行政・団体猛暑で電力需給が厳しい見通しとなり、経済産業省が26日に初めて電力需給ひっ迫注意報を東京電力管内で発令した。27日の節電を企業や家庭に呼びかけているが、物流各社ではすでに節電に取り組んできており、これまでのところ目立った追加対応はない模様。平年以上の暑さが予想される夏本番を前に、もう一段の節電の余地を探るきっかけにはなったようだ。
経産省は26日、東京エリアの電力需給について、27日16時30分から17時にかけて、電力の予備率が3.7%と厳しい見通しになったと発表した。15時から18時までの夕方時間帯に冷房などを適切に活用しつつ、使っていない照明を消すなど無理のない範囲でできる限りの節電を行うよう、企業や家庭に協力を呼び掛けた。
物流各社は平時から節電対策を実行中のうえ、荷主や作業員への配慮から打てる措置も限定的で、政府の急な呼びかけへの対応余地はなかなか見当たらない模様だ。一方、ロボットや各種自動設備の導入で近年、倉庫での電力使用は増加傾向にあることから、太陽光による自家発電といった自力調達の方策を推進する機会になっている。
物流大手の日本通運(東京都千代田区)は27日昼までの時点で、特段の対応を取っていないという。広報担当者は「ことし3月から節電対策に取り組んでおり、きょう急に何かを変えることはない」と話した。3月以降、東京都千代田区の本社ビルで空調設定温度を従来比で1度上げ、共用エリアでの照明の10%低減、日没後の外構での消灯などを実施。ただし、物流現場の倉庫やトラックターミナルなどは節電の適用外としている。「顧客に関わる部分は難しい」といい、冷凍・冷蔵倉庫なども節電余地がないとしている。
多数の電気自動車や電動バイク、電動アシスト自転車を配達に使っている日本郵便(同区)はそれらの充電に大量の電力を使っている。「車両を動かさないとサービスが成り立たず、郵便局での節電は無理」とし、郵便局以外の間接部門での冷房温度の引き上げや昼休みの消灯といった対応に限られるという。同社もすでに節電対策を実行中で、政府の「注意報」への対応は今のところないという。配達員や仕分け作業員らの熱中症防止も重要で、暑さが本格化する7月以降の節電策についても「今のところ組織として決定しているものはない」(広報担当者)と話した。
SBSホールディングス(HD)は27日昼過ぎ、節電を呼びかけるメールをグループ各社の社員に送った。使っていない執務室の消灯や空調温度の引き上げなど従来通りの内容だが、政府の呼びかけを受けて改めて周知徹底を図ったという。ただし、責任者は「物流の現場に影響が及ぶような節電はできない」と話し、間接部門で少しでも取り組む姿勢を示した。
日本貨物鉄道(JR貨物)は、冷房温度の28度設定や省エネ型電気機関車への更新など、東日本大震災以降、中長期的な節電対策を続けており、広報担当者は、今回の「注意報」のほか、この夏の特別な対策は「特に講じていない」としている。