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コラム連載

「あなたは買えません-配達履歴という与信-」第3回

2020年7月13日 (月)

話題永田利紀氏のコラム連載「あなたは買えません-配達履歴という与信-」の第3回を掲載します。

第2回掲載(7月9日)▶https://www.logi-today.com/385732

第3章- ステルスネットワーク

今までのECサイトでは、購入者与信の概ねは金融と購買トラブルで形成されていた。カード与信や後払い決済枠、または使用の可否、ショップとのトラブル。その結果、店側が「悪い客」と判断した履歴が購入者の与信として存在してきた。

■ 誰が負担するのか

言うまでもないが、販売者にとって継続的な購入者は良い客だ。どの販売者もそんな客の囲い込みと新規獲得を至上の目的として運営している。商品の代金と送料を、取り決めどおりに負担することで取引が完結するという想定で各社営業している。予定以上に経費がかさめば、利益は減少か赤字に陥る。購入者の負担すべき金額を設定し、そのとおりに事が進むことで経営は成り立っている。

■ 予定外は誰の責任なのか

お客様が神様でなくなって久しいが、自己都合ばかりを押し付ける購入者は、販売者にとって迷惑なだけでなく、利益を搾取する敵対者として認識されることも珍しくない。薄利多売の販売者が多いゆえ、送料の負担や着払い時の不在多発による返送、受け取り拒否などは、経営上重大な損害となる。通常は競合や競争相手であっても、不当な経費発生の回避のためには、各社の情報共有が当たり前のように強化される。決済与信同様、購入時にその可否を決定する情報として、配送履歴などを含んだ購買与信の情報ネットワークが出現するだろう。

■ 年々増えるトラブル

(イメージ画像)

返品、受取拒否、品質クレーム、配達クレーム、カスタマーサービス対応クレーム、返金処理方法クレーム、商品情報クレーム、連絡方法もしくはそのタイミングクレーム、他店比較クレーム、送料金額クレーム、梱包クレーム、その他多数。

「気に入らないなら買わなければよいのに」が通じない購入者が多いこともECの傾向として揺るがない。販売者側は個別に与信情報を判断するのではなく、特定の情報ネットワークサービスを販売サイトに導入することで、ログイン時もしくはカート決済前に「あなたの購入条件」的な表示を出して、全ユーザーにそれぞれの与信情報から設定した選択項目を用意する。新規の購入者がユーザー登録する段階で、その個人の購買条件が提示される。使用できる決済方法、送料の負担額、再配達や返品の可否と許容回数、返品時の負担額、時として「当サイトの利用の可否」などだ。

■ 他業界同様に

(イメージ画像)

ホテルなどのサービス業では、かなり以前から「要注意顧客」の名簿が共有されている。不払いや他の顧客に違和感や不安や不愉快を与えるような言動、毎度の過剰なクレームなどは、自己防衛のために同業者間で共有している。氏名や住所、外見の特徴や顔画像、国籍や口調の癖など、が記載されていると聞く。見えない情報網の存在は、どの業界でも当然とされているのだ。若く整備途中のEC市場でも、他業界同様の動きが起こることは疑いようがない。

第4回(7月16日公開予定)に続く

第1回:https://www.logi-today.com/384920
第2回:https://www.logi-today.com/385732

永田利紀氏の寄稿・コラム連載記事
“腕におぼえあり”ならば物流業界へ~正社員不足、求人企業は偏見改めよ
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コハイのあした(コラム連載・全9回)
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