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日新、MBOで非公開化へ ベインキャピタルと組む

2025年5月12日 (月)

M&A日新は12日、米投資ファンドのベインキャピタルが設立した買収目的会社「BCJ-98」によるMBO(経営陣が参加する買収)を受け入れ、株式の非公開化を目指すと発表した。日新の取締役会は同日、BCJ-98が実施するTOB(株式公開買付け)に賛同し、株主に応募を推奨することを決議した。非公開化により、短期的な市場評価に左右されず、中長期的な視点での経営改革や成長投資を加速させる狙い。

ベインの知見活用、物流事業の変革図る

BCJ-98は、日新の全株式取得(一部関係者株式除く)を目指し、5月13日から7月8日までの41営業日間、1株当たり8100円でTOBを実施する。買付予定数の下限は889万6100株(所有割合60.35%)で、上限は設けない。TOB成立後、日新は株式併合など、残る少数株主から株式を取得し完全子会社化するための手続き(いわゆるスクイーズアウト)を経て上場廃止となる見込みだ。

日新は、今回のMBOの背景として、物流業界を取り巻く経営環境の急激な変化と、それに伴う経営課題への対応の必要性を挙げる。具体的には、コロナ禍後の運賃市況正常化による競争激化、海上・航空スペースの調達力強化、海外事業の拡大、デジタルフォワーディングサービスの高度化、そして「2024年問題」も背景とした国内のドライバー・作業員不足と、これに対応する専門人材の確保が急務と認識。

これらの課題解決には、倉庫建設を含む設備投資やM&A、DX推進など、多額かつ継続的な投資が必要となる。しかし、上場を維持したままでは、短期的な利益水準の低下やキャッシュ・フローの悪化を招く施策は、資本市場から十分な評価を得られず、株価への悪影響も懸念されるため、抜本的な改革の実行が困難だったという。

そこで、世界で1850億ドルの運用資産を持ち、日本でも多数の投資実績と企業価値向上ノウハウを持つベインキャピタルをパートナーとして選定。ベインキャピタルによる事業運営への直接的な参画を通じた経営支援(ハンズオン支援)や、M&A戦略立案・実行・PMI(買収後の統合プロセス)のサポート、グローバルネットワークを活用した海外展開加速、経営人材の紹介などを活用し、日新単独では成し得ない成長を目指す。

日新の筒井雅洋社長は、本公開買付け成立後も引き続き経営に関与する予定で、創業家の一部もTOB応募後に買収目的会社の親会社に再出資する計画。創業以来の企業文化や、日新が有する中核的な強み(コアコンピタンス)を生かしつつ、外部の経営資源を活用して企業価値の最大化を図る。

公正性担保し、株主への配慮も

今回のMBOは、経営陣が関与するため構造的な利益相反の問題が生じうる。このため日新は、独立社外取締役らで構成する特別委員会を設置。特別委員会は独自のフィナンシャル・アドバイザーや法律事務所を選任し、取引の公正性・妥当性を検証した。

TOB価格8100円は、複数回にわたるベインキャピタルとの交渉の結果、当初提示額(6800円)から引き上げられた経緯がある。これは、TOB公表前営業日の終値5350円に対し51.40%のプレミアムとなる。

また、第3位株主の日新商事(所有割合6.04%)は、今回のTOBには応募せず、スクイーズアウト手続き後に日新が実施する自己株式取得に応じる契約を締結。この際の取得価格は、みなし配当の益金不算入規定を考慮し、TOBに応募した場合の税引後手取額と同額以下になるよう調整される予定で、公開買付価格の最大化と株主間の公平性を両立させる狙いがあるという。

日新は、非公開化によって、資本市場から株式発行による資金調達(エクイティファイナンス)ができなくなるデメリットはあるものの、ベインキャピタルの支援や間接金融で必要な資金調達は可能と判断。上場維持コストを事業投資に振り向けるメリットの方が大きいとしている。

今後、日新はベインキャピタルとの協業により、「サプライチェーンロジスティクスプロバイダー」としての地位を確立し、多様な社会課題の解決と企業価値向上を目指すという。

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