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陸運の変動料金システムをascendが開発、近日提供

2023年2月7日 (火)

ロジスティクス物流分野のシステム開発やコンサルタントを手掛けるスタートアップ企業、ascend(アセンド、東京都新宿区)は7日、価格を需要動向に応じて変動させる仕組み「ダイナミックプライシング」をトラック運送料金に導入するシステムの実証実験が終了し、運送案件ごとに運賃相場が瞬時にわかるといった効果が確認できたと発表した。同社は近く運送事業者に向けて、このシステムを使ったサービスの提供を始める予定だ。

ダイナミックプライシング(変動料金制)とは、需要と供給のバランスに応じてサービスの価格を変動させるもので、旅行業界などで導入が進んでいる。それをトラック運送事業者と荷主の運賃交渉に使えないかという今回の実証実験は、国家プロジェクトである戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の一環として内閣府に採用され、同社が2022年度初めから実証実験を進めてきた。このほど実験が終了し、すでに結果は内閣府に提出している。

案件ごとに最高、推奨、最低価格を瞬時に提示

アセンドが開発したダイナミックプライシングシステムでは、まず運送案件のいくつもの情報(=値付けの根拠)を入力する。例えば、個数・重量をはじめ、運送の日時、ルート、輸送形態(幹線輸送か否か、混載の可否)、荷物情報、荷姿(パレットT11型など)、荷役作業の有無、といった諸情報を入力する。すると、求荷求車システムのデータを元に、アルゴリズムが「最高金額」「推奨金額」「最低金額」を自動で算出する。どの運送会社でも、この3つの金額を交渉材料として荷主と運賃交渉をすれば、許される値幅以内での合理的な交渉ができる。

▲ascendの日下瑞貴社長

とくに最低金額が把握できることで、原価割れを予防できる効果が大きい。「運賃相場の値崩れの防止は業界にとって望ましいと思う」と同社の日下瑞貴社長は強調する。

また、値付けの根拠の諸情報を変えると、最高・推奨・最低の各金額も瞬時に連動する。細かい条件変更でも頭が混乱することなく、推奨価格が把握できるので、常にデータに基づいたしっかりした運賃交渉ができる。さらに、季節や月初・月末、午前・午後といった時間軸ごとの運賃相場もアルゴリズムが可視化し、運送事業者の交渉力をより高める。

24年問題による収益減少を防げ

アセンドの狙いは、運送事業者の運賃交渉力と収益の向上、荷主企業が納得のいくプライシング(値付け)を図ることにある。とくに、トラックドライバーの残業時間が規制されることによる「物流の2024年問題」では、輸送力低下だけでなく、運送事業者の収益減少の懸念があることを同社は警戒している。

同社は近く、ダイナミックプライシングのシステムを自社の運行管理サービス「LogiX」(ロジックス)に搭載する計画だ。サプライチェーンの各主体とも連携して、トラック運送市場への社会実装を進める考えだ。

DXで運送業の交渉力アップを/ascend日下社長

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