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半年後の物流施設価格、「横ばい」71%

2018年8月27日 (月)

調査・データ一五不動産情報サービス(東京都墨田区)は24日、物流施設の不動産市況に関するアンケート調査の結果を発表した。半年後の不動産価格の見通しは「横ばい」が71%と最も多く「上昇」が25%、「下落」が4%となった。「上昇」の回答構成比が減少する一方、「横ばい」がやや増えた。

▲物流施設の不動産価格の見通し(以下グラフの出所:一五不動産情報サービス)

上昇理由では「物流施設への活発な投資が続くため」が22回答で最多となり、次いで「良好な資金調達環境が続くため」と「物流施設へ投資するプレイヤーが更に増えるため」が14回答となった。

上昇理由の上位は前調査と同様で、「良好な資金調達環境を背景に、物流施設へ投資するプレイヤーが増えることで活発な投資が続き、不動産価格の上昇余地がある」という意見だった。そのほかの回答では「建設コストが上昇するため」「物流施設の賃料水準が上昇するため」「日本経済の安定的な成長が期待できるため」がそれぞれ5回答あった。

横ばいの理由では「不動産価格が上昇局面から踊り場に移行するため」が39回答、「不動産投資市場の過熱感から、投資を控えるプレイヤーが増えるため」が35回答、「賃料水準の見通しに大きな変化がないため」が27回答となった。不動産価格の上昇期間が長引き、高値警戒感から踊り場に移行するとの意見が増えている。また、「キャップレートの更なる低下が見込みづらいため」が18回答、「日本経済の見通しが安定しているため」が4回答となっている。

下落理由では「開発ラッシュによる需給悪化が見込まれるため」が4回答、「不動産価格の上昇局面が終わり、下落局面に突入するため」と「量的緩和政策の出口が意識され、金利が上昇する懸念があるため」がそれぞれ1回答だった。

一方、半年後の賃料の見通しについては、横ばいが75%、上昇が15%、下落が10%となった。下落の回答構成比は2017年1月の25%から3回連続で減少する一方、上昇は前調査に続き増加となった。このため、賃料水準の業況判断DIは5ポイントで、前回のマイナス3.7ポイントからプラスに転じた。

▲賃料水準の見直し

上昇理由では「ネット通販(メーカー・小売によるネット事業を含む)が、需要をけん引するため」が8回答、「土地価格や建築費などの開発コストが上昇し、その分の賃料転嫁が進むため」が7回答、「老朽化した保管型倉庫から、高機能な物流施設に需要がシフトするため」と「雇用面で優位性のある高機能型物流施設に対するニーズが高まるため」がそれぞれ5回答となった。

同社は「ネット通販による堅調なニーズに加えて、労働力不足など事業環境の変化に対応しやすい高機能型物流施設がニーズの受け皿となり、市場関係者の楽観的な賃料水準の見通しにつながっている」と分析。

横ばいの理由は「新規開発による供給増と物流ニーズの増加が均衡するため」が43回答、「荷主および物流会社の賃料負担力に変化がないため」が38回答となった。また「生鮮品など生活必需品の物流ニーズが底堅いため」が13回答、「物流業界に大きな変化がなく、安定しているため」が6回答だった。

前回調査と同様に、新規開発が旺盛であるが需要は底堅く、需給環境は安定したため、賃料水準も大きな変化はないとの意見だった。

下落理由としては「物流施設の大量供給で、テナントの獲得競争が激化するため」が10回答と最多で、「物流施設に対する需要が減退し、需給バランスが悪化するため」が5回答、「高機能な物流施設の大量供給で、大型物件の優位性が薄れるため」が4回答となっている。大量供給による需給緩和が進み、賃料水準が下落するとの意見だった。

不動産価格の業況判断DIは21ポイントで、前回調査の25.9ポイントから4.9ポイント減少した。他方、賃料水準の業況判断DIは5ポイントで、前回のマイナス3.7ポイントからプラスに転じた。

▲アンケートの業況判断DI

不動産価格の業況判断DIは16年1月の27.3ポイントから一進一退で推移する一方、賃料水準の業況判断DIは、16年7月から18年1月までマイナス圏で推移していたが、今回の調査でプラス圏に移行している。東京圏では新たな開発計画の発表が相次ぎ、18年は過去最高の供給となる見通しで、19年は18年をさらに上回る供給が見込まれているが、市場関係者のマインドは悲観から楽観へと局面が移行しつつある。

また、今回は活性化する物流革新のなかで、今後の成長が期待できる事業について設問した。

「データ共有・ビッグデータの活用による物流効率化」が53回答で最多となり、全回答者(100回答者)の過半数が選んでいる。適切な在庫水準や人員配置に活用するための物流効率化で、従前より取り組まれてきた物流改善の延長線上で捉えることもできるため、今回の調査で最も高い回答となった。

次いで「自動運転」が49回答。「現在、公道で先頭車両が有人、後続車両が無人で隊列を組んで走行する実験が行われているほか、自動運転は法整備も課題のひとつで、官民一体で実用化に向けた取り組みが積極的に進められていることも高い関心につながった」(一五不動産情報サービス)との見方を示した。

また「配送シェアリング」と「倉庫シェアリング」は45回答と35回答。「ロボットの導入」は18回答とやや少なかった。「ドローンによる配送」は14回答で最小となった。

同社は、「ドローンによる実証実験は一部地域で開始されているが、都市圏の大半が航空法によって飛行が制限される人口集中地区であるために、現状では戸別配送は難しい。法整備の課題など、事業化への道のりが長いことが低い回答率につながったと考えられる」と分析した。