国際ホルムズ海峡の事実上の封鎖が、世界の物流を大きく揺さぶっている。海も空も中東経由のルートが使えなくなり、代わりのルートに荷物が集中し始めた。日本企業のサプライチェーンへの影響は避けられそうにない。(編集長・赤澤裕介)
APモラー・マースク(デンマーク)は2日の「中東オペレーション・アップデート2」で、ホルムズ海峡の全便停止に加え、インド亜大陸とアッパーガルフ間の新規予約も止めると発表した。UAE、オマーン、イラク、クウェート、カタール、バーレーン、サウジアラビア発着のリーファー(冷凍)、危険品、特殊貨物の受付も止まっている。同社は「トラックや鉄道、倉庫は動いているが、国境の混雑や通関の遅れが出る可能性がある」としている。
ハパックロイド(ドイツ)は全船舶のホルムズ通航を止め、戦争危険付加運賃(WRS)の適用を始めた。金額は標準コンテナで1TEUあたり1500ドル、リーファー・特殊コンテナで1本3500ドルだ。CMA CGM(フランス)も湾内の全船舶にシェルター(退避)を指示し、スエズ運河の通航を止めた。同社は1日にリーファー貨物、2日に危険物貨物の予約をそれぞれ即時停止しており、緊急紛争付加料金も導入した。マースクとCMA CGMの2社がリーファー・危険品をそろって止めたことで、食品や化学品のサプライチェーンへの影響が広がりそうだ。
「紅海+ホルムズ」二正面リスク
今回、物流業界が最も警戒しているのは、ホルムズ海峡と紅海が同時に使えなくなるリスクだ。CMA CGMはすでにスエズ運河の通航を止めており、マースクも今後の状況次第でバブエルマンデブ海峡の航行を止める可能性を示している。フーシ派が紅海での攻撃を再開すれば、アジアと欧州を結ぶ海のルートは喜望峰回りしかなくなる。
喜望峰回りでは航海日数が12-18日延び、燃料費は30-50%増える見通しだ。これに各社のWRSやサーチャージが上乗せされる。業界全体では、コンテナ運賃が10-30%上がるとみられている。保険も厳しく、戦争危険の保険カバーが48-72時間の通知で打ち切られる動きがあり、保険が切れれば船を出せない。通航が再開されても、すぐに船が戻るとは限らない。

(出所:APモラー・マースク)
空の物流も止まっている。ジェトロ(日本貿易振興機構)のビジネス短信によると、ドバイ国際空港やアル・マクトゥーム空港で離発着が停止し、UAE、カタール、バーレーン、クウェート、イラク、イランが領空を閉鎖した。マースクも航空貨物アップデートで「便数の減少やスケジュール変更で遅延が出る」「シーエア便への影響が大きい」と伝えている。ドバイ空港は2日夜から限定的に動き始めたが、エミレーツ航空は3日午後まで大半の便を止めている。中東を経由していた電子部品や医薬品は、トルコやインド経由に切り替わりつつあるが、スペースの取り合いが激しい。
日本への打撃は大きい。中東原油の74%がホルムズ海峡を通っており、原油価格はWTIが72.74ドル(前週末比8.4%高)、ブレントが79.45ドル(同9%高)に跳ね上がった。一部のアナリストはブレントが100ドルに届く可能性を指摘している。
資源エネルギー庁のデータでは、2025年12月末時点で国と民間合わせて254日分の石油備蓄がある。短期的にはしのげる計算だが、同庁は3日午前7時時点で備蓄の緊急放出を発表しておらず、放出の準備に入ったという公式な話も出ていない。ジェトロは「代替輸送の輸送能力は限られる」と指摘しており、封鎖が長引けばガソリンや灯油、化学製品の値上がりは避けられない。
物流の現場でいま一番大事なのは、情報を集めて代わりの手段を確保することだ。マースク、ハパックロイド、CMA CGMのいずれも「各社のローカル担当者に直接相談してほしい」と顧客に呼びかけている。日本の海運大手3社のコンテナ事業を担うオーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE、シンガポール)も2日付でペルシャ湾発着の新規ブッキングを即時停止しており、欧州大手と足並みをそろえた形だ。
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