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海と空の代替ルート、すでに限界

2026年3月14日 (土)

国際ホルムズ海峡の封鎖が3週目に入った。原油と燃料の高騰は前回報じた通りだが、いま現場で起きているのはそれとは別の問題だ。迂回先の港が詰まり、航空貨物の容量が縮み、肥料の原料が届かない。代替ルートそのものが限界に達しつつある。(編集長・赤澤裕介)

▲ホルムズ封鎖で表面化した代替物流のボトルネック

空のボトルネックが陸の物流を締める

中東の空が止まった影響は、数字に出ている。コンサルティング会社ロテートによると、中東発欧州向けの航空貨物容量は52%減。湾岸キャリア3社(エミレーツ・スカイカーゴ、カタール航空カーゴ、エティハドカーゴ)は世界の国際ワイドボディ・フレーター容量の13%を占めるが、カタール空域の閉鎖でカタール航空カーゴは運航を停止したまま。エミレーツは限定的に再開したが、新規予約は制限中だ。エビアンの分析では、アジア-中東-欧州回廊の容量が39%減少した。

海が遅れれば空に流れる。医薬品やエレクトロニクスの荷主が空輸に切り替え始めたが、その空もすでに縮んでいる。上海-フランクフルトのスポットレートは1キロあたり6.5-8.5ユーロ。25年10-12月期の4.2-5.5ユーロから最大6割上がった。南アジア-欧州は7割の上昇。ジェット燃料は紛争前の2倍だ。航空貨物は世界貿易額の3分の1を運ぶだけに、この価格転嫁は医薬品から生鮮品まで広く効いてくる。

港も詰まっている。ホルムズの手前で荷降ろしを迫られた船が、オマーンのソハール港やコルファカン港に殺到した。キューネ・アンド・ナーゲルの週次レポートでは、ソハールの平均待機日数は6日近い。アデン(イエメン)は9日待ちで混雑率88%。パキスタンのカラチも80%の混雑で2.5日待ち。インドのムンドラ、ニャバシェバにも波が来ている。

ジュベル・アリ港の定期船接続指数(LSCI)は791で、中東で群を抜くハブだった。コンテナ・マネジメント誌の分析によると、ホルムズの内側に閉じ込められた港湾のLSCIは合計1500ポイントを超える。外側に残るソハールやサラーラの合計は432。中東の定期船ネットワークの4分の3が暗転した。ハパックロイドの第11週アップデートでは、ジェベル・アリ寄港のオミットが相次ぎ、インドのムンドラから代替投入する措置がとられている。

食料と肥料の問題も表面化した。カタールのLNG(液化天然ガス)輸出が止まり、LNGを原料とする肥料プラントの操業停止が各地で報告されている。尿素価格は急騰。北半球は春植え期に入るタイミングで、農業への影響が現実味を帯びてきた。湾岸諸国は食料輸入の80-98%を海外に頼っており、現在の在庫で持つのは2-3か月とされる。

注目すべき動きがインドであった。イラン籍のLPG(液化石油ガス)タンカー「シバリク」と「ナンダデビ」の2隻が、インド海軍の護衛下でホルムズ海峡を通過した。西側の商業船舶がほぼ通過不能な状況下で、インドがイランとの外交関係を生かして自国向けエネルギーの通行を確保した形だ。前回報じた中国向けの「選択的通航」に続く動きで、ホルムズは「誰の船か」で通れるかどうかが決まる海峡に変わりつつある。

国内の物流事業者にとって問題なのは、迂回で延びた海上輸送日数を空では吸収しきれないことだ。中東ハブを経由していたシーアンドエアー(海空複合一貫輸送)は完全に機能を失っている。前回報じた石化原料のナフサ備蓄20日分の壁は、3月下旬に現実の減産ラインに達する。

次に警戒すべきは港湾の玉突きだ。ソハール、コルファカン、ムンドラへの貨物集中はまだ序盤で、ハパックロイドはすでにジュベル・アリのオミットをムンドラで代替している。このムンドラ自体が混み始めれば、アジア域内のコンテナ船スケジュールに波及する。紅海危機では喜望峰迂回の定着に2か月かかった。ホルムズ危機はそれ以上の時間を要する可能性がある。

▲各地域で広がる物流・エネルギー混乱(3月13-14日時点)(クリックで拡大)

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