行政・団体国土交通省の「運行管理高度化ワーキンググループ」は18日、2025年度第3回会合を開き、遠隔点呼・自動点呼の普及状況と課題、運行管理業務の一元化に関する制度運用の論点を整理した。とりわけ焦点となったのは、運行管理業務を営業所横断で集約する「一元化」を進める際の運行管理者の選任数の考え方と、運用の柔軟性をどう担保するかだ。点呼のICT活用が広がる一方で、導入コストや要件適合の分かりにくさといった「普及の壁」が残る現状も、調査結果として示された。
点呼ICT未導入層は「対面で十分」「コスト高」
遠隔点呼(同一事業者内・事業者間)、自動点呼(業務後・業務前)、運行管理業務の一元化について、制度化の経緯と届出状況が整理された。2025年12月末時点の届出は、同一事業者内遠隔点呼が延べ7372件(うち軽貨物除くトラック5111件、軽貨物846件)。事業者間遠隔点呼が延べ197件(軽貨物除くトラック159件)。自動点呼は、業務後が延べ6153件(軽貨物除くトラック4742件、軽貨物299件)、業務前が延べ3306件(軽貨物除くトラック2950件、軽貨物7件)に達した。
一方で調査では、「実施していない理由」として、遠隔点呼・自動点呼ともに「対面点呼で十分対応できている」とする回答が多かった。導入時に苦労した点としては両制度とも「コストが高い」が最多となり、さらに「ルール・要件を満たしているか判断が難しい」といった制度運用上のハードルが、普及を阻む要因となっている構図が浮かび上がった。
優良事例の深掘りで見えた効率化と安全性、運用の現実
アンケート結果を踏まえて優良活用事例を抽出し、ヒアリングで深掘りした。導入のきっかけは「運行管理者の不足」が中心で、遠隔点呼ではリアルタイムのコミュニケーションを確保できる点が評価された。タクシーでは、日本版ライドシェアへの対応として、車内で点呼できる体制づくりに遠隔点呼を活用する例も示された。
効果として多かったのは、点呼業務に要する時間と点呼待ち時間の削減、それに伴う人件費の削減だ。業務後自動点呼を導入したトラック事業者の事例では、導入前は点呼業務に1日当たり3人×7時間程度を要していたが、導入後は1人×2時間程度に削減できたとする。乗合バス事業者の事例では、遠隔点呼の活用により、主に遠隔点呼を受ける側の営業所で、運行管理者の選任数を3人から2人に削減できたとしている。
安全性面では、自動点呼は点呼機器が手順を提示するため、法定項目の漏れ防止に寄与するとの見方が示された。対面点呼では運転者が「終了」と誤認して退勤してしまう事象があったが、自動点呼では項目が定まっているため、確実に遂行できるようになったという現場の所感も紹介された。業務前自動点呼に関しては、体温・血圧測定の常態化が、運転者の健康意識を高めたとの声が複数あった。
一方で、運用の現実も重い。機器故障などで点呼ができない場合、対面点呼に切り替えるため、運行管理者が営業所へ駆けつける必要がある。遠隔点呼や自動点呼によって「営業所に運行管理者が常時いない時間」が生まれるからこそ、緊急時の体制整備が不可欠となる。実際に乗合バス事業者の例では、故障時の対応を「勤務中の運行管理者が対応→不在時は近隣居住者が出動」という優先順位で設計し、発生頻度も月1回程度、2-3か月に1回程度といった実績が示された。コミュニケーション機会の減少も課題として挙がり、自動点呼を使いながらも出庫時は口頭で補完するなど、制度と現場の折り合いをつける工夫が紹介されている。
国交省側は、補助事業の継続、解説パンフレットの周知、FAQ作成、業態別・規模別の事例集作成といった普及策を示し、制度理解と運用ノウハウの可視化で導入障壁を下げる方針を明らかにした。
「一元化」の本丸は運行管理者の配置
今回のもう1つの軸が、運行管理業務の一元化だ。これは、デジタルを活用して営業所ごとの運行管理業務を集約し、運行中の指示を含む運行管理を一体的に行う枠組みで、2024年4月に同一事業者内での制度化が行われた。2025年12月末時点での届出は延べ59件(トラック9件、バス48件、タクシー0件)。点呼制度と比べると裾野はまだ狭いが、運行管理者不足の深刻化を背景に、限られた人的リソースをどう最適配分するかという文脈で、制度活用への期待が高まっている。
議論の核となったのは、一元化に取り組む際、集約営業所と被集約営業所をどう「一体」とみなすか、そして運行管理者の選任数をどう考えるかだ。現行の制度上の障壁としては、同一の運行管理者を複数営業所に選任できない点や、所属営業所以外での点呼実施が原則できない点が挙げられた。事業者側からは、被集約側で業務量が減る運行管理者を集約側に出勤させて業務量を平準化したい、集約側の運行管理者も被集約側で点呼を実施できるようにしたいなど、選任時・運用時の双方で柔軟性を求める声が多く示された。
素案として示されたのは、集約営業所と被集約営業所を「一体」とみなし、運行管理者の相互兼任を認める考え方だ。ただし、非常時の対応を踏まえ、各営業所には一元化前の車両台数に基づく選任を求める。2営業所を統合して車両総数が増えたからといって、必要選任数を単純に減らす(例:合計100台で3人)方向ではなく、各営業所の元の選任数を維持したまま「兼任で運用する」ことで、平時の柔軟性と非常時の実効性を両立させる設計とした。
この枠組みで実証実験を行い、メリットの有無や安全性への影響、心理的負担やシフトの煩雑化といった逆効果を検証する。実証は、一元化をすでに実施している事業者のうち希望者が申請し、事務局が承諾、運輸局・運輸支局に共有するスキームで進める。期間中はアンケートやルール・マニュアル整備状況などの報告を求め、制度設計の材料とする。
実証で一定の効果も、距離要件の論点が浮上
速報ヒアリングでは、運行管理業務の品質向上や業務量の平準化につながる可能性を示す声が挙がった。営業所ごとに運行管理が属人化していたことに気づき、他営業所の運行管理の丁寧さに触れて自身の業務を見直す契機になった、といったコメントもある。また、集約側で対応できる運行管理者数が増え、突発対応でも焦らずに済む「心理的余裕」が生まれたという指摘もあった。
逆効果の検証では、実証開始直後の段階では、運行管理業務に起因する事故は確認されていないとしつつ、一般論として「運転者との関係づくり」には慣れるまで一定期間が必要といった現場感も示された。運行管理者の心理的負担については、受け持ち範囲が広がっても責任感は変わらず、プレッシャーの受け止めは大きく変わらないとの見方が複数示されている。
制度化に向けた論点として浮上したのが、集約営業所と被集約営業所の位置関係に制限を設ける必要があるかどうかだ。北海道と大阪のように移動が現実的でない距離では、通信途絶などの緊急時に駆けつける前提が崩れ、適切な運行管理が難しくなる。参加事業者からは、距離で一律に線引きするよりも、緊急時の体制構築を要件として示す方が分かりやすいという声も挙がっており、制度の納得性と実効性の両立が問われている。
点呼は周知と事例、運行管理は「運行中」も含めた一元化へ
国交省は、ICT活用による運行管理高度化のシナリオを示し、25年度以降の取組案も整理した。点呼制度は、補助継続やFAQ、事例集などを通じた周知・啓発を強め、制度理解と運用ノウハウの普及を図る。運行管理業務の一元化は、運行管理者選任数を巡る実証を継続し、制度化に向けた検討を進める。さらに、デジタル式運行記録計などによる運転挙動や健康状態の把握といった「運行中」を含む一元的な運行管理の高度化も、今後の検討対象に据えた。
点呼のICT化は届出件数が示す通り、制度としては着実に浸透しつつある。ただ、未導入層が抱える「対面で足りる」「費用対効果が見えない」「要件判断が難しい」といった壁は厚い。運行管理業務の一元化も制度は動き出したが、運行管理者の配置・選任数の扱いが使い勝手を左右する局面に入った。現場の安全を損なわず、限られた運行管理リソースをどう再配分するか。制度設計の細部が、次の普及局面を決めることになりそうだ。
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