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物流施設市場、燃料ショックで賃料上昇圧力

2026年4月4日 (土)
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調査・データグローバル不動産サービスのクッシュマン・アンド・ウェイクフィールドは1日、日本の物流施設市場に関する2025年下半期レポートを公表した。足元では貨物輸送量の回復など持ち直しの兆しが見られる一方、中東情勢の緊迫化に伴うエネルギー供給リスクが顕在化し、市場の先行きには不確実性が残る。

貨物輸送量は25年12月時点で前年同月比4.1%増と回復基調にある。一方で輸送トンキロは9.2%減となり、輸送距離の短縮が進行している。NX総合研究所の荷動き指数も25年第4四半期にマイナス4まで改善したが、26年第1四半期はマイナス6と再び悪化見通しとなる。特にレポートでは、調査時点で織り込まれていなかったホルムズ海峡情勢の悪化が、今後の物流動向をさらに押し下げるリスクを指摘している。

燃料コストを巡る環境も大きく変化している。政府はガソリン・軽油の暫定税率廃止により構造的なコスト軽減を進めたが、同時期に発生したホルムズ海峡の実質的な通航障害が状況を一変させた。日本は原油輸入の9割以上を中東に依存しており、その大半が同海峡を通過する。備蓄は200日分存在するものの、軽油への精製ラグや仮需の発生により、物流現場では早期に供給ひっ迫が顕在化する可能性がある。燃料サーチャージの転嫁が遅れれば、中小運送事業者の収益を直撃し、ドライバー不足と相まって輸配送キャパシティーの縮小を招くリスクもある。政府は26年3月に補助金を再発動し、価格抑制と備蓄放出で対応しているが、構造的な不安は解消されていない。

需要面では、物価上昇による消費マインドの低下が物流需要を抑制する可能性がある。これに伴い、テナント企業による新規拠点や拡張計画の見直しも想定される。一方で供給側では、首都圏の新規供給が前年比38%減と大幅に縮小し、今後1年の供給も過去5年平均比で6.6%減と抑制傾向が続く見込みだ。需給両面で調整が進むなか、市場は単純な拡大局面から構造転換局面へ移行しつつある。

中長期的には在庫戦略の変化が市場の方向性を左右する。従来の「Just-in-Time」から「Just-in-Case」への転換が進めば、安全在庫の積み増しに伴い追加の倉庫需要が発生する可能性がある。これは輸送の効率化とは逆に、保管機能の重要性を相対的に高める動きといえる。サプライチェーンの寸断リスクを経験した荷主にとって、在庫はコストではなくリスクヘッジ手段へと再定義されつつある。

開発面では、燃料高騰が建設コストにも波及している。鉄骨やコンクリートの製造・輸送コスト上昇により、デベロッパーは新規開発の採算確保が難しくなり、着工延期や計画見直しが現実味を帯びる。この結果、新規供給の抑制と既存物件の需給逼迫が同時に進み、空室率低下と賃料上昇圧力が強まる可能性が高い。

加えて、原油高は電力コストの上昇を通じて施設運営にも影響する。特に冷凍冷蔵倉庫や自動化設備を備えた大型施設では、テナントの光熱費負担が急増する懸念がある。このため、太陽光発電などを備えた省エネ型・ESG対応施設への需要が相対的に高まり、環境性能に応じた賃料プレミアムが顕在化する可能性が指摘される。

総じて、物流施設市場は短期的には回復基調にあるものの、エネルギーリスクと供給制約という構造要因に直面している。輸送と保管の役割分担は再定義されつつある。コストとレジリエンスのバランスも見直し局面に入った。物流不動産は単なるインフラから「リスク対応資産」へと性格を変えつつある。

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