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潤滑油相談突出、整備・運送の小口調達へ影響

2026年6月3日 (水)

ロジスティクス石油製品の供給をめぐる相談で、潤滑油に関するものが目立っている。経済産業省が6月2日の中東情勢に関する関係閣僚会議で示した5月18日から24日までの直近1週間の相談件数は、キーワードで集計したもので、潤滑油が102件と最も多く、燃料油の8件を大きく上回った。ナフサ由来の化学製品を含む石油製品については、年度を越えた供給継続が可能との見通しも示された。政府はこうした現象を「目詰まり」と呼び、解消を進めるとしている。それでも、エンジンオイルなどの潤滑油では、自動車整備工場、バス事業者、トラック事業者など小口で調達する側を中心に、納期や数量への不安が残る。総量を確保できても、必要な相手に必要な量が届くとは限らない。政府の対応は、川下にまで供給が届いているかの確認に重きを置いている。(編集長・赤澤裕介)

潤滑油の相談が燃料油の8件を大きく上回り、燃料価格とは別の不安が前面に出ている。同じ集計で、シンナー・塗料は47件、接着剤は11件だった。原油から精製される燃料そのものは、補助によって小売価格の上昇を抑えている。資源エネルギー庁は3月19日から緊急的な激変緩和措置を実施し、ガソリンを全国平均で1リットル当たり170円程度に抑える補助を出している。軽油、灯油、重油はガソリンと同額、航空機燃料はその4割を補助する。制度開始前の3月16日に1リットル178.4円だった軽油の全国平均小売価格は、159円程度の水準に下がった。軽油の価格は補助で抑えられても、整備に使う油脂や尿素水が届かなければ車両は止まる。相談件数からは、価格対策だけでは物流の稼働不安を消せない構図が見える。

整備現場で納期・値上げ不安

ディーゼル車は軽油だけで走るわけではない。エンジンオイルなどの潤滑油が切れれば整備が止まり、排ガスを浄化する高品位尿素水「AdBlue(アドブルー)」が手に入らなければ車両は動かせない。燃料価格を補助で抑えても、これらの消耗品が届かなければ輸送能力は守れない。

国土交通省が全国53団体の自動車整備商工組合に聞き取ったところ、整備事業者からは、7月以降分のディーゼル車用エンジンオイルを注文したら納期未定と言われ、同時に値上げも予定されていると告げられて不安だ、という声が上がった。組合からは、供給不安を感じた一部の取引先が通常より多く発注したことで、ディーゼル車用エンジンオイルに欠品が生じたという報告があった。政府が石油製品の供給継続に一定の見通しを示すなかでも、不安が前倒し発注を呼び、その発注が欠品を生んで不安をさらに強めている。アドブルーは、ポリ容器の小口品が入手しづらい一方、近隣のガソリンスタンドでは補給できているとの声があった。

こうした供給の問題は、地方運輸局が中心となって、調達が困難な自動車整備工場やバス、タクシー、トラックの事業者の状況を把握し、地方経済産業局と連携して解消にあたる。経産省と国交省は5月26日、川中・川下の情報を共有する連絡会議を開いた。経産省は、石油元売による直接販売の仕組みと前年同月比で同量を供給する要請をもとに、燃料・潤滑油などをめぐる433件の案件を解消したとしている(5月29日時点)。物流の稼働に直結する例として、バス・トラックの軽油を三重、京都、福岡など8府県で、チルド食品の配送用トラックが使う軽油を全国規模で確保した。自動車整備事業者が使うシンナーは岩手、東京、愛知など5都県で、地方鉄道の運行に使う潤滑油は静岡で確保した。

小口・川下の供給把握を拡大

供給が絞られる局面では、発注量の小さい事業者ほど納期や数量の影響を受けやすい。潤滑油の相談が多いのは、こうした事業者が全国に数多くいることもある。

政府は今回、川中から川下の流通過程で供給を届ける取り組みを重点的に進める対象を広げた。国交省が把握する潤滑油の流通過程では、自動車整備工場、バス、トラックの20万2000事業者に加え、タクシーの4万2000事業者を新たな重点取組の対象に加えた。さらに経産省は中小製造業の34万事業者に対する石油製品の供給状況を、農林水産省は園芸農家の27万経営体に対するプラスチック製の農業資材の供給状況を、それぞれ新たな対象とした。交渉力が限られる小規模事業者が多い分野で、地方整備局、運輸局、農政局が入って実態を把握する。

小口に届きにくい状態は、運輸の油脂にとどまらない。経産省は、地方の工務店などに塗料・シンナーを届けるため、原料となるトルエンについて、メーカーの要請に応じて最大で例年の1.8倍まで供給を拡大する。食品では、給食用パンの包装フィルムについて、フィルムメーカーの6月中の供給見通しを国が確認し、関係者間で納期の情報を共有したことで、6月末まで給食用パンを提供できるようになった。上流で量が確保されても、末端の発注にまで届くかどうかが、品目を問わず共通の課題になっている。

政府の対応は、総量を確保できるかにとどまらず、必要な小口の需要に実際に届くかという課題に及んでいる。物流の現場では、軽油価格だけでなく、整備に使う油脂や尿素水、資材まで含めて、車両を動かし続ける条件がそろうかどうかが、点検の対象になる。

この記事をより深く理解するために

中東情勢関係閣僚会議、川下の流通対策を本格化(2026年5月22日)― 第8回会議で工務店、整備工場、パン・菓子店の資材供給への介入を打ち出した前回の報道。今回の小口対応がどこから続くのかをたどれる。

軽油・ディーゼル価格の動向と補助制度の現状(2026年5月22日)― トラック運送の収益に直結する軽油価格と激変緩和措置の仕組みを整理した解説。本記事で触れた価格抑制の背景を補う。

中東情勢と供給網、化学から食品包装までの影響(2026年6月2日)― 同じ6月2日会議を、化学製品、建設、食品包装まで多品目で俯瞰した姉妹記事。本記事の潤滑油の論点を供給網全体の中に置いて読める。