話題物流業界に革新をもたらすスタートアップに光を当てる本誌の特集企画「LOGISTICS 新時代 Road to 2030〜変革の先導者たち」。本企画は、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の投資を起点に、大企業とスタートアップがいかにして実効性の高いシナジーを生み出すか、その「共創のプロセス」をメディアの視点で解き明かす新たな試みだ。
そのシナジーインタビュー第1弾として、日本郵政キャピタル(東京都千代田区)が出資するshizai(シザイ、東京都港区)と、協業パートナーである日本郵便(東京都千代田区)への独占インタビューを実施した。CVCによる投資実行の発表は多いが、その後の「現場のリアル」が語られることは少ない。投資はいかにして事業へと昇華されたのか。両社のキーマンの証言から、現場レベルで巻き起こる熱量の正体に迫った。
トップダウンではない、現場発の「勉強会」
「この取り組みは、第一線の現場から連携が一気に動き始めた」。日本郵便の羽場正信ロジスティクス事業統括部部長は、連携の広がり方をこう表現する。通常、大企業とスタートアップの連携はトップダウンで指示が下りることが多い。だが、今回のケースは逆だ。日本郵便の営業担当者が「これは顧客に刺さる」と直感し、自発的にshizaiのソリューションを学び始めたのだ。

▲日本郵便の羽場正信部長
その熱意は、両社合同の「勉強会」という形でスタートした。日本郵便の本社や支社が主催し、shizaiのメンバーが講師として登壇する。規模は1回あたり50人。多い日には1日4回、計200人規模の営業担当者が参加することもあるという。

▲両社合同勉強会の様子(出所:日本郵便)
内容は単なるサービス説明にとどまらない。shizaiのアライアンス担当、雑賀真奈氏はこう語る。「前半は資材業界のトレンドや原材料価格の推移といった専門知識をレクチャーする。後半は『相談会』だ。日々の営業活動で抱える具体的な顧客の悩みを持ち寄り、その場で解決策を議論する」

▲shizaiの雑賀真奈氏
ここで日本郵便の社員が驚くのが、「機能性段ボール」の存在だ。保冷機能や撥水加工が施された段ボールを紹介すると、「そんなものがあったのか」と驚かれるという。発泡スチロールの代替になり、倉庫の省スペース化にもつながるため、営業担当者の目の色が変わる。「段ボール=茶色の箱」という固定観念が崩れ、営業担当者は「あのお客様の課題、これで解決できるかもしれない」と確信を得る。この現場での「腹落ち」こそが、全国規模での協業を加速させるエンジンとなった。
「顧客のために殴り合う」夜遅くまで続くメール
取材中、両社の関係性が単なる「紹介元と紹介先」ではないことが浮き彫りになった。それは、顧客の利益を最大化するための、時に痛みを伴うほどの「真剣勝負」だ。
羽場氏は「shizaiとは結構、殴り合うぐらいのやり取りをしている」と笑う。何でもかんでもshizaiの提案が正しいとは限らない。コストが見合わなければ、「この単価では顧客は納得しない」と明確にノーを突きつける。
実際、取材前日も夜遅くまで、羽場氏とshizaiの間では案件に関する激しいメールの応酬があった。 「顧客のPL(損益計算書)を改善するために、妥協は一切しない。バチバチに議論できる関係性があるからこそ、信頼して任せられる」
この緊張感こそが、質の高い提案を生む。shizaiの鈴木暢之社長は、この関係性を「本部と現場のハブ」と位置付ける。 「日本郵便の本部が描く戦略と、現場が日々直面するリアルの間には、どうしてもギャップが生まれる。我々はその間に入り、現場の生の声を吸い上げて形にすることで、施策のスピードを上げるハブになりたい」 馴れ合いではなく、プロフェッショナル同士が火花を散らす。その熱が、物流変革の推進力だ。

▲shizaiの鈴木暢之社長
1/3のコスト削減」を生む全体最適の視点
激論の末に生まれた提案は、具体的な数字として成果を生んでいる。ある顧客の事例では、shizaiが提案した「可変箱(厚さを変えられる段ボール)」の導入により、資材コストと配送コストのトータルで大幅な削減を実現した。
羽場氏によると、その顧客は資材コストを従来の約3分の1に圧縮できたことに加え、お客様の商材に適した輸送容量(サイズ)に可変できる資材の設計により、配送料の最適化含めた物流関連コストの圧縮ができたという。単に箱を安く売るだけでは、この数字は出ない。shizaiが日本郵便の配送区分(サイズ規定)を熟知し、送料の圧縮に効果がある形状の資材を設計したからこその成果だ。
shizaiの油谷大希取締役は、この成果の背景にある「信頼の力」を強調する。 「通常、我々のようなスタートアップが地方企業を開拓するには時間がかかる。だが、日本郵便の看板があることで心理的ハードルが一気に下がる。実際、連携開始から直近半年ほどでほぼ全国の支社を回り、4か月で約100件もの引き合いをいただいた」

▲shizaiの油谷大希取締役
地方には「良い資材を作りたいが、方法がわからない」という潜在需要が眠っている。日本郵便の信頼とshizaiの解決力が噛み合うことで、埋もれていた需要が掘り起こされたのだ。
戦略商品「ゆうパケットパフ」を支える黒子

▲戦略商品の「ゆうパケットパフ」(出所:日本郵便)
両社の共創は、日本郵便の戦略商品の開発にも及ぶ。その象徴が「ゆうパケットパフ」だ。これは、厚さ3センチを超える商品をコストメリットのある運賃で送れるサービスだが、利用には専用資材(袋)か、規定サイズ内の箱が必要となる。
この「専用資材」の供給を引き受けたのがshizaiだ。日本郵便の湯地定裕郵便・物流営業部課長は「shizaiと組むことで、このサービスが拡がった。」と明かす。 配送サービス(日本郵便)と、それに適合する資材(shizai)がセットになることで、初めて顧客が使えるソリューションになる。shizaiは単なる資材業者ではなく、日本郵便の新サービスを裏側で支える戦略パートナーの地位を確立している。

▲日本郵便の湯地定裕課長
「共創」が描く物流の未来図
「shizaiとの連携は必然だった」。羽場氏は断言する。物流業界は今、単なる運賃競争の限界を迎えている。必要なのは、顧客のビジネス全体を俯瞰し、資材・配送・作業のすべてを最適化する提案力だ。
CVCの投資は、あくまで入り口に過ぎない。日本郵便とshizaiの事例が示すのは、現場同士が互いの強みを理解し、深夜まで議論を戦わせる泥臭いプロセスの重要性だ。 本誌が追う「Road to 2030〜変革の先導者たち」。日本郵便とshizaiが実践するこの「現場起点の共創」こそが、日本の物流を次なるステージへと押し上げる原動力となるに違いない。

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