ロジスティクス免許を取っただけでは、終われなかった。
2025年のゴールデンウィーク。奈良から神奈川まで、大型トラックでの実車移動に同行する機会をいただいた。しかも、その車両はフジトランスポートさんのピカピカの新車。免許証を受け取ってから、まだ日も浅い自分にとって、あまりにも贅沢な「本番」だった。

▲奈良から鈴鹿に向かう車内。公道は松岡社長が運転
奈良を早朝に出発し、まずは鈴鹿サーキットへ。開催中の「はたらく車」イベントに立ち寄る。ここまではフジトランスポートの松岡弘晃社長がハンドルを握り、自分は助手席で景色と緊張感を味わう。
道中、教習所では習わなかったブレーキの踏み方や、荷台がウイング型の車両ならではの注意点などを教えてもらった。助手席とはいえ、ただ座っているだけではもったいない。すべてが勉強だった。
鈴鹿サーキットの広い駐車場では、少しだけ運転させてもらえた。もちろん構内のみ。公道は引き続き、松岡さんにお任せする。
そして高速道路へ。刈谷ハイウェイオアシスで一息ついた後、静岡県のNEOPASA清水まで172キロ──ここからが、自分の出番である。

▲鈴鹿を出発し、緊張の面持ちで運転する筆者
はじめての高速道路。はじめての大型トラック。そして、はじめての「実車」。しかも助手席には松岡さんが座っている。これ以上のプレッシャーがあるだろうか。
教習所で味わった緊張とは、まったく別物だった。ブレーキの感触、ハンドルの重さ、死角の多さ。走り出してすぐ、手汗が止まらなくなり、何度もタオルで拭った。運転後、ハンドルも丁寧に拭いたのは言うまでもない。
運転席に座ってみて、改めて感じたのは、大型トラックの操作が「自家用車の延長」ではないということ。まるで飛行機のコックピットのようなスイッチ類。ひとつひとつの操作に確認が必要で、何度も松岡さんに「これ、何のボタンですか?」「この操作で合ってますか?」と質問せずにはいられなかった。
車線変更をするだけで、自分のクセが浮き彫りになる。左に寄りがちになること。ウインカーを出すと、ついすぐに動きたくなること。危ないと頭では理解していたが、走りながら初めて「これは本当に危ない」と身をもって実感した。
刈谷を出てしばらく、松岡さんの左手が助手席ドアの手すりから離れなかったのが印象に残っている。途中からは電話をしたり、LINEをチェックしたり、少しずつリラックスされていたように見えたが……たぶん、気のせいじゃない。

▲静岡県のNEOPASA清水にたどり着き、脱力した表情の筆者
清水に到着した瞬間、全身から力が抜けた。緊張が一気にゆるみ、自然とハンドルから手を離した。まず湧き上がったのは「無事に松岡さんを届けられてよかった」という安堵だった。
運転を交代し、助手席から見た富士山は、本当に美しかった。

▲トラックの運転から解放されて眺めた富士山
新しいことに挑戦すると、必ずその先に「未知の世界」が広がっている。少しでも気を抜けば大事故につながる。その緊張感は、トラックのサイズよりも、はるかに大きかった。
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>>第3回「54歳、初めての大型トラック運転!」
>>第4回「教習所に慣れられず、毎度緊張しながら続く教習…」
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