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仏CMA CGM、ハリファ港に半自動ターミナル

2021年9月13日 (月)

国際仏CMA CGMは、アブダビの主要港であるハリファ港に半自動コンテナターミナルを開設する。ハリファ港が8日付でCMA CGMと35年間のコンセッション契約を締結、CMA CGM傘下のCMAターミナルズが70%、ADポートグループが30%を出資する合弁会社が運営する。両社合わせた投資額は1億5400万米ドル(169億円)となる。

このほど建設が開始された新ターミナルは、2024年に引き渡しが行われる見通しで、第一段階では岸壁長800メートル、年間180万TEUを収容する能力を備える。ADポートグループが海洋工事やインフラの開発を担当する。最終的な岸壁長は1200メートル、防波堤は3800メートルが計画され、「完全に整備された鉄道網」と70万平方メートルのターミナルヤードも設けられる。

新ターミナルは、アブダビと南アジア、西アジア、東アフリカ、欧州、地中海、中東とインド亜大陸を結ぶサービスへと展開するCMA CGMの新たな地域拠点として運営され、CMA CGMグループにとっては「ターミナル運営のリーディングカンパニー」に台頭することになる。同社グループが運営するコンテナターミナルは、子会社のCMAターミナルズ社とターミナルリンク社を通じて27か国、49港湾ターミナルに達する。

CMA CGMが地域拠点を開設することにより、海運大手上位4社のうち3社がハリファ港をハブ港とすることになる。15年前にUAEへの進出を果たした同社グループは現在、450人の従業員が10のオフィスで働き、9港に週13便のサービスを展開している。

ADポートグループでは「本日(8日)のCMA CGMグループとの画期的な合意は、このような継続的な取り組みの代表例であり、UAEとその周辺地域の貿易と産業の発展を大幅に加速させるものだ。当港の貿易量が増加し、UAEの経済発展を促進するだけでなく、この施設のキャパシティとほかの港湾都市との貿易関係が加わることで、地元企業や工業地帯への投資が促進され、製造業や物流などの主要分野の開発が加速し、労働力の需要が高まることを期待している」と地元への経済波及を期待。

さらに「当社の能力を拡大し、地域を超えて成長することで、港湾・産業・物流事業者としてトップ10入りするという長期的な野望の実現を支援するものだ。今後5年間、CMAターミナルズの合弁会社は、ハリファ工業地帯アブダビ(KIZAD)のさらなる発展を推進すると同時に、国のGDPにも大きく貢献すると考えている」と話しており、物流インフラの整備を工業出荷額の拡大につなげたい考え。

CMA CGMグループのロドルフ・サーデ会長兼CEOは「この最新鋭のターミナルは、世界をリードするハブとしてのハリファ港の地位を高め、アブダビを発着する貿易の流れを加速させ、地域経済の活性化に貢献する。また、当社グループは、多くの成長の可能性を秘めたこの地域で、海運・物流ネットワークを拡大することができる」と、拠点開設の利点を強調している。

脱「石油依存」目指すUAE経済の象徴となるか

仏CMA CGMが、アラブ首長国連邦(UAE)の経済都市アブダビに半自動コンテナターミナルを開設する狙いは、欧州をはじめアジアやアフリカなど広域貿易ハブとしての躍進を見込んで、先行投資として物流設備を整えておくためだ。UAEは、豊富な石油資源の供給拠点として、未曾有の経済発展を遂げてきた。しかし、世界的なカーボンニュートラルの機運が高まる一方、将来の石油資源の枯渇を見据えた第二の経済成長の原資を構築しておく必要があると判断。地理的な優位性を強みに、国際物流ハブ機能に活路を見出し、積極的な投資を呼び込んでいるからだ。

もちろん、CMA CGMにとってもアブダビでの港湾ターミナル投資に対する勝算はある。世界をめぐる貨物量は、新興国の経済成長を背景に増大する傾向が顕著であり、アジアやアフリカを後背地に抱えるUAEは、絶妙な地理的位置にある。航空分野ではエミレーツ航空が、旅客だけでなく貨物輸送でも大きな収益を確保し続けているのは、こうした物流ハブの地位を先行投資によって掌中に収めた。海上輸送においても、コンテナ貨物量の増大傾向を見れば、地政学リスクも比較的小さいUAEがハブ港湾の最適値であるのは明らかだ。

世界有数の規模を誇る海運企業として君臨してきたCMA CGMは、今後の生き残りに向けて、有望な市場を確保していく必要がある。欧州は成熟市場で先行きの大きな伸長は見込めない。アジアやアフリカはこれからの成長市場だ。将来の生命線を模索していたCMA CGMと、こちらも新たな生き残り策を考えていたUAE。今回のアブダビの先進的コンテナターミナルの開設は、こうした両者の意向が合致した象徴と言える。日本の海運業界も、世界のこうした動きを敏感に察知して、活路を見出していく必要に迫られるだろう。(編集部・清水直樹)