ロジスティクス宮城県東松島市の奥洲物産運輸で23日、倉庫見学会が開催された。同社が参加するトラック運送事業者の会「ドライバーニューディールアソシエーション」(D.N.A.)の会員を対象としたもの。
当日は全国から集まった運送事業者が、業界最大級の取扱品種を誇る合板物流の現場をはじめ、ドライバーの負担軽減や環境対策、防災への貢献を兼ね備えた同社の設備や車両を視察した。

▲同社の倉庫外観
奥洲物産運輸の倉庫には、1日あたり50-60台の車両が搬入・搬出に訪れる。北は北海道から南は大阪・堺まで広範な配送エリアに対応しており、長距離輸送では協力会社の活用や、北海道方面へのフェリー輸送(トレーラーの荷台部分のみ積載するスイッチング輸送)を取り入れるなど、ドライバーの労働時間抑制に配慮した運行体制が組まれている。
同社が扱う合板は200種類に及び、業界内でも最大級の品種数を誇る。石巻の工場から平日20-25台の製品が搬入されるほか、インドネシアからの輸入品は石巻港を経由して同社の保税蔵置場へ一時保管され、開梱・選別・品質チェックを経て良品のみが出荷される仕組みだ。

▲住宅建材のほか、コンクリートの型枠にも使われる合板。同社の倉庫には常時、厚みや長さが異なる200種に及ぶ合板が保管されている
倉庫内を見学した参加者がまず注目したのが、「通し柱がない」独特の構造だ。これは大型フォークリフトの足回りと作業動線をしっかり確保するために採用された設計で、柱を減らした分の強度は梁部分の補強によって補われている。
また、地震リスクへの備えも徹底している。過去の震災時には、地震の揺れと崩落による風圧で倉庫のシャッターが全損した苦い経験を持つ。そのため、現在は最大保管能力(80万枚)に対して上段積みをあえて1段抑えた状態で運用。崩落リスクを未然に防ぐ安全優先の姿勢が徹底されている。
見学会では、ドライバーの作業負荷軽減と環境・防災貢献を両立させる多様な取り組みも紹介された。

▲トラック上部に見える黒い部分が「ガシェル」のソーラーパネル。奥に見えるのは下回りも洗うことができる洗車場
従来、合板輸送ではシート掛け作業が一般的であったが、高所作業のリスクや重労働を解消するため、同社では順次「ウイング車」への切り替えを進めている。これにより、性別や体格を問わず安全・快適に作業を行える環境を整えている。
さらに参加者の関心を集めたのが、独自改良を施した「大型洗車機」だ。一般的なウイング車や箱車だけでなく、トレーラーの平ボディ車でも洗車できるようカスタマイズされている。 特筆すべきは、洗車機入口の下部から強力な水を噴射する「下回り洗車機能」だ。東北特有の融雪剤による車両の錆を防ぎつつ、手作業では時間のかかる下回り洗浄を自動化。ドライバーの洗車時間を大幅に短縮することで、物流の「2024年問題」における労働時間削減に寄与している。
なお、同洗車機には8トンの専用タンクで水道水が供給されている。同社は東松島市と防災協定を締結しており、万が一の災害時には敷地を地域住民の避難場所として開放するとともに、この8トンタンクの水を生かした給水支援を行える体制を整えている。

▲東松島市との防災協定によって設置されたタンク。洗車に使う水を蓄えているが、水道水を使っているため、災害時などには飲み水として利用可能
車両展示エリアでは、同社の環境戦略と輸送効率化を象徴する2つの技術・車両がお披露目された。
同社が開発した車載ソーラー発電システム「ガシェル」はトラックの屋根上に250ワット×2枚(計500ワット)の太陽光パネルを設置し、スマートボックスを介してバッテリーへ直接充電するシステム。 通常、バッテリー充電はエンジン動力を使ってオルタネーター(発電機)が稼働することで行われる。しかし、これはエンジン出力の一部が発電に使われることで、運行時の燃費を悪くすることになる。しかし、同社のガシェルは、ソーラー充電によってオルタネーターの稼働頻度を抑制。これによりエンジン負荷が低減され、燃費向上やCO2削減につながる仕組みだ。 ウイング車や冷凍車など、日中にバッテリーを多用する車両で特に高い効果を発揮するほか、バッテリー寿命の延長(1.5倍)も見込める。同社では早稲田大学との共同開発のもと、発電量やCO2削減量の可視化システム、スマートフォンアプリの開発を進めている。
また、同社が導入したダブル連結トラックが披露された。同車両は全長25メートル、10トン車2台分に相当する容積を持つ特大型車両。前側ユニット(積載量13.4トン、内装10メートル)と後側ユニット(積載量10.4トン、内装11メートル)で構成される。 最大の特徴は、前後のユニットをドリー(連結装置)から切り離し、それぞれ単独で運用・走行させることができる点だ。目的地や荷量に応じた柔軟な配送が可能となるため、ドライバー不足解消と輸送効率化の切り札として期待されている。

▲奥洲物産運輸が導入したダブル連結トラック
これまで東北地方では、東北自動車道でのみダブル連結トラックの運行が許可されていたが、同社は仙台から八戸まで伸びる復興道路(三陸沿岸道路)での使用が可能になるよう、行政各所との折衝を重ねた。これにより、仙台を起点にダブル連結トラックの許可を得ることができ、東北道沿線以外の地域で物流効率化を進めるための新たな可能性を切り開いたといえる。(土屋悟)
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