ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

物流施設特集-厚木編-/後編

物流の要衝・厚木の今を支えるヒトと街づくり

2023年5月24日 (水)

話題日本全国への配送網の中枢として、物流の拠点が次々に集まる厚木。「厚木特集」前編では、その現状を交通の要衝という観点から紐解いてみた。

後編では、行政のサポートや環境など、その街づくりと人々の生活から、物流業界人が働く街としての「厚木」の魅力に着目してみたい。

>>前編「集中と拡張、厚木が繋げる物流インフラ網」はこちら

働く現役世代多く、世帯数も増加で労働確保に優位性

厚木市の概況を見てみよう。人口は22万4129人(2023年5月1日現在、厚木市役所まとめ)。その内訳は男性が11万5416人、女性は10万8713人。世帯数は10万4434世帯(同)で、2015年の国勢調査の9万5824世帯と比べて、8.9%(8610世帯)も増加している。

15歳以上労働力人口(2020年10月現在、国勢調査)は10万6832人。内訳は男性が6万2650人、4万4182人となっている。年齢構成(2021年、県年齢別人口統計調査)については、15歳未満が2万6102人、15~64歳は13万6847人、65歳以上は5万7679人で、働く現役世代が多い。

▲市役所中央公園通りに設置されている案内標識

地域経済力はどうだろか。ハローワーク厚木(厚木市・海老名市・座間市・愛甲郡<愛川町・清川町>を所管)の発表資料によると、2022年度のパートを含む有効求人倍率は1.07倍だった。21年度は0.93倍、20年度は0.89倍で、22年度は3年前よりも0.14ポイント改善している。

パートの時給については、2023年3月は上限・下限の平均は、それぞれ1360円、1218円だった。個別では「輸送・機械運転」が1259円、1240円、「運搬・清掃・包装など」は1240円、1128円となった。また、「求職賃金」(求職者が希望する時給)の平均は全体が1164円、「輸送・機械運転」は1125円、「運搬・清掃・包装など」では1099円で、全体、個別ともに求職者の希望時給を上回る賃金となっている。

この傾向は年明け以降から続いている。2023年1月は全体が1337円、1208円(求職者賃金平均:1133円)、「輸送・機械運転」で1218円、1177円(同:1175円)、「運搬・清掃・包装など」は1224円、1156円(同:1096円)となった。2月は全体が1320円、1179円(同:1142円)、「輸送・機械運転」は1288円、1188円(同:1149円)、「運搬・清掃・包装など」で1154円、1101円(同:1083円)だった。


(クリックで拡大)

「日本一」を掲げる手厚い子育て支援策を提供

厚木市は「子育て環境日本一」を掲げており、助成金や施設、サービスなど手厚い子育て支援を行っている。主な支援策としては助成金で「子ども医療費助成」「幼児同乗用自転車購入費助成」「自転車ヘルメット購入費助成」などがある。

▲厚木市役所外観

「子ども医療費助成」は厚木市民の0歳児から中学生までの医療費で健康保険適用分の自己負担額を助成する。保護者の所得による制限はない。「自転車ヘルメット購入費助成」は、自転車に乗る全ての市民を対象に、ヘルメット購入費を上限1000円まで補助する。「幼児同乗用自転車購入費助成」では幼児2人乗せ自転車の購入費を上限1万6000円まで助成する。

子育て世代に向けた施設は「子育て支援センターもみじの手」「託児室わたぐも」などを設けている。

「子育て支援センターもみじの手」は、小田急小田原線「本厚木」駅から徒歩5分にあるショッピングセンター「アミューあつぎ」内にある子育て支援センター。355平方メートルの屋内広場で、未就学児を遊ばせながら交流できるサロンで、保育士による子育て相談も行っている。

「託児室わたぐも」も「アミューあつぎ」内にある託児所。買い物などの際に、満1歳~小3までを対象に、有料で子供を一時的に預かる。また、地域の遊び場となる児童館も充実しており、県下最大という38館が設けられている。

サービスでは、「ほっとタイムサポーター」「ファミリー・サポート・センター」「保育所・幼稚園の預かり保育」などを提供する。

「ほっとタイムサポーター」は、妊娠中や出産後の家庭にサポーターが訪問し、育児や家事を有料で手伝うサービス。「ファミリー・サポート・センター」は、子供の保育所などへの送り迎え、預かりを援助する有料のサービスになる。また、「保育所・幼稚園の預かり保育」では、親の様々な事情に対応したサービスで、一時的な預かり保育や、休日保育、病児保育などを受けることができる。

厚木市は、策定した2040年を目標年次とする「厚木市都市計画マスタープラン」で、市内の土地開発で「コンパクト・プラス・ネットワーク型都市構造の更なる充実」と「豊かな自然を守り、いかす都市構造の構築」を方針として打ち出している。

「コンパクト・プラス・ネットワーク型の都市構造の更なる充実」は、中心市街地に居住など全てを一極集中するのではなく、居住と生活サービス施設をバス路線沿線に緩やかに誘導し、距離を短縮することで、生活利便性を高め、誰もが快適に移動できることで暮らし働き続けられる都市を目指すとしている。

▲本厚木駅には数多くの路線バスが発着している

「豊かな自然を守り、いかす都市構造の構築」では、自然環境を共有する資産として保護。生物が生息する場の提供や良好な景観形成など、魅力ある地域づくりを進める。また、自然環境を観光資源として活用するなど、新たな価値を生み出し都市構造に生かすという。

▲本厚木駅北口の「厚木バスセンター」

産業・地域交流拠点の開発では、インターチェンジに近接した立地条件を生かし多様な産業を集積するほか、既存産業の操業環境を向上して経済活動を活性化し、地域の交流の場づくりを推進。周辺の住環境や自然環境との調和を図り、都市と地域の活力を生み出す土地利用を進める。

市内の土地利用の状況については、国土交通省の「都市計画基礎調査(2015年度調査)によると、住宅地、工業用地、事務所、店舗用地、一般道路などによる土地利用の「都市的土地利用」の面積は、4682ヘクタールで、市内の約50%を占めており、5年間で93ヘクタール増加した。

「都市的土地利用」では、住宅や集合住宅、併用住宅といった住宅系用地の面積が最も多く、1542ヘクタール(16%)を占め、道路・鉄道用地881ヘクタール(9%)、ゴルフ場や公園などの広場・運動場等用地が648ヘクタール(7%)、工業系用地562ヘクタール(6%)が続いている。

一方、田畑などの農林業的な土地利用に、自然環境の保全で維持する森林、原野、水面、河川、海浜などの土地利用を加えた「自然的土地利用」の面積は、4702ヘクタールで約50%を占める。

また、2010年から2015年の推移でみると、住宅系用地が34ヘクタール増加し、次いで商業用地が18ヘクタール増加、工業用地は8ヘクタール増加した。そのほか、屋外駐車場や改変中の土地などの空地が3ヘクタール増えている。

利便性だけではない、人流が絶えない街の魅力

厚木市の居住者に話を聞くと、この街の最大の魅力は「利便性とレジャー空間の共存」だという。前段までで語り尽くされた交通の利便性による東京・横浜へのアクセスはもちろん、本厚木駅前にはファッション、雑貨、飲食などのサービス業が集まる。主要チェーン店はもちろん、地元の個性的な個人経営店も多く、地元発のB級グルメとして「シロコロホルモン」が注目を浴びたのも記憶に新しい。欲しいモノが一通り身近で手に入るが、ちょっとしたお出かけのハードルも高くない。都心にあるものは大抵揃っているが、その街特有の個性も楽しめる、そんな街だと言える。

▲本厚木駅前

一日10万人を上回る本厚木駅周辺の乗降客数は、その数で有楽町駅と肩を並べるだけに、駅周辺では人の流れが絶えない。駅南口の再開発が落ち着き新しい商業施設が稼働したが、今後も駅周辺の整備は続く。そんな駅前の喧騒を避けたい時は、少し足を伸ばして相模川や丹沢山系の雄大な自然の広がり、丹沢温泉や飯山温泉などで楽しむこともできる。行政の子育て世帯への支援が手厚く、自然を活かした大きな公園も整備されているため、週末は子供連れの家族で賑わう。

冒頭に話を伺った厚木市民も、子どもが誕生したのをきっかけに厚木市に移住したこともあり、子どもと「ぼうさいの丘公園」へ頻繁に出かけ、「あつぎ鮎まつり」の大花火など季節ごとの楽しみにも事欠かないと言う。リモートワークが推進された時期には特に注目され、近年、住みたい街アンケートでの上位ランクインの常連となるのも納得できる。

これらは主に、厚木に住む人たちから見た街の魅力だが、この街は単なる都心のベッドタウンではない。実は昼間人口が夜間人口を上回り、近郊から流入する学生や労働者が躍動する街でもある。他社線への乗り換えがないにも関わらず、関東圏有数の利用者数を誇る本厚木駅を中心としたこのエリアは、厚木から出発する人々とともに、厚木にやってくる人たちに支えられてもいるのだ。

流通業をはじめ、厚木に拠点を構える企業で働く多くの人々こそが、厚木の街そのものを活性化させる重要な構成員だと言えるだろう。

編集後記

▲国産バラ豚丼

鉄道とバスを乗り継いで厚木内陸工業団地などに向かう現場スタッフも多いだろうな、などと考えながらJR本厚木駅を南口へ出てすぐに、「肉」を使った料理の多いことに気づいた。正確には気づいたというより、通りに漏れ出す香ばしい香りに包まれ、「なんだこれは」と見渡した結果であった。

多くの「選択肢」を前に迷いながらも意を決して入ったのが、豚丼専門店「なまらうまいっしょ本厚木店」。国産バラ豚丼はこだわり抜いた肉質とタレもさることながら、さっぱりした味付けのキャベツが添えられ、これがまた香ばしく焼き目のついたジューシーな北海道産の豚肉とよく合う。その日の仕事を終えて疲労のたまった体を癒やすには、味、ボリュームともに申し分ないだろう。時間帯によっては行列が日常風景となっている店だが、隙を見て「突撃」することをおすすめしたい。

▲豚丼専門店「なまらうまいっしょ本厚木店」

>>前編「集中と拡張、厚木が繋げる物流インフラ網」に戻る



「巨艦級」物流施設、群抜く汎用性(オリックス不動産)


「SOSiLA」ブランドで新発想の物流拠点を展開(住友商事)


事業展望を具現化して保管型施設で顧客ニーズに応える(CRE)


内陸工業団地中央に汎用性高い新施設(三菱地所)