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関税多層化、北米陸上輸送を直撃

2026年3月6日 (金)

ロジスティクス3月4日、カナダとメキシコからの輸入品に25%関税が発効した。2月20日の最高裁判決でIEEPA(国際緊急経済権限法)関税が違法とされ、通商法122条の全世界一律10%に切り替わってからわずか10日あまり。そこにカナダ、メキシコ向けの25%が上乗せされた形だ。品目ごとに適用税率が異なるため、現場では「この荷物は何%か」の確認だけで手間がかかる。本誌が2月20日付の解説で指摘した関税体系の細分化が、目に見える形で物流の現場に及び始めた。(編集長・赤澤裕介)

クロスボーダー輸送、駆け込みでレート急騰

関税発効の前から、駆け込み輸送が目立った。海外物流メディアによると、トロント―シカゴ間のドライバン需要は発効前の1週間で57%増え、米墨国境の要衝ラレド(テキサス州)でも荷量が前週比12%増えた。カナダ向けドライバンのスポットレートは24年11月の大統領選以降18%上がり、冷凍・冷蔵は35%上がった。

発効後も国境での混乱が続いている。米加、米墨の主要な国境通過地点で通関の待ち時間が長くなった。関税の適用区分を確認する作業が増えたことが一因とみられる。北米のトラック輸送大手の経営幹部は海外物流メディアの取材に対し、「どの国境でも遅れが出ている。政治的な摩擦のせいなのか、関税手続きの問題なのか、判断がつかない」と話した。

USMCA適合かどうかで税率が天と地

今回の関税でやっかいなのは、同じ品目でもUSMCA適合なら0%、非適合なら25%と、税率の差が極端に大きいことだ。適合の条件は北米域内の原産割合で、自動車の場合は75%以上が求められる。

これまで関税がかからなかった品目では、手間やコストを考えてあえて適合証明を取っていない企業も少なくなかった。それが25%の関税を突きつけられ、急きょ認証取得に走る荷主が増えている。

ATAによると、米墨国境の陸上貿易の85%、米加国境の67%がトラック輸送だ。国境をまたいで走るフルタイムドライバーは10万人。関税の影響を最も直接受ける人たちだ。

ISMが映す「関税慣れ」、ただし物流は別

3月4日に発表されたISM(米供給管理協会)のサービス業PMI(2月データ)は56.1で、2022年7月以来の高水準だった。興味深いのは回答企業の声だ。ISMのミラー委員長は「関税の不確実性に触れるコメントは増えたが、サプライチェーンへの深刻な懸念はみられない」と語り、多くの企業が関税の変動に慣れてきたとの見方を示した。回答企業からも「関税の影響は安定し、すでにコストに織り込んでいる」との声が出ている。

ただし、これはサービス業全体の話だ。同じ2月データでも輸送・倉庫業は業況が縮小しており、関税コストを吸収できている業種とそうでない業種の差は大きい。

4月2日が次の山場

次の焦点は4月2日だ。自動車のUSMCA猶予がこの日で切れるうえ、トランプ大統領は同じ日に各国への「報復関税」を打ち出す構えをみせている。

▲米国関税措置の現状と見通し(クリックで拡大)

本誌が2月20日に報じた通り、122条は最長150日の時限措置で、7月中旬に期限が来る。トランプ政権はその間に301条調査を進め、国別・品目別の関税を組み直したい考えだが、301条調査には通常9カ月以上かかる。7月までに間に合わなければ、関税の根拠がなくなる「空白期間」が生じかねない。

日本の荷主は何を準備すべきか

北米に生産や調達の拠点を持つ日系荷主にとって、今回の関税多層化は他人事ではない。日米間では25年7月の貿易合意で自動車関税15%(232条ベース)が決まったが、IEEPA部分が消えた以上、合意の中身を練り直すことになる。

ジェトロが24年末から25年初に在米・在墨の日系企業に聞き取りをしたところ、自動車産業を中心に「中国向け」と「米国向け」のサプライチェーンの切り分けはおおむね済んでいるという。しかし今回のカナダ・メキシコ向け関税は、北米域内のサプライチェーンそのものを揺さぶるものだ。18年の米中対立で「脱中国」を進めた次に、「北米域内をどう組み替えるか」という課題が加わった形になる。

クラス8トラック(大型トラック)の5割がメキシコ製で、トラック部品の43%は海外から調達されている。陸上輸送コストの上昇は、荷主の物流費にそのまま跳ね返る。USMCA適合証明の再点検、調達先の分散、在庫の持ち方の見直し——こうした対応は4月2日を待たず動き出すべきだ。

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