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「あなたは買えません-配達履歴という与信-」第5回

2020年7月20日 (月)

話題永田利紀氏のコラム連載「あなたは買えません-配達履歴という与信-」の第5回を掲載します。

第4回掲載(7月16日)▶https://www.logi-today.com/386867

第5章- たかがこれぐらい

購買履歴から派生する与信情報ネットワークの出現に驚く者は少ないはずだ。国民背番号が焼印された時から、個人情報は一元化されてネットワーク化されると決まっていた。

■ 個人情報「ぜんぶのせ」

(イメージ画像)

金融や購買の個人履歴とその評価が反映される与信内容は、各種課税や納税情報と連動しつつ、一元化されると想像している。大目的は「収税」である。国は課税への注力よりも収税するほうに力点を移している。「とりっぱぐれのないようにしよう」が国家の税務行政上の最大ミッションである。

税金をごまかしたり滞らせる輩には、冷徹な調査追求と督促と強制執行の「御上のお縄」が待ち受ける。世の中の掟はますます強化されるだろう。税金滞納しつつ、ECショップで嗜好品を買い漁っていたり、ウェブ上でコンテンツサービスを利用していたりすれば、全てその明細まで把握の上で「払えるではないか」と詰問と回収が実行される。「”納税しないと購買できなくなる”というのは極論に過ぎる」と書きながらも、否定しきれない。

■ 是々非々

配達履歴に重きを置く購買与信の存在に過剰反応する必要はないが、店舗での購買と同様の常識や道徳心をもってECを利用しなければならない。大多数の人々は購買方法の別なく悪意ある言動はとらないし、トラブル発生時にも理性的・合理的にやり取りするはずだ。事故やもめごとは避けたいと望みながらも、その最優先の願いは「売ること」であるのがEC事業者なのだから、購買者が萎縮や敬遠するような施策は選択しない。

「あまりにもひどい」「さすがにこれだけ続くと」「他店でも札付きなのだろう」のような、一部ユーザーに対する自衛の手段として、確度が高く内容の充実したデータベースからの情報を一定のコストをかけて入手するだけだ。後ろ向きながらも必要だという判断によって導き出された結論だろう。ほとんどの購入者の購買行動には何ら影響しない内容であり、通常は意識すらしないという状況が最も好ましい。

■ たかが買い物だが

(イメージ画像)

縮小する消費総量の中で、購買行動のEC依存度は増す一方だろう。対面しないがゆえに、額面や文面などの表示が売買に介在する全情報となる。会話の代わりに文章の内容確認と同意が求められ、基本的には一方通行のまま購買行為が完結する。自宅やオフィスや外出先などから買い物ができて、かつ簡単に完了できる。利便性の追求には制限の裏打ちが必添とされるだろう。

「たかがこれぐらいの買い物で」の積み重ねが明日の購買をより有利で便利にさせる。最終配達という行為には、購買の始まりにまでおよぶ要素が内在していることを、販売者・購買者・配達事業者のそれぞれが今一度確認・共有しておくべきではないだろうか。(了)

第1回:https://www.logi-today.com/384920
第2回:https://www.logi-today.com/385732
第3回:https://www.logi-today.com/386134
第4回:https://www.logi-today.com/386867

永田利紀氏の寄稿・コラム連載記事
“腕におぼえあり”ならば物流業界へ~正社員不足、求人企業は偏見改めよ
https://www.logi-today.com/356711
コハイのあした(コラム連載・全9回)
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