調査・データ欧州クリーントラック連合(ECTA)は、改正ユーロビネット指令に基づく道路通行料制度が、ゼロエミッショントラック(ZET)の運行コストに与える影響を分析した調査報告書を公表した。ドイツ、フランス、ポーランド、スペインの4か国を対象に、CO2排出量などに応じた料金差と通行料免除による効果を試算した。
調査はWSP(カナダ)傘下のリカルド(英国)が実施した。欧州の長距離輸送で使われる5軸連結車のN3クラスを想定し、バッテリー式電気トラックと同等のEURO VIディーゼルトラックを比較した。各国で想定される指令の実施内容を反映した場合、ZETの年間通行料はディーゼル車に比べ、1台あたり1万1000ユーロから2万3000ユーロ軽減されるとした。ドイツの現行制度を含めた国別の2026年試算では、フランスが1万4900ユーロ、ポーランドが2万2600ユーロ、スペインが1万1200ユーロの削減となる。
ドイツでは、3.5トン超のゼロエミッション大型車を31年6月末まで通行料の全額免除対象としている。このため26年の軽減額は年間3万9300ユーロに達し、31年には4万3700ユーロまで拡大する見通し。26年から31年までの累計では、1台あたり24万8800ユーロの負担軽減になると試算した。
4か国すべてがドイツと同様にZETを全面免除した場合、年間の軽減額は3万7000ユーロから5万3000ユーロに拡大する。26年時点では、高速道路料金が高いフランスが5万2200ユーロで最大となり、スペインは4万2200ユーロ、ドイツは3万9300ユーロ、ポーランドは3万7200ユーロとなる。31年までの累計軽減額は、フランスが32万8000ユーロ、スペインが26万7700ユーロ、ポーランドが25万4800ユーロと推計した。

(出所:欧州グリーントラック連盟)
一方、制度の導入状況には国ごとの差が大きい。ドイツは23年12月から、インフラ利用料にCO2、大気汚染、騒音の各費用を組み込んだ料金体系を運用している。代表的なディーゼルトラックでは、CO2課金の導入前に1キロあたり0.19ユーロだった通行料が0.35ユーロに上昇した。報告書は、CO2課金によってディーゼル車の負担が大幅に増え、免除対象となる電気トラックの経済性が相対的に高まったと分析する。
フランスとスペインは指令を国内法へ移したものの、既存の長期道路コンセッション契約などが障壁となり、CO2排出量に応じた料金制度は広く運用されていない。ポーランドも距離制の電子課金制度を導入済みだが、改正指令の主要部分は法制化の途上にある。ECTAは、法的な移行だけでは実際の料金差につながらず、国ごとに分断された導入がZET普及効果を弱めていると指摘した。
報告書は、CO2と大気汚染に応じた外部費用課金による税収も推計した。高料金のシナリオでは、2026年にドイツで43億ユーロ、フランスで41億ユーロ、ポーランドで18億ユーロ、スペインで11億ユーロの年間収入が見込まれる。収入の7割から8割程度はCO2課金が占める。31年にはドイツで48億ユーロ、フランスで45億ユーロまで増えるとした。
ECTAは、こうした収入を一般財源化せず、ゼロエミッショントラックの購入・リース支援、中小運送事業者の車両更新、主要貨物回廊の充電網や電力設備の整備に充てるよう提言した。欧州の道路貨物事業者の多くは保有車両10台未満の中小企業であり、車両価格の高いZETへの切り替えには、導入補助だけでなく継続的な運行費の差を設ける必要があるとの考えを示した。
調査結果は、通行料政策が電気トラックの総保有コストを押し下げる一方、実際の効果は料金対象となる道路網の広さや既存契約、免除期間に左右されることも示している。31年以降の全額免除の扱いは決まっておらず、CO2課金と支援策をどのように組み合わせ、運送事業者に予見可能な制度を示せるかが課題となる。
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