サービス・商品ヤマト運輸(東京都中央区)は20日、現在提供している宅急便の発送手続きをスマートフォンで完結できるサービス「宅急便をスマホで送る」に、新たにオープン型宅配便ロッカー「PUDOステーション」から発送できる機能を追加したと発表した。1月20日(木)発送手続き分から適用する。
新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、「非接触・非対面」に対応する取り組みが進められるとともに、テレワークや共働きなど働き方が多様化するなか、PUDOステーションの利用が高まっている。PUDOステーションの強みは、全国6300か所に設置され、24時間365日いつでも都合のよいタイミングで荷物の受け取りや発送が非対面で実現できるところにある。
これまで、PUDOからの発送は、フリーマーケットやオークションサイトなど個人間取引サイトやEC(電子商取引)サイトの返品業務に限り対応していた。しかし、より顧客にとって好都合なタイミングで宅急便を発送できるサービスを構築するため、現在提供している宅急便の発送手続きがスマホで完結できる「宅急便をスマホで送る」に、新たにPUDOから発送できる機能を追加することとした。早朝や深夜でも非対面で伝票がなくても簡単に宅急便の発送が可能になる。
PUDOから発送できる宅急便(発払い/着払い)は、60サイズから100サイズまで、または宅急便コンパクト(発払い)。発払い荷物は匿名配送サービスも利用可能。また、運賃支払いがオンライン決済の荷物(クロネコメンバーズの会員登録が必要)。常温の荷物に限る。PUDOステーション以外にスマートフォンでの発送が可能なのは、ヤマト運輸直営店とコンビニエンスストア(セブンイレブン・ファミリーマート)。
「スマートフォンで宅急便」拡大は宅配業界が果たすべき機能の変節点か
ヤマト運輸が、スマートフォンで宅急便を発送できるサービスを強化する背景には、新型コロナウイルス感染症をきっかけとした「非接触・非対面」の宅配サービスの定着に対応し、顧客の囲い込みを図るしたたかな戦略がある。
消費スタイルの多様化による宅配ニーズの高まりは、コロナ禍でその傾向がいっそう強まるとともに、非接触・非対面という新たな要請も加わり、宅配業界はその対応に追われている。ヤマト運輸は得意のスマートフォン手続きを拡大することで、ライバルに先手を打った格好だ。
ヤマト運輸が、コロナ禍を機に生まれた「新しい生活様式」の時代における顧客サービスとして、対面での宅急便の取り扱いから、こうした端末での手続きへのシフトをさらに強めることになれば、課題である人手不足への貢献も一定程度は果たせるだろう。
宅配業界におけるスマートフォン手続きのあり方がコロナ禍を契機に一変する、そんな景色さえも浮かんでくる。宅配会社は、「インフラを担う」役目から「インフラを提供する」機能へと変節を遂げる分岐点にあるのかもしれない。(編集部・清水直樹)