ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

コラム連載

「あなたは買えません-配達履歴という与信-」第1回

2020年7月6日 (月)

話題物流コンサルタントの永田利紀氏によるコラム連載第6弾がスタートします。物流の切り口から鋭く現代社会を捉える永田氏は、徹底した現場目線を信条とするコンサルタントとして豊富な現場経験を重ねてきました。今回の連載テーマは「情報(データ)」です。

第1章- ビッグデータ

情報化社会という言葉はもはや過去の流行語と化してしまった。今や生活インフラとしてありとあらゆる分野での情報が空気のごとく漂っている。

我々が生きる物流の世界でも同様であり、物流関連の全行為とその過程は、明細情報として可視化されている。ラストワンマイルと呼ばれる「日用配送」や「生活配送」、とりわけECならモバイル端末やPC画面で手軽に確認できる。

テレビ番組や雑誌記事などでも頻繁に取り上げられているとおり、それらの情報は次第に「ビッグデータ」の一種として集約化されつつあり、透明な潮流のように空間を漂う。

「誰がどんな目的でどうやって制御しているのか」という疑問への答えは想像や仮想の域を出ない――ということになっているわけだが、本当にそうなのか?と眉に唾を付けている。

■ 物事の表裏

(イメージ画像)

情報の集約による分析や統計化は、ある種の客観的な指標や傾向を偏りなく差し示す母体として、これからの社会には有効で必要不可欠だとされている。反しての危惧も多々あることは承知しているが、その是非を問う議論はこの記事になじまないので踏み込まない。

書き進みながら迷いが消えない点はただ一つだ。物流では「いったい誰の得になり誰の不利益になるのだろうか」である。

情報活用が物流各社や関与者のさまざまな利用形態につながる。しかし、ある者の利便や合理は他者の不利や制限と同義になる可能性も否定できない。さらには当事者間での情報共有が、意図せずに転用されたり漏洩したり、時には悪意ある者に取得されて、トラブルや混乱のもとになったりもする。物事の表裏はいつの時にも付いてまとう。

■ まずは自分のことから

大多数の興味は「自分にどのような影響があるのか」だろう。その可能性、つまり損得項目の箇条書きによって自身の情報発信を制限し、入力や記載時に注意を怠らないといった防衛意識が喚起される。個人情報保護法や匿名条件付き情報加工と利用についても、あくまで建前であり、「本当のこと」がパラレルワールドのごとく併存するという想像は書くまでもないことだ。

個人の生活に関与する情報の中には、何種類かの物流関連項目があり、それは以前に比して重要性と影響力を増している。なぜそうなるのかについて考えておく必要がある。物流関連の個人情報は業務コストと購買環境を左右する重要な要素となるからだ。情報の制御が恣意的であれば、批判や危険はあっても、改善や防御の救いが見込める。

しかし、それぞれの立場優先や利益保全を繰り返す日々の結果として、悪意や複合化の意図なく利用されるデータベースの自然増殖は、いったい誰が制御するのだろう。並列化されている個人情報が国民背番号と連動すれば、全員の情報がガラス張りになる。そんな未来が背後に迫っている気がしてならない。

第2回(7月9日公開予定)に続く

永田利紀氏の寄稿・コラム連載記事
“腕におぼえあり”ならば物流業界へ~正社員不足、求人企業は偏見改めよ
https://www.logi-today.com/356711
コハイのあした(コラム連載・全9回)
https://www.logi-today.com/361316
BCMは地域の方舟(コラム連載・全3回)
https://www.logi-today.com/369319
駅からのみち(コラム連載・全2回)
https://www.logi-today.com/373960
-提言-国のトラック標準運賃案、書式統一に踏み込め
https://www.logi-today.com/374276
物流業界に衝撃、一石”多鳥”のタクシー配送
https://www.logi-today.com/376129
好調決算支える「運賃値上げ」が意味すること
https://www.logi-today.com/377837
日本製の物流プラットフォーム(コラム連載・全10回)
https://www.logi-today.com/376649
もしも自動運転が(コラム連載・全5回)
https://www.logi-today.com/382504