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トラボックス吉岡会長、富士SWで大型トラック走行

2025年10月30日 (木)

ロジスティクス銀行員から転身し、求荷求車マッチングサービス「トラボックス」の立ち上げに参画した、トラボックス会長、吉岡泰一郎氏。創業以来、25年にわたって運送業と関わってきた吉岡氏が一念発起し、54歳にして大型免許の取得に挑戦。本誌ではその顛末を連載でお届けしてきましたが、今回は吉岡氏が大型免許取得の目標としていた「ジャパントラックショー in Fujispeedway 2025」での走行会の手記をお届けします。

夢を叶える時!憧れのサーキットへ

私が「大型免許を取りたい!」と思うきっかけになった場所、富士スピードウェイに1年ぶりに戻ってきた。今年は私が運転席に座る番だ。前回は観客席からトラックを撮影したり、旧知の運送会社の方にご挨拶するだけだった。だが、今回は違う。自分で大型トラックを運転して、サーキットを1周できるのだ!

▲壮観なトラックパレード

当日を迎えるまで心配だったのが天候だ。1週間前の天気予報から、気が気ではなかった。私は雨の中で大型トラックを運転した経験がゼロだ。主催者の方々と同じように「晴れてくれ!せめて雨だけは止んでくれ!」と願いを込めて当日を迎えた。

当日の朝、そして友人のエール

当日の朝、東京は小雨がぱらつく肌寒い天気だった。そんななか、仲のいい運送会社の知人からLINEが届く。

「今日は天気が悪いし風邪気味だから、富士スピードウェイ行きは今回は遠慮しておくよ。吉岡さん、がんばってね!!」

▲トラックに乗る前で表情が硬い筆者とフジトランスポートの松岡弘晃社長

私はこの試乗の権利を厳正なる抽選で勝ち取った。体調も万全な今、断念するという選択肢はない。とにかく静岡へ車で向かった。富士山が近づくにつれて少しずつ視界が開けてくる。なんと、ワイパーもいらないくらいの霧雨になった。「このまま天候が回復しますように」と願いながら、ハンドルを握り続けた。

会場での賑わいと、高まる緊張感

10時40分から始まった「トラックパレード」(運送業のトラックがサーキットを3周するイベント)は、顔見知りの運送会社の方が大勢いた。誰もが童心に帰ったような表情で、夢中でトラックの写真を撮っている。そして口々に「吉岡さん、何時からトラックに乗るの?」と話しかけてくれる。お気持ちは大変ありがたいのだが、それだけで緊張感が高まり、ソワソワして落ち着かない。

パレードが終わり、今回トラックを提供してくださるフジトランスポートさんのブースへご挨拶に伺った。いつお会いしても優しい女性スタッフの方が、私の顔を見るなり言う。

「吉岡さん、抽選に当たられたと聞きました。最近、大型トラックは運転されているんですか?練習されましたか?」

私は「えっ!?練習なんてしていません…というか、できませんし。松岡さんとご一緒した5月が最後の運転です」と答えた。松岡さんというのはもちろん、フジトランスポート社長の松岡弘晃さんのことだ。

※その時の様子は記事末尾の【番外編「いざ、大型トラックの運転!人生初の高速道路」】のリンクからご覧いただけます。

いざ、出走!

私の出番は14時。まだ3時間近くもあるのに、ますます緊張感が高まる。ところが、ベテランの大型ドライバー経験者は口をそろえて言う。「サーキットは道が広いから、簡単ですよ」と。

▲今回運転させていただいた、フジトランスポートのスカニア

昼食を済ませ、エントリー場へ。アルコールチェックをクリアし、もちろん免許証も確認してもらう。大型免許がないと運転はさせてもらえない。

フジトランスポートさんが用意した7台のトラック。助手席には添乗スタッフが座る。抽選で受かった人は35人。思ったより多い。私は一番最後の回に乗ることになった。もちろん、助手席は松岡さんだ。

▲まな板の上ならぬ、トラック運転席の上の筆者

前の順番の方々の運転を見ると、「速い!?」「飛ばしている!?」。現役か経験者なのだろう、皆さんスムーズで余裕がある。学生時代にやっていたラグビーの試合前、対戦相手が妙に強そうに見えたあの感覚を思い出した。まあ、今回は誰とも勝負しないのだが…。

緊張は「失敗したくない」というより、「かっこよく見せたい」からだ。良いところを見せようとすると緊張する。逆に仕事でのセミナー登壇などでは、自分をよく見せようという気持ちが少ないので緊張しない。

「とにかく事故らなければいいだろう」と頭を切り替えようとするが、なかなか良いイメージが湧かない。周りが賑やかに楽しんでいるなか、私はそんな心境だった。そして、自分の走行中に雨が降らないことを祈っていた。

スカニアの新車で、サーキットへ!

ついに自分の順番が回ってきた。乗せていただくのは、スカニアの新車だ。

ぶつけるわけにはいかない。添乗スタッフからは、サーキットのガードレールも高額だとの説明があった。また「サーキットは入る時は晴れていても途中で大雨になることがあるので注意してください」という不吉なアドバイスももらっていた…。

▲久々の大型トラックなので、コーナーを曲がるときには極度の緊張状態に

いよいよ、サーキット1周へ。スカニアは外国車なので、ウインカーとワイパーのレバーが日本車とは逆だ。左にウインカーを出そうとしても出ない。すると松岡さんから「ウインカーは要らんよ」と指示が飛んだ。

運転を開始。直線は問題ない。だがカーブは、どこで曲がるかの目安がないので感覚が掴みにくい。最初のカーブに、気持ちよくスピードを出して突っ込んでしまった。「ブレーキ、ブレーキ!」と松岡さんの叫び声。

しかし慣れてくると…「吉岡さん、全力でベタ踏み!」。なかなかの指示だが、まるで子どもがゴーカートに乗るように楽しくなってきた!

▲ストレートでは松岡さんから「アクセルべた踏み!」の指示が飛ぶ

言われていた通り、高速道路と比べれば広い。雨にも降られず、後続車もいなかったことも救いだった。富士山の裾野や高級ホテルが視野に入り、雑談する余裕もほんの少し。もちろん脇見運転ではない。チラ見でもなく、安全確認の一環で視界に入っただけ…。

そして、あっという間にゴールだ。

トラックドライバーさんへのリスペクト

降車すると「どうでしたか?」と質問を受けた。私の答えはひとつ。

「トラックドライバーさんへのリスペクトが、より一層強くなりました。」

誰でもできる仕事ではなく、ずっと神経を張り続けなければならない。そして、なくなっては困る、なくてはならない職業だということを強く感じた。

来年、トラックショーでトラックに乗るかは未定だが、サーキットを勇ましく走るトラックの姿を、また見に来たいと思う。

>>第1回「エリート銀行マンの転身、54歳で大型免許に挑戦」
>>第2回「大型免許を取る!」と大勢の前で豪語、退路を断つ
>>第3回「54歳、初めての大型トラック運転!」
>>第4回「教習所に慣れられず、毎度緊張しながら続く教習…」
>>第5回「試練の大型仮免試験、その結果は…」
>>第6回「路上実習スタート!ドライバーへの敬意深まる」
>>第7回「とうとう迎えた、運命の卒業検定」
>>番外編「いざ、大型トラックの運転!人生初の高速道路」

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