調査・データ公正取引委員会は11日、知的財産権、ノウハウ、データを対象にした取引実態調査の報告書を公表した。大企業などが取引上の立場の強さを背景に、中小企業や受託事業者の知財、技術情報、各種データを無償または低廉な価格で取り込む実態がないかを調べたもので、今後はこの調査結果を基に、中小企業庁、特許庁と連名で独占禁止法上の考え方を示す指針を策定する。従来の調査が製造業やスタートアップに偏っていたのに対し、今回は91業種、4万社を対象に実施し、業種横断で知財取引の問題を洗い出した点が特徴だ。
アンケートは2025年9月に実施し、6973社が回答した。回答企業のうち3824社が知的財産権、ノウハウ、データのいずれかを保有していると答えた一方、その半数に当たる1913社は、社内担当者や外部専門家など、知財取引をチェックする体制を持っていなかった。知財を保有する企業のうち603社、割合にして15.8%は、納得できない取引条件を受け入れた経験があると回答しており、商慣習や交渉力の差を背景に、不利な条件が固定化している実態がうかがえる。
問題事例は多岐にわたる。秘密保持契約(NDA)を結ばないまま技術資料や設計図面の提出を求められたケース、片務的なNDAを押し付けられたケース、工場見学や監査を名目に工程条件や加工ノウハウを開示させられたケースが確認された。知財の譲渡や利用に関しても、著作権の無償譲渡、単独で取得した特許の無償ライセンス、著作者人格権の不行使条項の設定、中間成果物のデータ提供など、これまで商慣行として見過ごされがちだった論点が列挙された。
対価設定の問題も大きい。知財やノウハウを含むにもかかわらず対価が無償、または著しく低く設定されたという回答は少なくなく、知財の譲渡やライセンスの方式自体が一方的に決められる例もあった。さらに、ライセンス対価の設定方法については674社、譲渡対価の設定方法については504社が、現状と望ましい方法に乖離があると答えた。売上連動型のレベニューシェアなどを望んでも、実際には一括払いしか認められず、協議の場すら持てないという声が出ている。報告書は、知財の価値が価格に適切に反映されていないことが、創作や研究開発の意欲を損なうとみている。
物流分野との関係でも見逃せない。今回の調査対象には運輸業、郵便業、倉庫業も含まれ、ヒアリング対象にも倉庫業が入った。報告書は、機械の稼働時間や生産性といった産業データの無償提供要請を問題例として明示しており、倉庫設備の稼働データ、搬送機器の運転データ、配車や動線設計に関する運用ノウハウなどが取引上の保護対象として意識される可能性が高い。物流DX(デジタルトランスフォーメーション)が進むほど、現場データそのものが経済価値を持つため、荷主、元請け、システムベンダー、現場事業者の間で、帰属や利用範囲、対価をどう定めるかが一段と重要になる。
公取委は、今回整理した71事例について、優越的地位の濫用のほか、取適法上の「買いたたき」「不当な経済上の利益の提供要請」、フリーランス・事業者間取引適正化等法の適用可能性も示した。単なる実態把握にとどまらず、法執行やガイドライン整備につなげる姿勢を明確にした形だ。価格転嫁や支払条件の適正化に続き、今後は知財、ノウハウ、データの扱いもサプライチェーン全体の公正取引を測る指標になっていく。今回の調査は、無形資産を「善意で差し出すもの」とみなしてきた取引慣行に、制度面から見直しを迫る内容だ。
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