより、5期続いた未達の責任の置き場所である。その間、社長の席にいた長尾氏が、代表権を持つ会長として残る形は通るのか。

4日の説明会で、ファラロンの提案を問われたヤマトHDは、回答を控えた。言葉で示さない以上、6期目の期初予想となる420億円を実現できるかどうかが、答えに代わる最初の数字になる。

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