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運送会社DXに盲点、点呼業務を支援する機器・システム業界の課題や方向性探る

「遠隔」ルールで右往左往-討論イベント詳報(6)

2022年9月28日 (水)

話題LOGISTICS TODAYは、オンラインイベント「運送会社DXに盲点、“点呼業務”の主要メーカー・販社と徹底討論」を9月7日に開催。点呼業務を支援する機器・システム業界の課題や今後の方向性について論戦を展開しました。イベントにおける登壇者の具体的なやりとりを詳報する連載企画。第6回は、ことし4月に制度化された遠隔点呼をめぐるルールについて、各登壇者が意見を戦わせます。

行政も事業者も右往左往する「不確実性」

<LOGISTICS TODAY赤澤裕介編集長>
成澤様はいかがですか。

<タイガー取締役営業本部長・成澤正照氏>
そうですね。今回の遠隔点呼については、運行管理高度化検討会組織がいわゆる窓口になっています。最初に遠隔点呼の要項を見たときに、ちょっとそこに違和感を抱いたのが正直なところです。遠隔点呼を打ち出してはみたんだけれども、実は「仕様・内容に関してはよく理解できていないところもあって、作っていかなきゃならないよね」となった。その初年度という位置付けで、3回の募集にしたのではないかと考えています。ある意味では年間通してどのタイミングで募集をとってもいいんじゃないか、というような感覚もあったのですが、あえて3回に分ける意味についても「段階を踏んでいきながら、もしかすると募集要項も若干変わっていく」ことも考えられるのかな、と思います。

討論会が始まる前に現場の営業から電話がかかってきて、「聞いていなかったところを支局の方から要求されたんですけど」というシーンが現実にあります。その場その場で遠隔点呼を作り上げる、そんな位置付けなのが最初の1年なのかなと思っています。

<赤澤>
なるほど。かなり不確実性をはらんだ動きだな、と今の話で感じました。同時におそらく点呼にも影響してくるであろう要素のひとつとして、白ナンバーのアルコールチェックの義務付けがあります。半導体不足という別の要因とはいえ延期になったりして、事業者は翻弄されている面もあるのかなと思います。そのあたりの話は、非常に興味深いのでこの後、深掘りしていきたいと思います。

同時に思うのは、これだけハードルが高いじゃないですか。同時に行政もどうやら課題を出しながら、先に進んでるような気配も見られるとなると、運送事業者の皆様からすると、めちゃくちゃハードルが高くないですか。単に規定がややこしくて手間暇がかかるだけではなくて、いろんな要素がからんで「もうやるな」といわれているかのような気配さえ感じざるをえないんですよね。

とはいえ、遠隔点呼が4月に解禁されて、導入した企業は「ゼロでない」のも事実です。これ、皆さんどうですか、気になりませんか。なぜその企業は導入に踏み切ったのか。今まで踏み切らなかった理由、踏み切れなかった理由を聞いてきたのですけれども、今度は逆にわずかながらではあるけれども、踏み切った企業が存在していると。なぜ踏み切ったのか、なぜ導入できたのかが私は気になります。成澤様、こうした事情をご存知でしょうか。そもそも、わずかながら導入できた会社の「わずか」って何社なんですか。

<成澤氏>
私どもでうかがっているケースでは、第1次の申請において23件の応募があって、23件通ったということです。

<赤澤>
23件応募があって、通ったのも23件。解釈が悩ましいですね。

<成澤氏>
そうですね、もしかしたら出したら通ってしまうかもしれません。こういう言い方をしたらよくないかもしれませんね。でも実際は23件出されて、経過観察が必要な事業者もあったようですが、課題をしっかりと掘り起こしながら、実施に向けてOKが出されたと推測できます。

まずは申請23件、今後は加速度的に増えるか

<赤澤>
なるほど。とはいえ23社しか申請できなかったのか、23社しか申請しなかったのか。結果的に申請しなかったのでしょうけれども。そのあたりがものすごく興味深いんですよね。一方で、ものすごく高そうなハードルだったものの、いざチャレンジしてみたら門前払いで落ちたところがなかった事実にも、同時に注目しなければいけないと思います。このあたりの捉え方が大事だと思うんですが、松本様、どう解釈したらよろしいですか。

(イメージ)

<東海電子取締役安全・健康システム営業部の松本剛洋部長>
そうですね。今の流れがどうなんだろうという意見が多いのですが、そもそも論として23社しか応募がなかったのは、冒頭申し上げた通り「周知不足」はあるいは「様子見」があるのかなと考えています。これからは加速度的に伸びていくように思っております。

そのうえで23社がすべて通ったという話なんですけれども、ここに関しては全くノータッチで通ったり全然チェックをしてなかったりということではなく、むしろ厳しくチェックをして、さらに多様なやり取りをしたうえで改善をして通った、という風にお考えいただきたいんですよね。

<赤澤>
なるほど。

<松本氏>
具体例を挙げますと、当社の場合はシステムのいくつかの部分では「このように改修できないか」「人の手が判断できる要素ではなくルールを厳格に守れる仕様にならないか」という要望を受けて、急きょシステムを改修したこともありましたので、ゆるやかではなかったことは確かだと思います。

<赤澤>
なるほど、そういうことなんですね。タイガー様、そのあたりはいかがですか。

<成澤氏>
遠隔点呼に踏み切った理由として、私どもで押さえているのは3点です。最も大きな要因としては、Gマーク(Gマーク制度=貨物自動車運送事業安全性評価事業)がなくても申請ができることですね。

<赤澤>
それは大きいですね。

<成澤氏>
「Gマークはかなりハードルが高いな」と感じる事業者も現実にいらっしゃいます。遠隔点呼は25項目をクリアすればいいんですけども、Gマークを取得するためには38項目で80点以上取得しなければならず、ハードルとして高い側面があります。事業者におきましても、Gマークがなかなか取れない現実がある中にあって、Gマークがなくても先進的な点呼を実施できるところが大きな要因としてはあると思います。最近の傾向としてM&Aが進んでいく中において、いわゆるグループ企業内で点呼ができるのも大きな利点と思います。

ここには期待していませんけれども、中小企業の中でGマークも取得してIT点呼も行っているんだけども、小さな営業所はGマークを取れてないので遠隔点呼でやろう、という事業者も非常に多いのかなと思います。それで申請をした例も現実にあります。

<赤澤>
なるほど。だから、先ほども「IT点呼と遠隔点呼の併用」が3分の1近くいらっしゃったわけですね。

<成澤氏>
はい。それから点呼業務に対しての会社内での見方。「このままじゃいけない」と分かってはいるけれどもなかなか踏み込めなかったところにおいて、25項目をしっかりと網羅できれば、会社の体質も変わっていくのではないか。

行政処分のかなりのウエイトは「点呼に対する項目が不十分」だということで、実際に処分を受けている事業者も多いことを考慮すれば、社内改革に踏み切る事業者も今後多くなってくるのではないかとみています。

遠隔点呼の実施に欠かせない「明るさ」

<赤澤>
よくわかりました。IT点呼と遠隔点呼は利便性の面で間違いないことは分かってきたんですけれども、同時にもう少し見極めが必要であり、さらに使い方や導入の仕方も結果に大きく影響してきそうだなと感じました。

今日ここまでの話の中で、それぞれの制度でいろんなルールがありましたよね。私、気になった点がいくつかありまして。照明をちゃんとしなきゃいけないと書いてくださったのですけど、その資料の中に500ルクスと、かなり具体的な数字が書いてあったんですよ。明るさを実際測ったりするんですか。

<松本氏>
そうですね。

<赤澤>
足りないとダメなんですね。

<テレニシ法人事業本部ソリューション営業二部の吉田寛之部長>
場合によっては、照度計を持ってきて測ることもしています。

(イメージ)

<成澤氏>
計測して500ルクスを超えていれば、写真を撮って提示する。

<赤澤>
なるほど、そうなんですね。もうひとつ、グループ企業の間では遠隔点呼が可能という話の中で、「100パーセント子会社であれば」の100パーセントがすごく耳に残っているのですが、あれは100パーセントじゃないとダメですか。

<成澤氏>
100パーセントと書いてありました。

<赤澤>
はぁ。だからそのへんの妥当性みたいなものを、メディア側の立場からすると「その根拠は」とどうしても聞きたくなるのですけれども、その聞かなきゃいけない疑問がたくさんありすぎて、ここでは紹介しきれないので、じっくりとトライしていきたいと思います。

とはいえ、そういう細かいろんなルールがある一方で、先ほど松本様から「そうはいっても実はそれなりに理由もあるんだよ」という話にも触れていただきました。そこをもう少し詳しくうかがいたいなと思います。ルールの背景みたいなところを教えてください。

<松本氏>
そもそも遠隔点呼や自動点呼の流れはかなり実的なものであり、「対面点呼原則」の考え方がいよいよ終わろうとしている大きな転換期であると思います。そのうえで「Gマークでなく、どなたでもできますよ」というのは、それを対面点呼と同等の安全性を担保できることでもあります。こういうルールを守っているから、対面点呼とみなしますよという考えがあります。その意味で安全性を担保できるルールが作られているということです。

<赤澤>
なるほど、考えてみれば当たり前じゃないか、ということですよね。安全性が担保できないのに認めていたら、もっとブレてしまうではないかということです。

ルールには必ず制定するだけの根拠がある、担保すべきはやはり「安全性」

<松本氏>
個々のルールにもちゃんと理由があります。無人の状態でも安全にできるか、例えば監視カメラは異例中の異例とも思えるのですが、ここに関しても無人の状態でアルコールチェックをしたときに、それが完全に安全にできるようにアルコールチェックとは別のシステムでちゃんとその人を捉えて、全身を映してアルコールチェックをしている姿を残す。そういった意味があるところで、1項目1項目に必ず理由があるわけです。

<赤澤>
なるほど。それを正しく解釈することが大事なのですね。そうだとすると、そのメリットをもし感じて導入を検討する事業者からすれば、自社なりの解釈でトライされることは大事だと思います。同時に先ほど審査に通った23社について、これを通した、あるいはなぜ通ったのかはものすごく重要な情報である気がします。

特に難しいこといっているわけではなくて必要だからそういうルールが作られたんだ、というご説明でした。そうだとしても、導入検討する側からすればこうした情報がすごく重要であり、導入できるかどうかを左右しそうな気もします。例えば販売会社としては、タイガー様であったり、メーカーとしては3社の皆様であったりするわけですが、情報のサポートを運送会社から求められませんか。

<成澤氏>
はい。おっしゃる通りでございまして、私どもも第1次、第2次は8月31日に終わりましたけれども、実績を積み重ねながらノウハウをつかんでいく形を取らざるを得ない部分があります。今までお話をさせていただいたように、非常にグレーの部分が多くメリハリのある内容ではないので「ここはどういうことなんだろう」「ここは何を準備したらいいんだろう」というポイントがなかなかはっきりつかめない。実はここが遠隔点呼の特徴でもあります。当社もこの遠隔点呼の取り扱いにあたって、どうしようかと実は社内でもみました。

その中で、1次2次とパイロットユーザーを作りながら、実際支局ともやり取りをしながら、そこで得た情報が次のお客様の申請に生きていくだろうということで、数こそ多くはないんですけどもお取り扱いをさせていただくとともに、現実に支局の立ち会いにも同席させていただいて、システムの中でどこをチェックされるのか、また環境や順守事項といったものに対して何をどのようにチェックされるのかについて、そういった情報を申請を通して受け止めているのが現状です。

<赤澤>
なるほど、分かりました。ありがとうございます。

第7回は、遠隔点呼とIT点呼、さらに自動点呼のそれぞれのメリットとデメリットを検証します。

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