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日本郵船、蓄電池技術開発でパワーエックスと協業

2022年1月31日 (月)

環境・CSR日本郵船は31日、自然エネルギーの普及や蓄電・送電の新規事業を展開するパワーエックス(東京都港区)と、船舶用電池の開発や電気推進船・電気運搬船の試験運航や普及促進に向けて協業する方針を発表した。

脱炭素社会の実現に向け、世界的に船舶のゼロエミッション化や電動化のニーズが急速に高まっている。国内では2019年4月に洋上風力発電の利用ルールなどを定めた海洋再エネ法(海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に関わる海域の利用の促進に関する法律)が施行されるなど、今後の洋上風力発電市場の拡大が見込まれている。

日本郵船はこうした状況を踏まえて、大容量電池の開発や送電技術で新規事業を展開する一方で、将来的には洋上で発電された電気を陸地に運搬する電気運搬船「Power ARK」(パワーアーク)の建造・普及を目指すパワーエックスとの協業により、革新的なアイデアや事業推進力と日本郵船グループのグローバルな海運業の知見や技術を融合することで、船舶用蓄電池の開発や船舶電気化、電気運搬船の分野での取り組みを推進する。

▲Power ARKコンセンプト船のイメージ(出所:日本郵船)

日本郵船は、船舶電気化に伴う省人化の知見やノウハウを蓄積することで、将来的な船舶の有人自律運航船の開発に生かすとともに、内航海運業界で今後懸念される船員の⼈材不⾜の解決も視野に入れながら検討を進める。

日本郵船グループは、ESGの経営戦略への統合をさらに加速させることを掲げた「NYKグループ ESGストーリー」を21年2月3日に発表。SDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献する活動を推進する。今回の協業方針を契機として、ESG経営を推進する取り組みをさらに強化するとともに、船舶のゼロエミッション化や洋上風力発電の普及への支援を目指し、新たな価値を創造していく。

カーボンニュートラル社会の実現に海運業界として貢献できる施策の「ワンプロセス」を獲得した日本郵船

日本郵船がパワーエックスと協業する背景には、カーボンニュートラルの実現に向けた施策の実現に不可欠な蓄電池開発を、一気に加速する必要があると判断したからだ。日本郵船は、船舶の電動化や洋上風力発電システムで作られた電気を陸地に運搬する技術などを早期に構築することで、社会の強い要請である脱炭素化の実現に取り組む意思を明確化した形だ。

(イメージ)

政府が2050年のカーボンニュートラル実現を目標に掲げ、海運をはじめとする産業界はそれに呼応した脱炭素化の取り組みを推進する機運を高めている。こうした動きが広がるなかで、日本郵船は海運業として貢献できる領域について、船舶の電動化と再生エネルギー由来の電気の輸送体系の構築に着目。それに不可欠な蓄電池などの開発に強みを持つ他社と協業することで、こうした取り組みを具体化して実現に向けた設計図を描くスピードを確保したい、との思惑がある。

大型船舶で大量の貨物を輸送するビジネスを展開してきた海運業界は、化石燃料を大量に消費する事業スタイルからの脱却を求めて、温室効果ガスの排出の少ない船舶の導入などの取り組みを加速している。同時に、アンモニアサプライチェーンの構築に向けた取り組みを強化するなど、脱炭素化につながる素材の運搬でもカーボンニュートラル社会の実現に貢献しようとしている。日本郵船は今回の協業により、これらの施策を両立するために必要なプロセスを1段階、獲得できたことになる。(編集部・清水直樹)