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「もしも自動運転が」第2回コラム連載

2020年6月22日 (月)

話題永田利紀氏のコラム連載「もしも自動運転が」の第2回を掲載します。

第1回掲載(6月18日)▶https://www.logi-today.com/381562

第3章- 配達予約

配達車両の自動運転化によって最も変わるのは、配達の各種変更にまつわる手続きと処理だろう。仮想としては、不在による不配をあまり問題視しなくてよくなる。というよりも、不在不配が大きく減らせる可能性が高まる。

リアルタイムでデータ改変。再編集された配達データから導かれる配達ルートの更新。 その様が車両に載せられたモニター上でめまぐるしく繰り返される。さらに電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)の一般化は、排気ガス削減や化石燃料への依存度低下、車選びの根本的な価値変化などにつながる。

■ 必要条件が不要に

現在の個配サービスでは、変更についての制限が徹底されている。それは積載効率と配達ルートから導かれた「積み込み」の都合があるからで、具体的には変更申し込みから一定時間後もしくは翌日でないと再積み込みできないというものだ。特に配達ルートは、相当部分がドライバーの判断や経験に依存して決定されたり変更されたりするケースが多く、同一住戸であっても当日の担当ドライバーが異なれば、ルートの変更により配達順番が変わる。

たとえば、同じ午前指定であっても「〇〇さんというドライバーの日は9時前後、そうでない場合は11時半から12時ごろ」という按配である。これは1エリア1車両でメイン配達担当者とサブが1名もしくは2名という組み合わせによって個配業務が行われているからで、人が変われば順番やルートの組み方も異なるという事例だ。あくまで約束の「午前指定」は守られているし、時間帯や担当者の違いに違和感を抱くのは、受領者の個人的な心情でしかない。

個配事業者は長年培った経験をノウハウ化して、きめ細かいサービスを支えてきた。その根拠が根底から変わる日が近い。自動運転の技術進化と普及は、現役ドライバーの熟練や機転を必要としない機能性と合理性の集約と安定的な維持をもたらすのだ。

■ 迷わない、疲れない、不満を感じない

回転寿司店で、流れてくる皿ではなくパネルで個別注文すれば、その品が到着する直前には、目前のパネルに「まもなく注文品が到着」と音付きで表示される。

個配でも同様の仕組みが一般化することは疑いない。登録したモバイル端末やPCに「まもなく荷物が配達されます」と通知が届く。「まもなく」を30分前にするのかそれ以外にするのかの設定も可能となるだろう。そして通知前なら配達時間の変更が可能になる。可能な変更幅は配達会社によって規定されており、その範囲内なら何度でも端末から操作して変更できる。

システムはルールどおりの操作を瞬時に反映する。改変されたデータを受信した配達車両は「またかよぉ」とか「もう向かってるんだけどなぁ」とか「それならルートを変えないといけない」などの感情や思考を持ち合わせない。粛々と静かに最新データどおりの運行を続けるだけだ。

さらには、受領者別の変更に関する特性や傾向までもがログ化して蓄積されてゆくだろう。全データが配達の履歴として評価や分析に活用されると考えておくほうが自然だ。 「誰のためなのか」が気になるが、それはまもなく世の中で議論されるだろう。

第4章- 巡回集荷車

配達車両の自動運転化は、事業会社が個配機能をOEM化するにあたって、追い風となる数々の可能性を秘めている。

■ 事業会社にとって有利

OEM先である個配会社に集荷業務を依存することなく、集約センターに持ち込めるようになる。つまりは集荷委託コストの削減が可能となる。しかも配達に使用した自動運転車両を転用することが可能なので、車両台数の削減にも繋がる。荷物データと運行プログラムがそれを叶えてくれるはずだ。

集荷についても運行自動化が可能となれば、配送の両端である発送と配達の両機能が自前で行える。 サービスの差別化は集配の両拠点周辺で激しさを増すが、それは受領者にとって利便と合理性の増加を意味し、事業者には「うでのみせどころ」となること間違いない。 当然ながら集荷は数社共同で巡回便を常用することになるだろう。

■ 応じる受け手

巡回集荷によって、まとまった荷物が集約センターに持ち込まれる時間は、現在の締め切りを取り払って、24時間体制に移行するはずだ。その理由は、業務の分散化による人員配置と処理時間の平準化によるものだ。

労働曜日や時間帯の多様化は進む一方となる。それゆえに、「休日出勤、夜勤、時間外」などの言葉が廃れてゆくだろう。同時にそれらの言葉に付帯していた「割増賃金」も適用されなくなってゆく。 365日・24時間稼働型の施設が増えるのではなく、時期や季節によって主稼働時間帯や休日のローテーションを変化させる企業が増える。個配大手の集約センターは24時間稼働ながら、その時間別処理量の山と谷の段差を小さくする動きとなる。なぜなら、集約センター内にも自動化の波が寄せているからに他ならない。

■ 配車システムの進化

個配企業に代わって、巡回集荷により配送の起点を自前化するためには、それに応じたシステムが必要になる。既存の配車ローテーションや実車率を分析・制御する仕組みを加工することで、集荷車両の最適ルートや必要容量の割り振りなどが可能となる。あくまで予想だが、目新しいシステムは必要なく、現在稼働しているいくつかのシステムを加工転用すれば足りるはずだ。

新しいことを試みるたび、複雑で巨大な高額奇形物を一から造ろうとする企業は多いが、このハナシには不要である旨、断言しておく。カーナビと回転ずしの仕組みを参照・転用すれば、事の大部分は叶う。

わざわざ力んで強弁せずとも、多くの企業ではかつての予算消化型投資は否定するようになっているはずだ。 この原稿の本旨は、そんな前提条件の上に成り立っている。

第3回(6月25日公開予定)に続く

永田利紀氏の寄稿・コラム連載記事
“腕におぼえあり”ならば物流業界へ~正社員不足、求人企業は偏見改めよ
https://www.logi-today.com/356711
コハイのあした(コラム連載・全9回)
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BCMは地域の方舟(コラム連載・全3回)
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