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年頭所感2024 〜LOGISTICS TODAY新春特別企画〜

全ト協、2024年がゴールではなく「今がスタート」

2024年1月1日 (月)

話題全日本トラック協会(全ト協)の坂本克己会長による年頭所感の要約は次の通り。

(以下要約)

全ト協の坂本克己会長

トラック輸送産業は、エッセンシャルワーカーであるドライバーの皆さんのたゆまぬ努力により、全国各地で地域の経済と人々の暮らしを支えており、公共交通機関としての重責を担うとともに、地方創生の旗頭として、高い評価を得てまいりました。「物流の2024年問題」という、業界にとっての一大転換点を強い結束力で乗り越え、引き続き我が国の経済活動を支え続けていくために、全ト協では政府と一体となって「物流の2024年問題」解決に精一杯取り組んでまいります。

国際競争に打ち勝つ強固な物流の実現に向け、ドライバーの皆さんは、まさに日本経済の一翼を担う真のエッセンシャルワーカーであり続けなければなりません。

一方で、「2024年問題」は2024年さえ乗り越えれば終わるという一過性の課題ではなく、一般労働者と同程度の労働時間の実現に向けて、今後もさらなる労働時間短縮への取り組みが求められてきます。また、労働力不足や商慣行の見直しなどへの対応も求められてくるため、2030年の輸送力不足も見据えて、さまざまな対策に中長期的に取り組んでいく必要があります。2024年がゴールなのではなく、我が国の「物流革新」に向けた取り組みは今がスタートだと考えなければなりません。

全ト協としましては、非効率な商慣行の見直しやDX(デジタルトランスフォーメーション)などによる物流の効率化・生産性の向上を図る「イノベーション」を何としても実現させ、一般消費者、トラック運送事業者やドライバー、荷主の3者が発展する「三方良し」の社会を実現させるべく、政府などと連携しながらさまざまな取り組みを進めてまいります。

昨年6月には、皆様方のご協力を頂戴しながら、私が先頭に立って実現に取り組んできた貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律が可決・成立し、「標準的な運賃」「荷主対策の深度化」の制度が当分の間延長されることになりました。

さらに、荷待ち・荷役に係る費用、燃料高騰分、下請に発注する際の手数料なども含めて、荷主企業などに適正に転嫁できるよう、国土交通省に設置された「標準的な運賃・標準運送約款の見直しに向けた検討会」において「標準的な運賃」と「標準運送約款」見直しに向けた議論が進められ、昨年末に見直しに向けた提言が取りまとめられました。

「標準的な運賃」「燃料価格の高騰分」については、荷主からしっかり収受しなければなりません。また、燃料サーチャージは運賃とは別建てで収受するほか、高速道路料金についても荷主から収受していくために、各事業者において荷主としっかり交渉を行う必要があります。関係行政機関ではできる限りの施策を実施していただいており、適正運賃・料金収受への外堀を埋めてくださいました。さらに、内堀を埋めるべく、次期通常国会には適正運賃収受、賃上げの実現等の環境整備に向け、内閣法が提出される予定です。あとは、政府が現在進めている持続的な賃上げを実現させるために、会員事業者が荷主等に対して体当たりで交渉を行い、適正運賃・料金収受を勝ち取り、ドライバーの賃金水準の向上など待遇改善を実現させて、「自信と誇り」が持てる職業にしていかなければなりません。

そのためには、荷主が運賃交渉に応じない、また荷主や配送先の都合による長時間の荷待ち、契約にない附帯作業をさせられるなど、国交省による勧告や要請などの対象となる違反原因行為の疑いがある荷主企業に関する情報をトラックGメンへ提供いただきたいと考えております。トラックGメンと連携し、商慣行の見直しに向けた取り組みを加速していくことで、荷主とトラック運送事業者の立場が対等になることを確信しております。

さらに公正取引委員会では昨年11月、内閣官房と連名で「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を取りまとめており、運賃交渉に応じない荷主に対しては独占禁止法および下請代金法に基づき厳正に対処していく方針が示されております。

また、「物流革新に向けた政策パッケージ」において、「物流拠点の機能強化や物流ネットワークの形成支援」や「労働生産性向上に向けた利用しやすい高速道路料金の実現」が明記されました。全ト協としましては、引き続き、道路を使用するドライバーの労働環境の改善を図るため、暫定2車線区間の4車線化やミッシングリンクの解消、渋滞対策の推進のほか、高速道路のSA(サービスエリア)・PA(パーキングエリア)などにおける駐車スペースの拡充や多くの運送事業者の輸送効率化に資する高速道路の利用を一層推進していく観点から、大口・多頻度割引の拡充措置の継続などについて、政府・与党に対して強力に要望活動を行ってまいります。

トラック運送業界にとって、2024年はまさに正念場ともいえる1年を迎えることになると思いますが、「我々トラック運送業界こそが、我が国の経済活動を力強く支えている」という強い気概をもちながら、業界が一丸となってこの難局を打破してまいりたいと考えております。