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配送業務全体を最適化するクラウドサービス

2024年10月28日 (月)

話題2015年創業のオプティマインド(名古屋市栄区)はことしで10周年を迎える。ルート最適化のアルゴリズムを搭載した、配送業務の全体フローを効率化する「Loogia」(ルージア)を開発する同社は、その技術力の高さから、日本郵便をはじめとする多くの物流事業者から信頼を得ている。オプティマインドの松下健社長にLoogiaの強みから、起業当初の困難、物流業界への今後の想いについて聞いた。

物流業界の人手不足が引き起こす2024年問題

物流業界では24年問題による規制強化が始まり、人手不足がますます深刻化している。特にドライバー不足は業界のボトルネックとなっており、多くの企業が効率的な運送体制の確立に向けた取り組みを強化している。昨今の物流課題の解決につながるのではないかと期待されているのが、ラストワンマイルのルート最適化を支援するLoogiaを開発したオプティマインドだ。松下社長も「規制強化により現場の効率化が急務となっており、これに伴ってDX(デジタルトランスフォーメーション)の導入に対する期待が業界全体で高まっている」と語っている。

▲オプティマインドの松下健社長

LoogiaはAI(人工知能)アルゴリズムを活用し、配車ルートを自動で最適化するクラウドソリューションだ。当初はラストワンマイル配送に特化した仕組みだったが、現在では運送事業全体の最適化を目指しており、サポートする業務の幅も広がっている。このソリューションの導入により、従来の属人的な配車業務を効率化し、業務負担を軽減できる。物流コストの削減や業務効率の向上が求められるなか、同サービスのようなAIを活用した最適化技術は、企業の成長を後押しする鍵となるだろう。

Loogiaの技術力の裏にある、オプティマインドの「現場目線」

Loogiaの最大の強みは、精度の高い最適化アルゴリズムにある。従来の配車システムは2点間の距離だけを考慮に入れて、効率的とは言いがたいルートを提案することもしばしばだった。しかし、Loogiaのアルゴリズムはそのような課題を克服し、正確かつ効率的なルート提案を可能にしたのだ。



▲(上から)Loogiaの運行状況確認画面、リアル位置確認画面(クリックで拡大、出所:オプティマインド)

オプティマインドはこのアルゴリズムをつくるためにドライブレコーダー会社と協業し、数億件に及ぶデータを収集した。そのデータを基に、日本全国の配車ルートを最適化する。松下氏は「Loogiaでは、ドライバーが実際に走ったことのない地域や僻地においても最適なルートを提示できるよう、AIを活用したデータ補完を実行している」と語る。実際、このアルゴリズムで特許を取っており、その技術力・性能の高さは業界内でも支持されている。

従来の配車システムは、Google(グーグル)マップのAPIを使用するなど高額な外部ツールに依存していた。しかし、物流業界特有の要件に完全には対応できないケースもあった。その最大の理由は、物流業界には数値化されていない要因が多いことにある。

例えば、ルートが最適であっても「この配送先には〇〇さんが行く必要がある」「この荷下ろしは手作業だから女性の登用は避けよう」「フォークリフトの資格が必要な現場がある」などの諸条件が絡み合っており、ドライバーをアサインするのは容易ではない。しかし、Loogiaではこのようなドライバーのスキルや資格に応じたルート割り当ても実現している。この機能により、配車担当者の負担を大幅に軽減すると同時に、現場での作業効率を最大限に引き出すことが可能となった。

(クリックで拡大)

松下氏はオプティマインドの起業前、大学生だった頃に最適化アルゴリズムの研究に没頭していた。当時、そのアルゴリズムを「どんな業界に導入できるか」を知るために、あらゆる業界人に聞いて回っていたのだ。その際、最も反応が悪かったのが物流業界だったが、同氏はその反応を見たとき、むしろモチベーションが湧いたという。物流は決して華やかな業界ではないかもしれない。しかし、社会を構成する不可欠な要素でもある。同氏は「物流業界は複雑で簡単には解けない課題が多いが、だからこそ、その解決にはやりがいがある」と語る。

オプティマインドの強みは若手人材の活躍にもある。松下氏は31歳で、同社社員の平均年齢も30代前半と若い。技術力を持つ若いエンジニアが多いため、新しい技術や手法の学習にも積極的だ。

また、同社では「現場目線」を全社的に大切にしている。なぜなら、物流業界では論理的に完璧なルートであっても現場で通用しないケースが多く、実際のニーズや課題を理解する必要があるからだ。松下氏自身、家具や家電の配送業務を経験し「アルゴリズムだけでは本当の意味での最適化は実現できないと実感した」と語っている。そのため、営業だけでなく、エンジニアや研究者にも積極的に配送業務を体験してもらったり、現場で働いている人々の声を聞ける環境を整えているのだ。

オプティマインドの課題と将来の物流スタートアップへの展望

オプティマインドのLoogiaは、日本郵便やローソンなど、大手企業での採用が相次いでおり、今後も順調な成長が見込まれる。その上で松下氏は同サービスについて「導入に時間がかかることが課題」とした。物流事業者ごとにオペレーションやルート、扱うデータが異なるため、各社に合わせたカスタマイズは必須だ。システムの導入にはどうしても時間と手間がかかってしまうため、スピーディーな展開が難しい。当初はSaaSとしてパッケージ化すれば一気に広がると考えていたが、現場ごとの違いに対応するためには柔軟性を持たせる必要がある。各社が細かな微調整を自由自在に加えられるようにした「手直し機能」をLoogiaに搭載したのも、そのためだ。今後はいかにスピード感のある導入ができるかが課題になりそうだ。

松下氏は、物流業界のスタートアップ企業に向けて「焦らず、長期的な視野を持って事業を進めてほしい」とアドバイスを送る。物流業界は他業界に比べて、複雑な課題が絡み合う地味な業界と捉えられており、スタートアップの参入が少ない。しかし、その分だけ長期的に見れば、大きな成長の機会が潜んでいるともいえる。「物流業界では短期的に成功を収めるのは難しいが、長期的に腰を据えて取り組むことで、大きな成果を見込める」と同氏は語る。

オプティマインドは、物流業界におけるDXの先駆者として、今後も技術革新と業界全体の効率化を推進していく。その技術力は、物流事業者が直面する課題を解決するための重要なツールとなり、業界全体の成長を支える一助となるだろう。

一問一答

Q.スタートアップとして、貴社はどのステージにあるとお考えですか?

A.ファイナンスの観点ではシリーズBを超えたフェイズで、既存の事業・人員を拡大していく段階にあります。収益性と事業拡大のバランスを見つつ、顧客基盤を拡大していくことが重要だと考えています。

Q. 貴社の“出口戦略”、“将来像”についてお聞かせください。

A.エクイティ・ファイナンスを行い、投資家(現株主)から大切なお金を投資していただいているので、IPO(新規上場)、M&Aを含めた出口戦略は当然考えています。事業へのポジティブインパクトおよびビジョン実現に寄与できる形があれば、IPOのみならずM&Aも選択肢の一つです。一方で短期的なイグジットを目的にはしていないので、まずは事業を大きくし、産業課題を解決することを第一義にしています。

「オプティマインド」ホームページ