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運送会社DXに盲点、点呼業務を支援する機器・システム業界の課題や方向性探る

遠隔点呼「メリット」理解を-討論イベント詳報(4)

2022年9月27日 (火)

話題LOGISTICS TODAYは、オンラインイベント「運送会社DXに盲点、“点呼業務”の主要メーカー・販社と徹底討論」を9月7日に開催。点呼業務を支援する機器・システム業界の課題や今後の方向性について論戦を展開しました。イベントにおける登壇者の具体的なやりとりを詳報する連載企画。第4回からは、それぞれの登壇者の「本音」に迫っていきます。まずは東海電子の松本氏です。

<LOGISTICS TODAY赤澤裕介編集長>
最初にうかがいたいのは、東海電子の松本様。先ほど「周知不足」ということで、お書きいただきました。制度が始まって、まだ時間がそれほど経っていないこともありそうですけれども、このあたり詳しい事情があれば、ぜひご解説いただきたいと思います。いかがでしょうか。

国交省の求める高い設備・環境要件、運輸支局で対応に温度差も

<東海電子取締役安全・健康システム営業部の松本剛洋部長>
はい。そもそもの遠隔点呼に関しての法的な要件であるとか、あるいはメリットのような部分に関してはタイガー様から説明があった通りだとは思います。それでは、実際に申請どうやればいいのか、また申請の中で何か困り事は起きないのか。そのあたりを体験を交えて、お話しさせていただきたいと思います。

<赤澤>
はい。よろしくお願いします。

<松本氏>
はい。まさに今、タイガー様から詳しくお話があった通り、遠隔点呼に関しては「25要件」を満たさないとダメだということで、IT点呼よりはるかにハードルが高いのは間違いないかと思います。ただし、それを詳しく知っていただくうえでは、遠隔点呼のリーフレットでかなりわかりやすいものが、国土交通省からも出ております。実際に申請をできる範囲や、あるいはその25要件。システムであるとか、環境であるとか、そのあたりの内容も、一部ではあるんですけれど、かなり分かりやすく書いてありますので、まずはこれを見ていただければと思います。

そこからがいよいよ本題になります。遠隔点呼の申請に関して国土交通省が掲げているものは、単純に「書類を提出しなさい」ということのみです。具体的な書類について、左側の部分はIT点呼の書類とほぼ同じものです。これはすぐにでも書けるかなと思います。加えて、右の部分が今回新たに加わったもので、遠隔点呼の特に機器・システムに関わる部分で、ちゃんと適合しているかを詳しくたずねるための資料です。12項目を埋めないといけないものです。

言い方を変えれば、申請の側の立場でいえば「この2つの書類がちゃんと埋まっていれば、もうあとは申請できるんですよね」ということになるかと思うんですけれども、実はそこから先があります。

(イメージ)

申請をした各ユーザーに対して、今度は運行管理高度化検討会組織が合格か不合格かを判断するステップが入ります。具体的にこれを実務として行うのが、全国各地の運輸支局の職員です。現地まで監査に入ってチェックをするということで、申請をされた運輸支局の方が数人がかりでやってきて、すべての機器をちゃんと満たしているか、施設の要件を満たしているか、このあたりをチェックしていきます。

なぜやるのかを国土交通省にうかがったところ、設備・環境の要件がメインらしく、必ず確認されるのは「監視カメラがちゃんとついているか」「明るさをちゃんと満たしているか」の部分だということです。

とはいえ、機器・システムに関してもいろいろと細かいところを聞かれるそうで、先ほどお話に出ました12要件を提出する書類に対しても、相当細かく指摘が入るんですね。例えば「要件の何項目。このようにして対応するといいますが、実際の画面の資料はありますか」など。「こうなった場合、どうやって対応してるんですか」ということを、各項目で非常に細かく聞かれることが現実にあります。

(イメージ)

当社でも、1か所のユーザー様に運輸支局の方が立ち入られて、3回、4回と書類を一緒に書き直して提出したこともあります。実際にその意味では、1枚の書類で済まないのが現実です。かなり細かい資料を事前にご準備されるべきかなと思うところでございます。

ここに表示してるのは東海電子の例です。1項目、1ページから3ページぐらいの資料を絵付きで作りまして、例えば「この項目に関してはこのような画面で対応しています」、または「この項目の動きに関しては、運転手の方が来られてから、あれこれして、結果こうなります」といった内容が具体的にフローで分かるようになっているなど。ここまでしないと、おそらくは通らないとお考えいただければと思います。

最後に裏話として一点、注意をさせていただきたいのが、監査に来られる運輸支局は全国でも地域によって相当対応が違います。厳しいエリアや若干緩いエリアがあります。このあたりもあわせてご注意いただければと思います。

始まったばかりの制度ならではの「厳格さ」、徐々に緩和も

<赤澤>
なるほど。厳しいエリアやゆるいエリアがあるという点について、東海電子さんは把握されているんですか。

<松本氏>
そうですね。具体的にどこかというのは今日は差し控えさせていただきますが、例えば厳しいエリアだと単に立ち入りだけではなくて、点呼している風景をあらかじめ動画で取ってくださいと。それを全部撮影したうえで、DVDに収録して書類と一緒に提出しなさい、と言われるケースもあります。元々の条件に入っていないことが加わったりすることもありあます。そのあたりでいうと、やはりエリアによって差はかなりあると思っていただければと思います。

<赤澤>
書いていないことで、受け付けてもらえない可能性も想定しなければいけないということですね。

<松本氏>
起こりうるということです。

<タイガー取締役営業本部長・成澤正照氏>
もしかすると、申し込みの件数も影響しているのではないかと思います。

<赤澤>
申し込みの件数が影響するというのは。

<成澤氏>
運輸支局の方々のメンバーもたくさんいるわけありません。要するに、申請が多ければ「現地に行って確認」の手順が運輸支局側の人数不足でできていない可能性も考えられます。

<赤澤>
これ、デジタルの話ですよね。

<成澤氏>
デジタルの話であるはずが、そこはアナログなんですね。

<赤澤>
なるほど。なかなか皮肉なエピソードトークになりましたけれども、それが実情ということのようです。

<松本氏>
ただ、これは生みの苦しみともいえます。まさに始まったばかりの制度で、厳格になってる面はあると思います。

<赤澤>
なるほど、暖かく見守らなきゃいけない側面もあるということですか。

<松本氏>
そうですね。徐々に緩和されてくるとは思います。

<赤澤>
なるほど。皆様、どのように感じられたでしょうか。

第5回は、テレニシの吉田氏が「理解不足」の意味するところについて語ります。さらに坂口氏は「導入ハードルの高さ」について持論を展開します。

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