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運送業の過半数がBCP対策「不十分」、ドコマップ

2022年7月4日 (月)

(イメージ)

調査・データ運送業経営者の半数以上がBCP(事業継続計画)対策を「不十分」と認識――。位置情報管理サービス「DoCoMAP」(ドコマップ)を提供するドコマップジャパン(東京都港区)は4日、運送業の経営者101人を対象に実施した「運送業者のBCP対策に関する実態調査」で、こんな結果が明らかになった。一方で、BCP対策を強化していく必要性については半数近くが積極的な姿勢を示しており、具体的な策定方法やノウハウを模索している現状が浮き彫りになった形だ。

PRマーケティングを手がけるIDEATECH(アイデアテック、東京都港区)が提供するリサーチPR「リサピー」の企画によるインターネット調査。ことし6月15日から21日までの7日間実施した。

「BCP対策が十分にできているか」との質問では「あまりできていない」(30.7%)、「できていない」(19.8%)を合わせて過半数が不十分であると回答。「できている」は7.9%、「ややできている」も16.8%にとどまった。「できている」「ややできている」との回答者に策定内容を聞いたところ、「BCPで想定する緊急事態の絞り込み」(80.0%)、「BCP基本方針の策定」(60.0%)、「社内でのBCP推進体制の決定」(56.0%)を挙げた。

一方で、「できていない」「あまりできていない」との回答者にその理由を聞いたところ、「そもそもBCPを策定していない」(43.1%)、「リスクを十分に検討できていない」(37.3%)、「リスクに対しての対策を検討しきれていない」(33.3%)と指摘。リスク認識の弱さをうかがわせる結果となった。

「BCP対策の策定における課題」については、「どこまでリスクを想定すべきかわからない」(37.6%)、「策定のための人がいない」(25.7%)、「検討事項が多すぎる」(19.8%)と回答。BCP策定の前提となるリスク想定やそのリソースが不足している現状が浮かんだ。

「今後BCP対策を強化していく必要性を感じているか」との質問では、「強く感じている」(13.9%)、「やや感じている」(34.7%)を合わせて半数近くが積極的な姿勢を示した。「あまり感じていない」(15.8%)、「全く感じていない」(6.9%)といった消極派を大きく上回った。

積極的にBCP対策の必要性を感じている理由については、「近年、地震や台風などの災害が頻発しているから」(65.3%)、「従業員を守りたいから」(61.2%)、「取引先からの信頼性向上につながるから」(57.1%)と回答。「BCP対策が重要であると思う理由」については、「物流の停滞は経済活動や国民の生活にとって、死活問題となるから」(67.2%)、「有事には救援物資の輸送など社会的責任も求められるから」(59.2%)、「的確かつスピーディに荷物を届ける使命があるから」(42.9%)と、社会に不可欠なインフラを担っている「使命感」がBCP策定の動機となっていることがわかった。

運送業は物流インフラを担う「使命感」からBCP策定の必要性を認識、それを支援する新ビジネスの機運も高まる

社会インフラを守る使命からも必要な取り組みであるとはわかっているけれど、その具体的な方法がわからない――。運送業者にとってBCP対策とは、そういう存在なのだろう。今回のドコマップジャパンの調査で意義があると実感したのは、運送業者の経営者がBCPの概念におおむね賛同している点だ。

策定方法など手続き論のあり方については別途、考察するとして、まずはBCPが社会に不可欠な物流インフラの継続に欠かせないとの認識が広がっていることに、胸をなで下ろしたというのが正直な印象だ。

裏を返せば、物流という仕事が、もはやある事業者の事業で完結するものではなく、社会生活を根底から支えるインフラそのものであることを、運送業者が認識していることを示していることになる。BCP策定における根幹の部分である「動機付け」の部分が明確であれば、あとは様々な策定スキルやノウハウを提供するビジネスプレーヤーの出番だろう。

調査では、運送業者が考えるBCP対策に有用なツールとして、GPS(全地球測位システム)機能付きデジタルタコグラフ(デジタコ)や災害時にも対応した道路状況・給油可能なガソリンスタンド情報などがわかるアプリケーションなどを挙げる声があったという。現場を担う事業者が明確な姿勢を示すことで、初めてそれに付帯する新規ビジネスが生まれ、実現に向けて動き出す。こうした「正」「プラス」のサイクルが動き出すのだろう。(編集部・清水直樹)