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東芝エネ、敦賀でグリーン水素の実証実験

2021年3月30日 (火)

調査・データ東芝エネルギーシステムズ(川崎市幸区)と福井県敦賀市は29日、「H2One(エイチツーワン)マルチステーション」を活用した水素サプライチェーンの構築に向けた実証実験を開始すると発表した。水を電気分解して生産する「グリーン水素」を燃料電池車や発電に利用するもので、利活用の拡大を目指す。

H2Oneマルチステーションは昨年11月から同市で稼働している施設で、燃料電池車への水素充てんや、電気自動車への電力供給などが可能。実証実験では、関西電力から電力需要を上げる要請があった際には水素を製造し、電力需要を下げる要請があった際には貯留しておいた水素を利用して燃料電池で発電するという。

そのほか、ステーションに追加した「水素払出機能」により、水素インフラのない場所でもグリーン水素を活用。同市内や近隣エリアの燃料電池搭載フォークリフトなどに使用するとしている。

(出所:東芝エネルギーシステム)

原子力ではないエネルギー自給の時代へ

今後、このような水素ステーションを基点とするエネルギー供給網の整備が急速に進むことは必至だ。比較的小規模で、詳細な立地要件を問わない施設の建設は、自治体にとってもエネルギー供給の安定化の点で魅力的であるし、雇用増や地域振興の契機にもなる。

二酸化炭素の排出問題、化石燃料の枯渇問題、各種ビークルのEV化・FCV化への奔流に伴い、「設備や器具を動かす電力の母は水素」といった説明が当たり前になる時代になりつつある。かたや、水素を大量生産するためには二酸化炭素が発生する、という二律背反的な課題を解決すべく、技術革新の要求は絶え間ない。

一般的な感情論として「過度の原子力依存は禁忌」との意見があると承知しているが、「ならばどうする?」といった問いには、水素やバイオなどによる代案しか選択肢がないことも事実だ。過去のわが国に倣って「困った時は技術」だと思う。(企画編集委員 永田利紀)