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第1回CLOサロン直前、JPIC奥住事務局長×本誌赤澤編集長 特別対談

物流改革の鍵「CLO」と、「LPD」という新たな視座

2025年6月25日 (水)

ロジスティクス2026年4月の「CLO」(Chief Logistics Officer・物流統括管理者)選任義務化を前に、企業の物流戦略に新たな視点と役割が求められている。本誌・赤澤裕介編集長が、一般社団法人フィジカルインターネットセンター(JPIC)事務局長・奥住智洋氏を招き、物流構造の転換点にあるいま必要な議論と視座について語り合った。対談では、JPICが今後提唱していく新たな概念「LPD」(Logistics Producer)というプレイヤー像や、CLO協議会が育む現場との対話、そして“北極星”として掲げるフィジカルインターネットの思想にまで話は及んだ。

▲フィジカルインターネットセンター事務局長の奥住智洋氏

CLO任命は“はじまり”にすぎない

CLO制度は、荷主企業におけるサプライチェーン全体の最適化を指揮する責任者を明確化するものだが、制度が機能するためには実態としての「権限」と「意思決定力」が伴わなければ意味がない。奥住氏は、「任命だけで満足してしまっては、何も変わらない」と強調し、CLOが権限を行使し実行できる環境づくりこそが、制度導入の本質だと指摘した。

一方、赤澤編集長は、制度対応が追いつかない現場の混乱を指摘。たとえばトラック運賃の法的下限が急激に引き上がるなかで、「CLO単体では解決不能な課題が噴出している。個社対応には限界がある」と危機感を示した。構造的な変化に向き合うには、CLOを支えるネットワークと“社外パートナー”の存在が不可欠だ。

LPDという新たなカウンターパート

JPICが新たに提唱するLPDという概念は、まさにその“社外パートナー”の役割を担う存在だ。3PL企業、ITベンダー、物流コンサルなどの経営層を想定し、荷主企業のCLOと対等な立場でサプライチェーン構造の改革を支援する。

奥住氏は「単なるオペレーションの請負ではなく、経営者視点を持って提案・構想を描ける人材こそがLPD」と語る。LPDには、現場への理解と同時に、戦略提案力、ネットワーク構築力、そして何より“対話の責任”が問われる。

赤澤編集長も「CLOが責任者としての立場を担うなら、LPDは“問いを提示し、気づきをもたらす存在”でなければならない」と述べ、両者の補完関係が物流変革の鍵になると語った。

(クリックで拡大、出所:フィジカルインターネットセンター)

実践の場「CLO協議会」が育てる対話と構想

こうした議論の実践の場となっているのが「CLO協議会」だ。JPICが主催し、CLO候補者だけでなく、運送・倉庫・ITベンダーなどの事業者経営層も参加して、ワークショップ形式で課題解決に取り組む。

「初回は立場の違いから温度差があったが、回を重ねるごとに対話の質が変わってきた。課題に向き合う覚悟が違う」(奥住氏)。加えて、改正物効法やトラック新法などの法制度をテーマに、国交省・経産省の課長級も登壇するセッションを設け、政策と現場の相互理解を促している。

また、毎回テーマを設定してラウンドテーブルを実施し、参加企業の実課題を出発点にした構想検討が行われている。業界の枠を超えた“当事者同士の議論”がこの協議会の醍醐味だ。

物流の「北極星」を見失わないために

対談終盤では、制度対応が続くなかで「本来の目的」が見失われがちになることへの懸念も語られた。奥住氏は、「JPICはフィジカルインターネットの実現を“北極星”に据えて活動している」と明言。制度や個社対応はそのための手段であり、目指す先が共有されていなければ、改革は持続しないという。

フィジカルインターネットとは、水平連携(異業種間の共同化)、垂直統合(調達から販売の一貫化)、そしてデジタルによる可視化・再構成力の3軸で構成される、物流の次世代モデルである。

「制度対応が先行すると、本来の理想を見失いやすい。CLO制度もLPD構想も、この“北極星”に向かうための羅針盤として整理すべきだ」と奥住氏は語る。赤澤編集長も、「その視点があるからこそ、制度や現場がつながり、議論の本質が見えてくる」と応じ、物流改革の道筋として“思想と現実”の接続を重視すべきだとした。

■対談全編はこちら

「CLOサロン」から新たな連携が始まる

「北極星」へ向けた道筋や仲間と出会える場として、JPICでは6月27日に「CLOカンファレンス2025」を開催する。リアル会場はすでに満席のため申込受付は終了したが、オンライン視聴枠はまだ受付中。また、7月18日には「CLO協議会」がいつもの会場を飛び出して、CLO協議会“出張版”として、本誌企画・主催の「第1回CLOサロン」で開催される。

制度や構想の解説だけではなく、CLO協議会で得られた知見を広く共有し、ワークショップ形式による“対話の実験場”として、CLO候補者や社内推進者の背中を押す手がかりとなるはずだ。物流の変革に本気で向き合おうとする読者にこそ、これらの場を未来設計のヒントとして活用してほしい。

物流課題は、もはや物流会社だけの問題ではない。荷主企業の事業戦略として捉えなおす必要がある。だからこそCLOとLPDの連携が求められる。業界変革の起点として、今後LPDという視点がどのように浸透し、実装されていくか。来たる義務化に向けて、残された時間は多くない。

CLOカンファレンス2025「物流の新たな潮流、企業成長を加速せよ」

日時:2025年6月27日(金)14時-16時30分(開場13時30分)
形式:ハイブリッド(会場は満席/オンライン参加申込受付中)
参加費: 無料
申込:https://j-pic.or.jp/sip-service/4-smart_logistics_service/clo-conference2025/

「第1回 CLOサロン」概要

日時:2025年7月18日(金)12時-16時(予定)
会場:野村コンファレンスプラザ新宿 コンファレンスB(新宿野村ビル2階)
参加費:無料(要事前申込)
定員:80人限定 ※先着順
申込期限:2025年7月16日(水)16時
主催:CLOサロン事務局、LOGISTICS TODAY
協賛:一般社団法人フィジカルインターネットセンター、野村不動産
申込:https://www.logi-today.com/797021

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