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マルチテナント型物流施設市場、需要の勢い持続

2013年10月23日 (水)

ロジスティクスシービーアールイー(CBRE、東京都港区)は23日、首都圏、近畿圏を対象とした2013年第3四半期の大型マルチテナント型物流施設の市場動向を発表した。

首都圏の大型マルチテナント型物流施設の空室率は4.3%で、前四半期から小幅な上昇となったが、稼働面積は大きく伸張。需要は勢いが持続し、開発計画の具体化が相次いだ。供給のピークとなる14年第1四半期でも空室率は9%台にとどまる予想。近畿圏でも未竣工物件の誘致は順調に推移し、テナントの物件選定が前倒し傾向になっていると指摘した。

首都圏の大型マルチテナント対応物流施設の空室率推移(出所:CBRE)

首都圏の大型マルチテナント対応物流施設の空室率推移(出所:CBRE)

第3四半期の空室率は1.6ポイント上昇し、4.3%となった。竣工した4棟のうち2棟は計画段階からテナントが確定し、日本最大級のロジポート相模原も「当初の見込み通り60%稼動で竣工したことで、予想よりも空室率の上昇幅は小さかった」と分析。

今期の需要面積は、04年の調査開始以来3番目の高水準となり、特に埼玉県三郷市・千葉県柏市エリアは賃料水準が比較的割安で、東京中心部へのアクセスも良いことから需要を吸引、まとまった募集空室がほとんどない状態となった。この結果、オーナーサイドが自信を深め、賃料面では契約更改時だけでなく新規契約時の実効賃料でもやや上昇基調で、CBREでは大型開発のあった相模原・厚木エリアも「ほぼ従前の水準を維持している」とみている。

今期は、スーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストア、アパレル・服飾品、家具、携帯電話関連といった一般消費者向けの小売店舗業態の需要が目立ち、物流拠点の配送見直しの動きが食品・日用品から家電・精密機器などの業種にも浸透してきていると指摘。

さらに「高スペックな物件の供給が3PL会社の先進的な物流システムに活躍の場を与えて潜在的な需要を引き出し、その成功がさらに次の需要を喚起するという好循環が生み出されている」と、大型マルチテナント型物流施設が3PL市場の拡大につながっているとの見方を示した。

デベロッパーサイドでは、三井不動産、GLP、グッドマンジャパンなどが次々に開発案件を具体化し、第3四半期中に15年竣工予定の計画が4件追加され、日本ロジスティクスファンド投資法人はJリートで初めての保有物件再開発事業を進行させているといった動きを指して「首都圏では物流物件開発の裾野がますます広がってきている」と供給拡大の背景を説明した。

千葉湾岸地域で競合する柏・三郷エリアでは、13年第4四半期竣工予定で入居可能な物件がほぼないため、「テナントの引き合いは今後強まる」との見方を示し、圏央道開通に向けて開発の集中する相模原・厚木エリアの物件も、「35-70%のテナントが決定されている」と、需要が強まっている状況を説明。

さらに「既に満床となり、テナント募集を終了している14年第1四半期竣工物件も複数伝わっており、需要の先行きは今のところ衰えが見られず、標準的な需要量と仮定した場合でも空室率は14年第1四半期時点で9%台にとどまる」と予測。賃料面は、竣工前後に賃貸条件を緩めてテナント誘致することは十分あり得るものの、全般的には多少上向きの基調を維持する、との見通しを示した。

こうした中、懸念材料としては「建築コストの上昇」を挙げ、「既にプランの見直しなどで竣工時期を遅らせる事例が出てきている」と指摘した上で、賃料や設備仕様に影響を及ぼすことになるのかどうか、今後の動向を注視する必要を強調した。

CBREインダストリアル営業本部の田口淳一本部長は「3PL会社が機能を集約して大型施設に入居する動きは、トータルコストの削減につながることからますます広がっていくと考えられる。15年以降も開発は続くが、今期の需要の伸びが示しているように供給過多による不安感は今のところない」とコメントしている。

近畿圏については「空室率が1%と既存物件で需給がひっ迫しており、来年竣工のグッドマン堺のリーシングもかなり進んでいると考えられる」と説明している。近畿圏のマーケットでは「竣工後では十分なスペースが確保できない」との懸念から、荷主・3PL会社ともにかなり前倒しに物件選定を進める傾向が強まっているという。