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匠のAGVとFIGグループのロボット事業連携から広がる現場改革

匠、純国産にこだわるロボット開発と未来への連携力

2023年9月22日 (金)

話題働き手不足、現場作業者の高齢化が顕在化する物流現場では、DXへの取り組みが必須であることは、もはや言うまでもない。物流ロボット、AGV(無人搬送機)、AMR(自律走行搬送ロボット)の市場規模も拡大したくさんのメーカーが積極的に独自のソリューションを展開しているため、導入サイドで将来あるべき物流現場像がしっかりと見えていないと大事な選択を誤ってしまうおそれもあり、ユーザーの「見る目」が試されている。

匠、純国産にこだわるロボット開発力で物流改革

▲物流倉庫内での導入シーン(モデルケース)

純国産による物流ロボットを開発する匠(福岡市中央区)も、自律搬送AGV「TiTra(ティトラ)G500」「同G1000」を、競争激しいこの市場に投入した。

倉庫現場などでの労働力不足の問題に対して、省人化と最適化を実現するTiTra Gは、床面に碁盤目状に敷設したマトリクスコードを読み取りながら自律搬送するAGV。従来、目的となる棚まで人が移動して行っていたピッキング作業を、ロボットが該当する棚ごと作業者のもとに搬送することで、作業者の移動時間・作業時間を大幅に削減することが可能となる。

▲TiTra G1000

またTiTra Gは、その搬送重量能力に応じて500キロ搬送可能な「G500」、1000キロ搬送可能な「G1000」の2タイプが用意されており、重量物の運搬など構内物流の省人化・自動化の業務改善にも貢献する。

同社のロボット作りの歴史は2015年の創業時の、OEMでのロボット開発から始まる。19年に自社独自のロボット開発に移行し、その翌年には現行のロボットの前身となる「TA-G500」を発表するなど、ロボット開発の経験値を高めてきた。

同時に、ロボットの基本性能はもちろん、同社が開発するロボット運行管理・制御システムにおいてもこれまでの開発経験とノウハウを注ぎ込み、TiTra Gでは床面のマトリクスコードを読み取りながら、自己位置を認識するGRID(グリッド)式での走行性能・最適経路の選択・複数のロボットの同時運行の調整機能を進化させ、省人化現場の円滑な運営をサポートする。

▲TA-G500が走行する様子

「私たちの強みは、純国産メーカーとして日本の現場を知り、現場の方々の意見を取り入れることで、レスポンスよく対応できることだと考えています」と営業部の部長を務める三國直行取締役は語る。市場で先行するAGVには、海外メーカーのものが多い。もちろん海外市場で揉まれたシステムの完成度などには見習うべき部分も多いが、三國氏は「日本の現場に合った機能や、それぞれの状況に素早く応じることが出来る柔軟性、さらにアフターケアまで丁寧に対応できる安心感は、国産メーカーにしか出来ない部分ではないでしょうか」と語り、「開発から製造、保守、メンテナンスまで、メーカーとしてワンストップで対応しているメーカーは、国内でも少ないと思います。導入時のきめ細かいご相談から各ユーザーの現場状況に応じたシステムをいっしょに作り上げていくことが基本です」と、匠の名に恥じない「メイド・イン・ジャパン」のものづくり精神から、競争激しい市場での差別化を図る。

さらに、運行システム開発を担当する技術部の濱田準一部長は、「匠の強みは、私たちのロボット運行管理システムが、FIGグループのプライムキャスト(東京都千代田区)が開発した上位のWCS(倉庫制御システム)との連携によって、さらに庫内業務の最適化を進められることにあります」と語り、匠AGVの性能を最大限に引き出すことに特化した、プライムキャストの物流管理ソリューションとの提携効果に言及する。

プライムキャスト(FIGグループ)のWCSが引き出す、匠のロボット性能

▲WCSと運行管理システムの連携(クリックで拡大)

プライムキャストは98年の創業。物流管理や受発注管理など物流現場のシステム開発を手掛け、運送事業者との連携の中で実効力のあるソリューションを提供してきた、これもまた匠同様に「現場を知る」ITベンダーである。匠との連携では、ロボットの運行管理システムの上位システムにあたる独自の専用WCSを開発した。

プライムキャストの開発したWCSについて、同社の海谷雄司取締役執行役員は、「より高度な庫内作業への対応や、スムーズな連携、AGVの稼働データ収集・分析による改善など、庫内作業の見える化を進めることが出来ます」と言う。また、WCSのさらに上位システムとなるWMS(倉庫管理システム)との連携や、輸配送管理システムとの連動まで広げていくことによって、庫内作業の最適化への取り組みにおいて、その効果を最大限にまで高めることが期待できる。

FIGグループの総合力で強み増すソリューション開発

この匠とプライムキャストの連携は、IoT事業、マシーン事業、スマートシティ事業を展開するFIG(エフアイジー)と匠との資本提携が契機となった。

FIGは、プライムキャストを含めて12社のグループ企業を傘下に置く。IP無線システム、決済システム、半導体製造などグループ全体でIoTを活用したイノベーション事業を展開しており、ロボット事業分野の推進にも力を注いでいる。一方、匠はロボット開発における次のステップとして、本格的な市場導入における量産体制など、さらなる事業拡大に向けては資本調達の課題を抱えていた。両社は、22年2月に資本業務提携を結ぶ。これによって、FIGはロボット分野における匠のノウハウとの共創、匠は開発力の体制強化を実現することとなり、同年8月には、経営体制の見直しや事業体制の強化にまで、より深く踏み込んだ連携へとステージを進めて、事業拡大を目指している。

(クリックで拡大)

匠とFIGの資本業務提携は、すでに技術開発の加速、事業の効率化においても目に見える形での成果を発揮している。「プライムキャストとの連携で、物流現場において真に有効なハードとソフトを一体で開発できたことがまず第一。さらに、これまで匠のロボット製造は自社生産と協力企業で対応してきましたが、FIGグループのREALIZE(リアライズ、大分市)への全面製造委託に切り替えることが出来ました。これによって安定した品質向上を実現するとともに、量産体制に応える体制も整えることが出来ました」(三國氏)。また、ロボット開発においては、グリッド方式AGVとSLAM(スラム)式AMRを同時進行で開発してきたが、「スラム式に関しては、やはりFIGグループのciRobotics(シーアイロボティックス、同)においても開発が進められていることから、匠はAGVに特化した開発に資源を集中し、各領域でそれぞれの成長を加速させることに注力しました」(三國氏)と言う。

プライムキャスト海谷氏は「同じ物流領域の改革、効率化を働きかける両社が、お互いの専門領域に特化した開発を進めながら、共同作業において、より大きな相乗効果を目指したのが私たちの連携です。FIGグループのソフト開発力と、匠のものづくりの力が、資本提携によってお互いにパワーアップを果たしたと言えます」と語る。

各専門領域の開発進化を支援する、グループとしての広範なノウハウ

ソリューションの選択においては、その選択肢が多ければ多いほど最終判断も難しくなる。今選んだシステムが3年後、5年後でも最適解なのかは評価が難しく、時代に応じた改修や補強を繰り返しながら見直していく必要がある。

物流改革においてそれぞれ競争領域での技術開発はもちろん重要だが、それと同時に「標準化」という指標をユーザーが重視し始めているのも、絶えず変化し続ける現場での持続性が見直されているからだろう。すでに組み込まれてしまったシステムは、簡単に「取り替える」ことも出来ないだけに、問題の発生時においてもカスタマイズされた狭い硬直した選択肢の中ではなく、標準化されたより広い選択肢で対応できるようにしておくことも、リスク管理の一つと言える。

(イメージ)

匠のAGVを中心としたシステム導入では、プライムキャストのWCS、さらにその上位システムへの連動の実現で、ワンストップで各工程でのスムーズな連携と機能の最大化を提案する。同時に、将来的な新しい機能や機器の追加といった部分では、今後FIGグループとしての多彩な開発力やサービス提供力とのさらなる連携や拡張も期待できそうだ。各工程や各マテハンごとに違うベンダーとメーカーのサービスをパッチワークのようにつぎはぎするのではなく、FIGグループ内の物流に関わるノウハウを必要に応じて取り込むことによる「グループ内の標準化」が可能となる。FIGグループは、IoT開発・通信技術・半導体製造・ロボット開発・ドローン開発・物流コンサルティングなどを網羅しており、柔軟でサステナブルなサプライチェーンを安心して段階的に積み上げていくこともできる。

「実際に導入を決めていただいた企業も、メイド・イン・ジャパンの安心感に加えて、それぞれの専門領域での開発力と、横断的なシステム連携力に期待いただきました」(三國氏)

2024年問題、さらにその先の対応を考えるとき、ただの対症療法ではなく、未来像を見据えた改革が必須となる。そのとき、数ある選択肢の中で、匠とFIGグループの提案をどのように評価するのか「見る目」が試されており、まずは相談も含めた具体的なアクションを起こすタイミングが、今ではないだろうか。

■TiTraG搬送システム動画(制作:プライムキャスト)

プライムキャスト