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代引き顧客に教えられた配送という商取引/ドライバー日誌第27回

2023年8月22日 (火)

(イメージ)

話題いわゆるスマートフォンやパソコンなどの端末を使ってEC(電子商取引)で商品を購入する際に、どの決済方法を選んでいるだろうか。私が飲料水の宅配業務で訪問した顧客の場合は、実に95%以上がクレジットカード決済を選択している。数日に1人の割合で、代引き決済を求める顧客に出会うことがある。

代金と引き換えに品物を渡す商取引である代引き決済。本項でも以前に代引き顧客の応対について触れた。かつては、通信販売や宅配便でも現金での決済が一般的だったため、代引きを選択するのが通例だった。しかしクレジットカードが普及すると、キャッシュレス決済がブームに。代引きでの決済の機会は大幅に減少した。

宅配ドライバーは、こうした代引き決済の顧客に対応できるよう、釣り銭を常に携帯している。1万円札を受け取っても正確に釣りを渡せるように、1万円札を除く全種類の紙幣と硬貨を常にケースに入れて持ち歩いているのだ。

▲代引きによる商品受け渡し。宅配も「商取引」であることを思い出させてくれる

ある週末の配送で、久しぶりに代引き決済の顧客を訪問する機会があった。顧客宅の玄関まで商品を運んで呼び鈴を押す。在宅していた顧客からは、五千円札を受け取った。飲料水の契約時に顧客が登録したアプリケーションで金額を確認できる。とはいえ、なかなか1円単位まで用意している顧客は珍しいという。ドライバーは、そのために小銭を確保しているのだ。

クレジットカード決済の顧客に商品を届ける場合は、ともすれば「商売」の一翼を担っている感覚を失ってしまいがちだ。金銭のやり取りが発生しないため、荷物を渡す行為そのものが目的になるからだ。しかし、代引き決済の顧客と応対することで、宅配という仕事がれっきとした商取引であることを思い出させてくれるのだ。

現金を使わない購買スタイルが全盛の現代。代引き決済を選択する顧客は、生活費の「可視化」を信条としているというが、あながち間違いではなさそうだ。ドライバーにとっても、代引き決済の顧客との応対はビジネス感覚を磨く有効な方法ではないだろうか。(つづく)

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