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ラクスルの支援で配送連絡業務の標準化を推進するMizkan

円滑なシステム導入を実現した「担当者同士の『絆』」

2022年2月28日 (月)

話題岐阜県南部の美濃加茂市。企業の工場や物流施設が集まる産業団地の一角にあるのが、食品メーカーのMizkan(ミツカン、愛知県半田市)の美濃加茂工場だ。併設する物流センターは、商品を主に中部地方に発送する主要拠点として、調味料などの商品をトラックが次々と運んでいく。まさに活気あふれる雰囲気を醸し出している配送現場だ。

▲中部地方への輸配送の主要拠点となる美濃加茂工場に併設する物流センター

この美濃加茂の物流センターを舞台に、Mizkanの配送業務の姿を大きく変える、ある取り組みが進んでいる。配送委託先の運送会社と情報を共有して配送業務を進める「配送連絡業務」のシステム化。それは、Mizkanが「やがて、いのちに変わるもの。」のメッセージのもとに、より顧客ニーズに即した商品を提供するための事業基盤づくりに貢献する取り組みの一環なのだ。

そのシステム化に携わったのが、ラクスルの荷主と運送会社をつなぐ物流プラットフォーム「ハコベルコネクト」だ。ここでは、ハコベルコネクトの導入による、美濃加茂の物流センターにおける配送連絡業務のシステム化をめぐる取り組みを紹介。ハコベルコネクトのもたらす業務改革効果に迫る。

紙とファクスでなされていた、商品発送の「要」の業務

企業の物流担当者は、ハコベルコネクトの管理画面を使って、配送業務を委託する運送会社の担当者と共有すべき情報として、日別の商品の種類と数量などを記入する。その画面は、運送会社の担当者も同時に閲覧できるようになっており、先方の担当者はトラックの車番などの情報を追記していく。互いに「連絡」し合うことなく、必要な情報が共有されていく。非常にスムーズなやりとりだ。

▲ハコベルコネクトの案件管理画面

商品の配送にかかる連絡業務というメーカー物流の要である重要な任務は、もはや美濃加茂の物流センターでは行われていない。美濃加茂市のはるか南にある愛知県半田市のMizkan本社でなされているというから、驚きだ。

「つい最近までは、この配送連絡業務を紙とファクスで行っていたんですよ」と話すのは、Mizkan美濃加茂物流センターの末永哲朗主任だ。当物流センターの配車連絡担当者は、朝一番に当日の商品発送計画を所定の用紙に記入してファクスで委託先の運送会社に送る。すると、先方の担当者から必要な情報が記載された返信がファクスで届く。その後も、必要に応じて確認のための連絡を電話やファクスで繰り返す。それが、2021年春までの配車連絡業務のスタイルだった。

配車連絡業務のリモート化、ネックになった「紙」スタイル

2年前。新型コロナウイルス感染症の拡大で、美濃加茂の物流センターでも対策として従業員のリモートワークについて検討することになった。「配車連絡業務を自宅など社外で担うことはできないか」。末永氏は、さまざまな案を検討したが最終的に断念した。どうしてもネックになるのが、運送会社への連絡手段だった。

「すべての連絡が『紙』ベース。当社からの発信だけでなく、先方の回答もファクス。リモートワークは難しいとの結論になったのです」(末永氏)。商品配送における運送会社との連絡業務は、いわば商品輸送業務の最重要プロセスだ。ここで相互の情報の行き違いや誤解があれば、小売店に正確な種類や数量の商品を届けることができなくなり、結果として消費者の信頼を失うことになりかねない。苦渋の選択だった。

突然だった美濃加茂でのハコベルコネクト導入

それから1年後のある日。Mizkan本社から美濃加茂の物流センターに1本の電話が入った。「配車連絡業務のシステム化を美濃加茂で進めることに決まりました。これから対応をお願いすることになります」。ラクスルのハコベルコネクトを導入するという。末永氏は、準備に忙しくなると覚悟した一方で、懸案だったリモートワークが可能になるのではないかと期待を感じずにはいられなかった。

実は、美濃加茂の物流センターでは、コロナ禍の前に特定の運送会社1社を対象に、このハコベルコネクトを配車連絡業務用にテスト導入したことがあった。「ファクスを使わなくてもウェブサイトで情報共有ができる便利さに期待する一方で、従業員に使いこなせるだろうかとの不安も強かったのが本音でした」(末永氏)

しかし、その心配は杞憂に終わる。自分よりも年上の社員がパソコンで難なくシステムを使いこなす姿を目にして、もしもシステムを業務全般に導入できるならば、この物流センターにおける配車連絡業務の位置付けも変わるだろうと考えた。

「それが現実のことになろうとしている」。末永氏は、年末繁忙期に間に合うように、本格導入を2021年10月上旬までに完了。半田市の本社で配車連絡業務を担う点も含めて、デジタル化が完成した瞬間だった。

担当者と対面せずに完成させた、短期間でのシステム導入

とはいえ、実質的な準備期間はわずか3か月。しかも、今回は美濃加茂での配車連絡業務への本格導入であることから、十数社の委託先運送会社にも導入を依頼することになる。段階的に3か月かけて相互に導入作業を進めるなかで、運送会社からもMizkanと同じ悩みを抱えていることが分かった。「ラクスル様の担当者とも頻繁に相談しながら、運送会社と一緒にハコベルコネクトの導入を進めました。Mizkanが配車連絡業務のシステム化に踏み切ったことで、運送会社側も業務効率化を進める機会を得られたのでしょう」(末永氏)

もちろん、円滑な導入にはラクスル側のスピーディーな対応によるところも少なくない。担当したラクスルのハコベル事業本部/ソリューション事業部/カスタマーサクセスGの中川佳氏は、美濃加茂の物流センターにおけるハコベルコネクトの導入プロジェクトについて、コロナ禍もあって対面での交渉機会がなかったと話す。

「リモートや電話のみでの対応となってしまいましたが、ハコベルコネクトの充実したサポート体制についても丁寧に説明するなど配慮し、導入に対して理解を得ることができました」(中川氏)。美濃加茂の物流センターへの導入時に気を配ったのは、既存の業務の流れを極力変えない形でシステムを導入すること。導入後にスムーズに活用してもらうためには、システムの操作そのものが負担になってしまわないようにすることが大切だからだ。

ラクスルの高い対応力はハコベルコネクトの強みでもある

ラクスルの強みともいうべき、状況に応じた対応力は、ハコベルコネクトの強みでもある。末永氏は、ハコベルコネクトの高い操作性と使いやすさが、Mizkanにおける配車連絡業務のスムーズなシステム化につながったと考えている。それは、こうした物流DX(デジタルトランスフォーメーション)化の担い手であるシステム開発企業に不可欠な考え方なのだろう。

配車連絡業務のシステム化が一段落した美濃加茂の物流センター。末永氏は、ハコベルコネクトに新たな課題解決を期待しているという。「顧客対応などの関係から、Mizkan商品の積み込み拠点が複数ある場合、各拠点間で閲覧できない形で車番などの情報を共有するシステムの構築について、要望を受けました」(中川氏)。近く、ハコベルコネクトに新機能として搭載される予定という。

ラクスルは、こうした顧客からの要望もシステム開発の原資と捉えて、新たな機能の開発や新システム開発のヒントにしている。それは、顧客に安心して使ってもらうことで初めて、システムの成果が出ると考えているからだ。ハコベルコネクトの本当の強みは、こうした顧客のニーズを反映できる柔軟性と機動性の高いプラットフォームだからだ。今回のMizkanの導入事例は、その事実を明確に示していると言えるだろう。