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ロジスティクス4日の「人手不足倒産」に続いて、またも帝国データバンクから、貨物運送事業を取り巻く厳しい数字が報告された。ことし上半期の運輸事業の人手不足倒産が過去最多の27件と報告されており、トラック運転手の減少や流出で収益が厳しくなる現状が示された。加えて今回の調査では、燃料や人件費コストの増加が運送事業経営に与える影響が大きく、業界の9割を超える体力のない中小運送事業の倒産を招いたと分析している。
もはや企業努力によってコスト増加を吸収できる局面ではなく、適切な価格増加分を運送料金に転嫁していくことが必要だが、運送事業における価格交渉の進ちょくの遅れ、価格転嫁率の低さなど、業界特有の構造や慣習が物流危機を顕在化させたとも言える。これまでのコスト削減は、運転手の賃金抑制に反映されることも問題だったが、今後は運転手の賃金水準上昇も適切に進めていくことができなければ、そもそも運び手がいないという事態になりかねない。

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全日本トラック協会は「物流事業者自身がアクションを起こさなければ」と呼び掛け、具体的な荷主や元請けとの価格交渉の方法についての普及にも力を入れていくという。物流2法改正や標準的運賃など、行政が後押しする環境は整いつつあるが、それを活用するのはあくまでも運送事業各社の努力であり、ただ待っているだけでは事態は改善しない。
また、荷主・元請け企業など発注者側は、これまでの独占禁止法での運用に加えて、下請法の見直しなど、公正取引委員会が物流の適正化を積極的に監督する動きが進んでいることを忘れてはいけない。買いたたきなど不正行為に対する規制をより明確にし、日常的な価格交渉や構造的な価格転嫁の実現に向けた省庁横断的な仕組みも強化される。物流における発注者には、より意識的・積極的に適正な運送料金設定に取り組むことが求められている。
まずは、コストとしての物流の見方からの意識変革が最優先事項となる。これからは、安全・安心な物流の維持こそが、高品質のサービス提供と直結する。コスト削減に向けての取り組みは重要だが、それが運送事業者や運転手の犠牲で成り立つことがないよう、社会全体で物流を理解していかなければならないだろう。
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