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大王製紙など、運送4社と「異社間」中継輸送を実証

2022年4月12日 (火)

調査・データ大王製紙と伊藤忠ロジスティクス(東京都港区)、三井倉庫ロジスティクス(東京都中央区)、デンソーテン(神戸市兵庫区)の4社は12日、運送事業者4社と協力し、商品を積載する荷台部分を着脱できるスワップボディコンテナ車を用いた異なる運送事業者間で、四国・関東間の中継輸送の実証実験を行ったと発表した。

実証実験に協力した運送事業者は、アートバンライン(大阪市中央区)▽遠州トラック▽フジトランスポート(奈良市)▽優輪商事(大阪府東大阪市)――の4社。

荷主と運送事業者のマッチングやトラックとコンテナの整合性を図ることで、異なる運送事業者が参画できる中継輸送の可能性を確認。輸送業務と切り分けて荷役作業を荷主が行うことで、ドライバーの体力的な負担軽減や長時間労働の改善につなげた。スワップボディコンテナ車両を活用した中継輸送の実施により、トラックの走行距離や待機時間のアイドリングを減らせることにより、二酸化炭素の排出抑制効果も期待できる。

(出所:デンソーテン)

トラック輸送におけるドライバー不足が深刻化するなかで、輸送の効率化とともに労働負荷の軽減が社会課題となっている。長距離ドライバーは、運転以外にも荷物の積み降ろしなどの荷役や荷待ちによる拘束時間が長く、荷役作業は体力的な負担も大きい。

さらに、2024年からは働き方改革関連法により自動車運転業務における時間外労働時間の上限規制が適用されることで生じる、いわゆる「物流の2024年問題」への対応を含めて、運送・物流業界の労働環境の整備を迫られている。環境面でも、運送・物流業界ではトラックによる二酸化炭素排出量が多いことから、カーボンニュートラルの実現に向けてトラック輸送の効率化も求められている。

今回の実証実験は、長距離輸送の効率化やドライバーの長時間労働の負荷軽減における、スワップボディコンテナ車両を活用した中継輸送の効果を検証。輸送業務と荷役作業を分離するための、スワップボディコンテナの運用に必要な検討項目の明確化も目的とした。

中継輸送の可能性を大きく広げる画期的な実証だ

大王製紙など4社が、運送事業社4社と共同で実施した今回の中継輸送における実証実験。最大の焦点は、異なる運送事業者の間における中継輸送の可能性を試すところにある。一定の「合格点」が出たことで、中継輸送の実現に向けて大きく前進したことになり、ドライバーの労務課題や長距離輸送の効率化を推進する大きな追い風となる。

中継輸送は、一般的には同じ運送事業者で活用される運行方法だ。輸送方法や扱う荷物の種類、ルート設定などが合致しないと、スムーズな中継輸送は難しい。労務問題の解決を図ろうとしても、車両の荷台の相性など物理的なマッチング精度が高くないと、継続的な運用は困難とされている。

ましてや異なる事業者間での中継輸送となれば、いわば他人同士が荷物をリレーするわけであり、少し前であれば「ありえない」輸送方法だと一蹴されるのが関の山だった。

(クリックで拡大、出所:デンソーテン)

しかし今回の実証実験は違った。四国と関東の間に、大阪府と三重県に2箇所の中継拠点を設定。「四国・大阪」「大阪・三重」「三重・関東」の3段階で中継する方式を採用するとともに、荷役の分離などトラックドライバーの負荷軽減を意識した設計図を参加事業者間で共有するとともに、ドライバーが間違ったコンテナを運ばないよう二次元コードを用いた「幹線中継輸送運行管理システム」を使用するなど、物理的な「連携」策も講じるなど、周到な仕掛けも奏功した形だ。

ともあれ、中継輸送は長距離物流の概念を変える画期的な施策だ。長距離物流の課題解決の効力も高く、就業環境の改善と輸送品質の高度化という、いわば背反する概念とも言える社会の要請にも対応できる取り組みなのだ。中継輸送の可能性をさらに高めた今回の実証は、こうした意味で非常に意義深い。(編集部・清水直樹)