イベント果たして、物流現場はAI(人工知能)を活用できているのか──。本誌は28日、『物流×AI』新プロジェクトキックオフ特番「物流業務のAI化、開く”格差”と反撃の羅針盤」を公開配信した。Hacobu、KURANDO、Nexgen Japanからの登壇者が一堂に会し、物流業界におけるAI活用の現在地と課題について60分にわたり、議論を交わした。

昨秋、LOGISTICS TODAYとHacobuが268社に聞いたところ、95%超がAI活用に前向きだった。ところが「業務で使えている」と答えた企業は37%。残る6割は情報収集の段階で足を止め、「何から手をつければいいのか」と地図を探している。Nexgen Japan CEOで物流AIアーキテクトの大野有生氏は、生成AI投資が金融などの3-4割に対し運輸・物流は6-7%に過ぎないと指摘した。
「肌感としてどうか」というモデレーターを務めた本誌・鶴岡昇平編集局副長の問いに、Hacobuプラットフォーム事業本部事業推進部部長の木地谷健介氏は「どういう切り口で見ればいいか考える時間すらない、という方が非常に多い。

▲Hacobuプラットフォーム事業本部事業推進部部長の木地谷健介氏
データはあるのに分析できていない、というのが現場の実態です」と即答した。さらに、木地谷氏は具体的な取り組みを紹介。手元のデータを投入するだけで、AIが分析の切り口や異常箇所を提示するツールを提供しているという。利用者からは「データ分析にかかる時間を短縮できた」「こういう見方ができると気づいた」といった声も上がっている。さらに、現場でいまだ多く使われている手書きの紙の配送依頼書をAIで読み取り、データ化・マッピングするシステムの導入支援も挙げた。「業務フローに組み込む以上、期限や周囲との連携が必要になり、個人で気軽に試すよりハードルは上がる。だからこそ継続的な伴走支援が重要だ」と力を込めた。
木地谷氏の実務感あふれる話を受け、KURANDO代表取締役の岡澤一弘氏は「見落とされがちな落とし穴がある」と付け足した。倉庫のAI活用は、計画を賢くするほど「運用の属人化」という影が濃くなる。

▲KURANDO代表取締役の岡澤一弘氏
WMS(倉庫管理システム)や販売計画と現場実績をつなぎ、計画と実行のサイクルを回す先進例もある。だが全センターに広げようとすると、AIを守る番人が必要になり、その担当が異動した途端に歯車が止まることがあるという。岡澤氏は「だから、誰でも引き継いで、みんなで使い回せる形にする。そこまで作って初めて”導入”です」と、プラットフォーム側の覚悟を促した。
続いて大野氏。「壁は技術より心です」と言い切る。バンジージャンプ同様、怖いのは飛ぶ瞬間で、ひとたび踏み出せば体が覚える。だからまず、経営者に”AI秘書”を持たせる。予定・メール・議事録を束ね、毎朝7時に今日の最適解を差し出す仕掛けを、自分の手で使ってもらう。「使えた」という小さな確信が、号令になる。結論は3人とも同じ。「まず小さく試す」なのだ。

▲Nexgen Japan CEOで物流AIアーキテクトの大野有生氏
議論の熱気が冷めやらぬなか、本プロジェクトの第1弾として、物流業務を「AI化の難易度×インパクト」でマッピングした羅針盤の制作に着手すると発表した。現在、詳細版アンケートを実施中で、回答締切は6月19日。その結果を反映したマップを6月29日の本番サミットで初公開する予定だ。「AIは魔法の杖ではない。小さな一歩から着実に進むことが、現場の地位向上につながる」──この日の議論が示したのは、そのシンプルな真実だった。




























