ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

商船三井、アンモニア燃料船用機関を発注へ

2021年10月18日 (月)

環境・CSR商船三井は18日、独MAN Energy Solutions(マンエナジーソリューションズ、MAN ES)、三井E&Sマシナリー(東京都中央区)の2社に対して、MAN ESが開発中のアンモニアを主燃料とする船舶用主機関を発注すると発表した。ネットゼロ・エミッションの達成に向けた外航船の運航を推進するパイロットプロジェクトの一環。燃焼時にCO2を排出しない次世代のクリーン燃料として注目されるアンモニアの活用をめぐる取り組みが急速に広がっている。

商船三井が2社に対して、アンモニアを主燃料とする船舶用主機関の発注にかかる基本協定書を締結した。商船三井はグループの「環境ビジョン2.1」で、2050年までのグループ全体でのネットゼロ・エミッション達成、20年代中のネットゼロ・エミッション外航船の運航開始を掲げる。

クリーン代替燃料や省エネ技術の導入、燃料消費の少ない高効率な運航により温室効果ガスの削減につなげるほか、グループで低・脱炭素事業を拡大することにより、ネットゼロ・エミッションを実現。今回のアンモニアを主燃料とした船舶用主機関の発注は、この低・脱炭素事業の一環と位置付けられる。

商船三井は今回の基本協定書の締結を契機として、ネットゼロ・エミッション船の先駆けとなる船舶用大型アンモニア燃料主機関を発注。船舶における次世代燃料への転換と、脱炭素化社会の実現に貢献していく。

(出所:商船三井)

海運業界で存在感を示す「アンモニア」

海運業界を中心に、にわかに存在感を高めてきたアンモニア。アンモニアのサプライチェーン構築に向けた動きに加えて、船舶運航そのものにおける脱炭素化の動きも広がり始めた。商船三井は、今後推進していく船舶運航における脱炭素化による環境負荷低減につなげる具体的な取り組みを推進する意思を広く示すことで、業界における存在感をより高めることになりそうだ。

アンモニアは、燃やしてもCO2を排出しないことから、現在発電の燃料として使われている石炭や天然ガスを置き換えることで、大幅な温室効果ガスの排出削減が期待されている。政府は、海運など物流業界における脱炭素化策を求めている。アンモニア燃料の活用は、既にカーボンニュートラル実現に貢献することが認知されているが、課題は海外の調達先を含めたサプライチェーンの構築だ。

裏を返せば、海運業界にとっては、アンモニアのサプライチェーン構築と燃料化の2領域で環境負荷低減に貢献できることになる。まさに、海運業界だからこそ可能なカーボンニュートラル実現への貢献策だ。日本の海運技術の高さを示す好機でもあるだろう。

アンモニアは脱炭素社会の実現を現実化する「最適解」と称されるほど、その期待が急速に高まっている。産業界の中で、それぞれ得意領域がしのぎを削りながらアンモニアのビジネス機会を獲得する競争が進んでいくだろう。海運業界は、アンモニア関連ビジネスで大きなアドバンテージがある。世界における日本の海運業界の存在感を高め復活させる機運の高まりを、日本の海運プレーヤーには期待したい。(編集部・清水直樹)