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「大雪時は安全優先」、ニチレイLが運行中止基準

2023年2月9日 (木)

フードニチレイロジグループ本社は9日、大雪などの災害発生が予測される場合の対応について発表した。高速や幹線道路での大規模な立ち往生などの被害が相次いでいることを受け、従業員らの安全確保と取扱貨物の保全を優先すると宣言した。

▲立ち往生するトラック

2021年1月に国土交通省から出された、大雪などの異常気象時に関する輸送の安全確保に関わる文書内容を踏まえ、基準に基づき臨時休業や営業時間の変更、運行中止をする場合もある、としている。同文書では、貨物自動車運送事業法に基づく「荷主勧告制度」を示して無理な輸送を強要しないように、荷主側に周知するなどしている。

同社が今回定めた基準としては、鉄道の運休計画が発表▽政府、気象庁、自治体から警報・避難情報が発表▽高速道路や主要国道が通行止めや立ち往生▽台風・降雪などにより物流業務の遂行が困難と判断▽異常気象時下での輸送の目安(国交省通達)−−の5項目。いずれかに該当し、運行中止などが必要と同社が判断した場合に運用する。

基準5項目が解消された場合の業務再開は、従業員の安全確認と業務実施人員の確保▽物流施設、機器の機能と安全▽交通インフラの機能−−の3項目が確認できた後としている。

同社は「臨時休業、営業時間の変更、運行中止の際は多大なる迷惑を掛けるが、人命尊重と貨物保全の重要性を理解してもらい協力をお願いしたい」としている。

勇気ある決断、それが社会インフラとしてのさらに高次な機能を獲得する

災害の発生を見越して輸送業務を止める――。社会に不可欠なインフラの担い手として「勇気ある決断」に踏み切る背景には、強行による長期的なマイナス影響を考慮する事業者の思惑がある。

かつては、物流に携わる者だからこそ、災害が予想されるケースでも輸送業務の継続にこだわる発想が支配的だった。それは「使命感」と翻訳されて現場従事者が堅持すべき心構えとされてきた。

消費者の立場からすれば、災害時だからこそ手に入れたい品物を確保できるメリットがあることから、こうした輸送事業者の姿勢を前向きに解釈する力学が働く。ゆえに両者の利害が一致することから、社会も輸送事業者の“強行策”を容認してきたわけだ。

しかし、少子高齢化や就業趣向の多様化で輸送現場の最前線に立つ従事者の確保が難しくなってくると、ドライバーの就業環境を意識した現場運営が求められるようになった。ドライバーは安全な状態で荷物を運ぶことが使命とされるようになり、災害時の輸送継続をあえて自重することで、結果として荷物をより適した形で運ぶことができるとの考え方が広まってきたからだ。

さらにこうした動きを促す要素となっているのが、荷主の理解だろう。輸送現場の使命感もさることながら、荷主による定時配送の強い要請が現場にプレッシャーを与えていた側面は見逃せない。大雪で立ち往生する大型トラックの列は、こうした荷主の望みを実現するために懸命なドライバーの心情を物語っている。

社会のインフラとしての機能を持続させるには、瞬時のパワーだけでなく持続的な安定性も欠かせない。物流が真のインフラとなるには、こうした長期的な視座が必要だ。大雪で立ち往生するトラックの姿が過去の話になるのはいつの日か。それを実現することにより、物流は社会を支える機能をさらに高めることができるだろう。(編集部・清水直樹)

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LOGISTICS TODAY編集部
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