ピックアップテーマ
 
テーマ一覧
 
スペシャルコンテンツ一覧

ホルムズ封鎖、出口見えず長期化の様相

2026年3月4日 (水)

国際ホルムズ海峡の状況が、3月3-4日にかけても改善の兆しを見せない。2月28日の米・イスラエルによるイラン攻撃を機に、イラン革命防衛隊(IRGC)が全船舶への通過禁止を放送してからわずか数日。タンカーへのミサイル・ドローン攻撃が現実に起き、保険市場が事実上の機能停止に陥ったことで、商業航行は完全に止まった。本誌がこれまで「起きうる事態」として警告してきたシナリオが、そのまま現実になりつつある。

「迂回路なし」の深刻さが数字で裏づけられた

本誌は3月1日の初報から「今回は紅海危機と質が違う」と繰り返し報じてきた。その根拠が3月3-4日のデータでより明確になった。

通過船舶数は平時の1日130-140隻(タンカー50隻前後含む)から最大94%超減少し、2日以降は大型タンカーのAIS信号がほぼゼロの状態が続く。ペルシャ湾内外にはタンカーを中心に150-240隻以上が錨泊・待機中で、コンテナ船170隻(45万TEU、世界船腹の1.4%)も身動きできずにいる。

23年末からの紅海危機では、スエズ運河を避けて喜望峰(南アフリカ)回りに迂回するという選択肢があった。その結果、アジア-欧州間の航海日数は10-14日延び、コンテナ運賃はTEUあたり1000-2000ドル上昇した。しかし今回は湾内へ向かう貨物そのものを運ぶ手段がない。APモラー・マースク(デンマーク)、MSC(スイス)、CMA CGM(フランス)、ハパック・ロイド(ドイツ)の世界大手4社と日本郵船・商船三井・川崎汽船の邦船3社が全面停止を決め、CMA CGMは3月2日積みから緊急紛争サーチャージを新設した。

20フィートドライコンテナで2000ドル、40フィートで3000ドルという水準だ。マースクも3月3日付で湾岸発着全便への追加料金と運航停止継続を公式に発表している。さらに、マースクとハパック・ロイドが26年4月に予定していた紅海復帰計画も完全に凍結された。

保険市場の機能不全も深刻さを加速させている。ペルシャ湾の船体保険料は25-50%上昇し、1億5000万ドル級のコンテナ船1航海あたりの保険料が最大75万ドルを超える水準に急騰した。VLCC(大型原油タンカー)の日額運賃も20万ドルを超えており、法的な閉鎖でなくとも経済的な通過は不可能という状況だ。

さらにMSCは3日、ペルシャ湾岸を目的地とする貨物に「航海終了措置」(End of Voyage)を発出した。航行中の船舶を安全港に転送し、そこで輸送責任を終了するという措置で、以降の配送手配は荷主の負担となる。コンテナ1本あたり800ドルの迂回付加料金も即時適用される。「迂回して届ける」ではなく「途中で降ろして終わり」という段階に、海運大手の対応は移っている。

日本の影響は「懸念」から「ひっ迫シナリオ」へ

資源エネルギー庁の25年12月末時点のデータによると、国家備蓄146日分、民間備蓄101日分、産油国共同備蓄7日分の合計254日分を確保している。数字だけ見れば余裕があるように映るが、問題はLNG(液化天然ガス)だ。カタール産LNGの90%超がホルムズを経由しており、日本国内の在庫は3週間程度でひっ迫するとみられる。電力・都市ガス・化学品サプライチェーンへの波及は、原油より早く・広く起きる可能性がある。

国内物流への影響も本誌既報から確度が高まった。軽油・重油は原油価格に直結し、北海ブレントはすでに70ドル台に急騰、さらなる上昇が見込まれる。本誌が全日本トラック協会(全ト協)データを使って試算したとおり、最悪シナリオでは車両100台以下の運送事業者が全て営業赤字に転落するリスクがある。100台以下は業界全体の97%を占める層だ。

タンカーを含む日本関連船舶43隻が足止めされているという事実も、この局面で初めて輪郭が見えてきた数字だ。荷主企業にとっては自社の調達品がどのルートを経由しているかを改めて確認する、緊迫した状況が続いている。

見通し:短期決着か長期化か、分岐点は保険の復活

4日現在、米海軍によるタンカー護衛開始が検討されており、フランス・英国・ギリシャも軍艦を地中海に派遣した。米中央軍(CENTCOM)はすでにオマーン湾でイラン海軍艦11隻を撃沈・無力化したと主張しており、軍事的な圧力はかかっている。国際海事機関(IMO)は「航海の自由」を強調している。一方、IRGCは「海峡はイラン海軍の完全支配下」との主張を繰り返しており、事態は依然として流動的だ。

本誌がこれまで報じてきたとおり、商業航行が再開するには、IRGCの通過禁止警告の解除▽戦時保険の復活▽米海軍による安全保証──の3条件がそろう必要がある。軍事衝突が続く限り、この3条件が同時に満たされる見通しは立っていない。

1984-88年のイラン・イラク戦争時の「タンカー戦争」は4年間にわたって続いた。今回の危機の長さは見通せないが、少なくとも数週間単位の混乱を前提に備えることが、物流事業者・荷主企業に求められている局面だ。

■「より詳しい情報を知りたい」あるいは「続報を知りたい」場合、下の「もっと知りたい」ボタンを押してください。編集部にてボタンが押された数のみをカウントし、件数の多いものについてはさらに深掘り取材を実施したうえで、詳細記事の掲載を積極的に検討します。

※本記事の関連情報などをお持ちの場合、編集部直通の下記メールアドレスまでご一報いただければ幸いです。弊社では取材源の秘匿を徹底しています。

LOGISTICS TODAY編集部
メール:support@logi-today.com

LOGISTICS TODAYでは、メール会員向けに、朝刊(平日7時)・夕刊(16時)のニュースメールを配信しています。業界の最新動向に加え、物流に関わる方に役立つイベントや注目のサービス情報もお届けします。

ご登録は無料です。確かな情報を、日々の業務にぜひお役立てください。