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「第二回物流DX会議」レポート

協調領域の連携は、まず「やってみる」ことから

2024年8月26日 (月)

話題物流における個別工程での効率化の限界を乗り越え、各工程やシステムがつながった物流のあり方を検証するため、物流デジタルサービスの先進的プロバイダーが集結し、連携から生まれる新しい物流像を模索する取り組み「物流DX会議」。昨年の旗揚げから1年が経過した23日に「第二回物流DX会議」が開催された。

昨年6社のデジタルプロバイダーでの発足から、今回は参加企業も18社に拡大。前回の課題となった連携の各論として、8つの事例が紹介される機会となった。

ここではそのうち、4つの事例を取り上げて紹介する。

プラスオートメーション×セーフィー

▲(左から)プラスオートメーション・田口智士氏、セーフィー・中原航氏

物流ロボティクスサービスを展開するプラスオートメーション(+A、東京都港区)と、クラウド録画サービスのリーディングカンパニーであるセーフィー(品川区)の連携取り組みは、連携の目的を「t-sortの生産性の最大化」とし、t-sortの実績データとセーフィーの映像データを組み合わせて、生産性の低下要因を分析することに取り組んだ。「映像とデータ分析による最大効率の追求(WES×映像分析)」をテーマとして、EC(電子商取引)商品の仕分けと配送サービスを提供するGBTechnology(ジービーテクノロジー、渋谷区)における、実際の検証現場の様子などが公開された。

+AがRaaS(Robot as a Service)として展開する仕分けロボットt-sortは、作業の効率化で導入が進むソリューションだが、ロボットの走行架台上に人がトラブル解決のために立ち入ることでの停止状況が発生し、作業効率の低下を招くケースが皆無ではないという。また、コンベヤーの詰まりや、走行架台上の荷物転倒など、データだけではその原因や状況を判別できなかった部分について、映像確認によって要因を明らかにする取り組みである。

走行架台上に人が立ち入る原因となるトラブルとはなんだったのか、コンベヤーの不調、人の投入ミス、それともロボットの不具合なのか、どのエリアでトラブルが起きやすいのか、それによる損失はどのようなもので、その改善によってどんな効果があるのか、どう改善すればいいのかなど、現場映像からの確認・分析を実証。トラブル発生回数などの特異点をデータから抽出し、問題が発生するエリアやラインを特定、それがシステム不具合によるものか人の作業ミスなのか、映像データから検証して改善策を見いだす作業が検証された。例えば、人の投入ミスであれば、その作業方法の見直しに取り組むことで作業員教育につなげることもできる。作業者の生産性によるものであれば、人員配置の最適化といった対策を打つことも考えられるだろう。またコンベヤーやロボットに起因するものであれば+Aに相談するなど、今後の取り組みむべきことも明確だ。

今後、+Aは改善へ向けたコンサルティング、セーフィーは映像確認BPOサービスなどでユーザーに向けた新しい価値提供が期待できる。レイアウトやシュート数、人材配置の最適化などから、画像認識による計測業務の自動化へと、自動化工程を拡大できれば、ドライバーの荷受け作業のさらなる効率化から、積み付け計画の精度向上へと発展することも期待できる。データと映像、それぞれの得意・不得意を相互補完することで実現する新しい効率化は、今後さまざまな課題を抱える物流現場からのアイデアなどを加えて、さらに革新的なサービスの実現につながることが期待される。

KURANDO×セーフィー

▲(左から)KURANDO・菅野裕介氏、セーフィー・其田宙太郎氏

データに基づいた庫内可視化を進めるKURANDO(クランド、東京都品川区)と、監視カメラ映像から現場可視化を展開するセーフィーが発表したのは「数値データとクラウド映像で庫内生産性を可視化、現場の改善サイクルを高度化・精緻化」する取り組み。

クランドの庫内作業状況データ取得ツール「Logimeter」(ロジメーター)と、セーフィーのクラウドカメラ技術は、ともにそのソリューション領域で先導する事業者だけに、すでにそれぞれのツールを導入している現場が多い。渋沢倉庫の福岡営業所でも、すでにクランドのロジメーター、セーフィーの遠隔モニタリングを導入していることから、今回の2社連携による一歩先の連携実証を進める舞台となった。

両社のソリューションはともに「見える化」を進めるソリューションであるが、ロジメーターはデータ作業の記録、生産性・収益性のダッシュボード化を得意として、データが示した現場状況の把握、原因特定などは苦手領域とする。一方セーフィーのクラウド録画サービスは、映像での振り返りを得意とするが、複雑な動きの数値化、作業実績とのリンクなどは不得意とする。両社はこの2つのシステムが相互補完関係にあると考え、生産性のばらつきや悪化要因などを映像で特定することで、現場改善につなげるPoC(概念実証)を行ったことを報告した。

今回の検証では個人作業、特に2次包装工程のバラつきに着目、ロジメーターから作業現場の特異点を抽出し、クラウドカメラの現場映像による作業手順や作業者配置などでの改善点が提起された。渋沢倉庫福岡営業所でも、個人間の生産性測定などでの新しい気付きを得て、作業者の教育やノウハウ共有などに活用していく手応えが報告された。また、クランドとセーフィーからは、個人作業現場から倉庫全体の可視化に向けた取り組みなどが今後の課題として提起された。

シーネット×KURANDO

▲(左から)シーネット・鈴木喬氏、KURANDO・岡澤一弘氏

WMS(倉庫管理システム)の先駆者的な存在であるシーネット(千葉市美浜区)と、倉庫内の可視化に取り組み続けてきたクランドの連携事例は、「物流KPI分析で業務改善を実現、システム連携でWMS内外データを一括可視化」として紹介。シーネットの「ci.Himalayas/Compass」(シーアイヒマラヤ・コンパス)は物流のKPI(重要達成度指標)を可視化するシステム。クランドの倉庫内データ可視化ツール「ロジメーター」連携の取り組みである。

シーネットの物流KPI分析アプリケーションのPoCにも参画してユーザー目線での運用を検証してきた物流事業、サン インテルネット(横浜市西区)では、KPI分析アプリによる作業生産性、在庫回転期間、ABC分析、タッチ率の見える化が検証されてきた。一方ロジメーターも同社作業現場の可視化、改善に向けて導入され、WMSのデータを使ってKPIを分析すると同時に、WMSの見えない人の作業データをロジメーターで分析する取り組みを行ってきた。

ともにデータをもとにした分析サービスだが、シーネットは経営目線から、クランドは現場運用目線から導入されるなど、違う領域のニーズとして現場に取り込まれたことは興味深い。それぞれ見るべきポイントに違いがあるとはいえ、運用にあたってデータ収集ツールがバラバラにあるのは不便ということで、KPI分析アプリ稼働にあたりロジメーターを連携して、よりユーザーにとって使いやすい環境を整えたという。

同じ見える化ツールだが、競合するツールではないとして連携が実現、違うスタート地点からの互いに補完するシステムとしてスピーディーな連携を実現したことは、今回の取り組みの大きな成果と言えるだろう。WMSによる管理部分と、リストピッキングなどWMSでは見えない部分を合わせて、より粒度の高いデータを収集し、次の改善へとつなげるデータを可視化することが実証され、今後は分析レポートの見せ方などでの改善なども検討していくという。ユーザーの声を反映しながら、機能の強化を図るためにも、まずは連携した成果を基盤に次のステップへと移行し、誰もが簡単に利用できるツールとして導入企業の拡大を目指すという。

モノフル×KURANDO

▲(左から)KURANDO・岡澤氏、モノフル・平野将樹氏

モノフル(東京都中央区)、クランドは、昨年の物流DX会議の立ち上げに参画し、システムベンダーによる協調領域を先導する意欲に溢れる2社である。

モノフルと言えば、トラック受付・予約サービス「トラック簿」を展開し、バース部分の効率化に貢献する代表的サービスベンダー。また、クランドは、倉庫内の作業データの集積、分析、活用による庫内領域の効率化に貢献するサービスベンダーであり、今回連携事例として紹介されたのは、トラック簿とクランドのロジメーターを連携して「庫内作業とトラック発着の見える化ボード作り」の取り組みである。

バース部分は、庫内と輸配送の接点となる部分。これまで予約受付システムのみの可視化は進められてきたが、庫内部分との連携や、それを一元的に可視化するようなシステムは登場していない状況だった。

両社連携で実証を続けているのは、バースの車両発着状況と、バース部分、倉庫内の作業状況をタイムライン表示で一括して状況把握できるボード作りである。予約受付による効率化が、荷受け後の作業工程へスムーズに連携しているのか、バースと庫内作業との連携を停滞させるような要因はないのか。トラックの発着時間の予定変更が庫内のオペレーションにどんな影響を与えるのかなど、さらなる効率化へ向けた検証の基盤となる。また、庫内の作業の遅延が、バース現場での作業停滞、さらには荷待ちに波及していないか、バースに配置した人員は最適だったのか、庫内の作業状況はどうだったかなど、連携する2つの現場を一体として可視化することで、まずは細かな現場間連携のロスなどを洗い出すことから新たな改善点なども浮き彫りになるかも知れない。

両社は見える化ボード作りから取り組み、ユーザーごとの課題に応じてシステムを成長させていくことを目指す。実際にシステムが使われることによって、機能面での充実や新たな連携の必要性なども提起され、より大きな効果を生み出すソリューションへと成長していくことになる。まずはやってみる、取り組んでみることから次のアイデアを誘導していくことも、物流DX会議の重要な取り組みであり、行動することと、その賛同者を増やすというコンセプトを体現する事例となっている。それぞれのサービスの共通のユーザーに運用されることで、より使いやすいツールへの成長も期待できるのではないだろうか。

「第二回物流DX会議」開催、協調への連携実証進む