イベントLOGISTICS TODAYは12日、オンラインイベント「運行管理が変わる~先進点呼が新たに解禁、“選ぶ時代”の実務と戦略~」を開催した。「2024年問題」への対応が本格化するなか、ことし4月末に「事業者間遠隔点呼」と「業務前自動点呼」が正式に解禁されたことを受け、運行管理業務の新たな実務と戦略を探る目的で実施。イベントには500人以上が視聴登録をするなど、業界の関心の高さがうかがえた。基調講演には制度改正を主導した国土交通省の担当者が登壇し、2つのパネルディスカッションでは、先進的な点呼・運行管理ソリューションを提供するITベンダー各社が、現場の課題と今後の展望について議論を交わした。

▲パネルディスカッションの様子。(左から)LOGISTICS TODAYの鶴岡昇平、テレニシの吉田寛之氏、NPシステム開発の可児勝昭氏
国交省「安全と効率の両立」目指す、先進点呼制度の背景と狙い
基調講演に登壇した国土交通省物流・自動車局 安全政策課の西山紘平課長補佐(統括)は、今回の制度改正の背景と目指す姿について解説した。西山氏は、交通事故件数全体は減少傾向にあるものの、直近では横ばいであり、特にタクシーやトラックにおける死者数が増加している現状に警鐘を鳴らした。その上で、今回の事業者間遠隔点呼や業務前自動点呼の制度化にあたり、多くの事業者による実証実験を通じて、対面と同等の安全性が確保できることに加え、対面での指導時間が増加し、安全指導の質が向上するといった効果も確認されたと説明した。

▲国土交通省物流・自動車局安全政策課の西山紘平課長補佐
事業者間遠隔点呼については、複数の営業所を持つ事業者が共同で点呼を実施する「グループ企業間」だけでなく、全く別の事業者同士が契約を結び、点呼業務を受委託する形態も可能となる。これにより、特に中小事業者において、運行管理者の不在時対応や業務効率化が期待される。西山氏は「安全と効率はトレードオフではない。IT技術の発展により両立は可能であり、ドライバーの働き方改革と合わせて3つの軸で高めていくべきだ」と語り、新制度が運行管理の高度化と、ひいては輸送の安全確保に繋がることへの期待を述べた。
点呼DXの最前線、カギは「対面との組み合わせ」と「データの活用」
続いて行われたパネルディスカッションでは、先進点呼ソリューションを提供するITベンダー各社が、それぞれの視点から点呼DXの現状と未来について議論した。
第1部「先進点呼が全面解禁!“選ぶ時代”の点呼DX最前線」では、テレニシ(大阪市中央区)の吉田寛之氏と、NPシステム開発(愛媛県松山市)の可児勝昭氏が登壇。テレニシの吉田氏は「国交省の話からも、現場に寄り添い、意見を吸い上げる重要性が増していると感じる」と述べ、紙での管理が多い運送会社の現状から、DX化への要望が強いことを指摘した。NPシステム開発の可児氏は、自動点呼におけるバイタルチェックの有効性に触れ、「対面点呼には運行管理者の忖度が入る可能性もあるが、機械による血圧測定でドライバーの重篤な症状を発見し、事故を未然に防いだ事例もある」と語り、機械と人のそれぞれの利点を組み合わせることの重要性を強調した。
▲(左から)テレニシの吉田寛之氏、NPシステム開発の可児勝昭氏
第2部「選べる時代に問われる責任、安全と効率を両立させる運行管理のあり方とは」では、GO(東京都港区)の武田浩介氏と、X Mile(クロスマイル、東京都新宿区)の安藤雄真氏が議論に参加。GOの武田氏は、どの仕組みをどう使えば良いか分かりにくい過渡期にあるとしつつ、「夜間や早朝など管理者が対応できない時間帯に自動点呼を活用し、日中の対面点呼で質の高いコミュニケーションを取ることが重要」と指摘。さらに、点呼で得られたデータを基にした個別指導や、ドライバー自身による日々の振り返りが、安全意識の向上に不可欠との見解を示した。X Mileの安藤氏は、大規模な事故を契機に運行管理へのリスク意識が高まっている現状に触れ、「点呼だけでなく、運行管理やコンプライアンス全般に関する相談が増えている」と述べた。また、ドライバーの会社への帰属意識が薄れがちな現代において、点呼を通じたコミュニケーションの重要性が増しているとし、「一人ひとりのドライバーの状態をどう把握し、どうケアしていくかが、企業の安全と持続可能性を左右する」とコメントした。
▲(左から)GOの武田浩介氏、X Mileの安藤雄真氏
イベントを通じて、登壇者からは「真面目にやっている事業者が報われる制度であるべき」「DX化による効率化と、対面でのコミュニケーションによる質の高い管理を両立させることが重要」といった意見で一致。先進点呼の解禁は、事業者にとって選択肢が増える一方で、自社の状況に合わせた最適な運行管理体制をどう構築していくかという「選ぶ責任」が問われる時代の幕開けであることを強く印象付けた。
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