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三井不動産、DC開発ほか産業創造領域へ事業拡大

2026年7月23日 (木)

拠点・施設三井不動産は23日、ロジスティクス事業の記者説明会を開き、物流施設の開発・運営を基盤に、研究開発施設やデータセンターなどへ事業領域を広げる方針を示した。物流施設を供給するだけでなく、荷主の物流戦略や施設運用を支援する「物流プラットフォーマー」としての機能を高め、さらに産業活動全体を支える「産業デベロッパー」への進化を打ち出した。

涌井耕人氏

説明したのは、三井不動産ロジスティクス本部ロジスティクス事業部長兼イノベーション推進室長で、MFロジソリューションズを所管する涌井耕人氏。

同社のロジスティクス事業は、2026年6月末時点で国内70物件、海外18物件の計88物件に拡大した。このうち竣工済みは64物件、開発中は24物件。総延床面積は630万平方メートル、12年の事業開始以降の累計総投資額は1兆4000億円に達した。

涌井氏は質疑応答で、物流施設の建築費高騰について、過去3、4年で大幅な上昇が続いたのに比べ、足元では上昇ペースにやや落ち着きもみられるとした。一方で、人件費などは引き続き増加しており、「天井を打ったとは考えていない」と説明した。物流施設市場環境の厳しさも増し、参入するプレイヤーは最盛期の半分程度になったとの感触も示した。それでも同社施設の空室率は2%程度を維持しており、今後もコンスタントな施設供給を続けるとともに、「街づくり型」を軸に開発の付加価値を高める。

物流施設の開発総物件数・総延床面積・累計総投資額(出所:三井不動産)

大規模で好立地な物流施設に、地域共生、防災、産業機能を組み込む「街づくり型物流施設」のフラッグシップとなるのが、「SGリアルティ・MFLP大阪加島」(大阪市淀川区)だ。25年12月に着工し、27年9月の完成を予定する。延床面積は21万平方メートルを超え、大阪市内最大規模となる。JR東西線加島駅から徒歩4分の立地で、佐川急便が大阪市中心部をカバーする戦略拠点として入居する。

同施設には免震構造や72時間対応の非常用発電機を採用し、重要設備を高潮発生時の想定浸水高さより上部に配置する。津波避難ビルへの指定も見込む。系統用蓄電池、コンテナ型データセンター、ペロブスカイト太陽電池など、複数の先端機能の導入も検討する。

京都府八幡市では「MFLP・LOGIFRONT京都八幡Ⅰ」が3月に着工し、同IIも11月に着工する予定。それぞれ27年8月、28年9月の完成を計画する。2棟合計の延床面積は24万平方メートルを超える。

大規模な河川の付け替えや湛水池の整備を通じて地域の治水能力を高めるほか、地元農産物を施設内や三井不動産のEC(電子商取引)サイトで販売する構想も示した。物流施設の開発を地域防災や農業振興につなげる。

多様化する物流課題への対応も解説された。冷凍冷蔵分野では、埼玉県杉戸町の「MFLP杉戸」が、複数企業が利用できるマルチテナント型冷凍冷蔵倉庫として、27年8月末の完成を予定する。すでに全区画の契約が決まっているという。千葉県船橋市の「船橋南海神プロジェクト」は、顧客の事業戦略に合わせた専用施設の開発として冷凍冷蔵領域の知見を深める。また、前述のSGリアルティ・MFLP大阪加島には危険物倉庫を併設し、高まる危険物物流ニーズに応える。

一方、同社がこれら物流施設開発と並ぶ柱に据えるのが、荷主企業のサプライチェーン改革支援だ。

グループ会社のMFロジソリューションズは、物流拠点の統廃合やネットワーク設計、倉庫内レイアウト、省人化、共同配送、物流統括管理者(CLO)への対応などを支援する。相談実績は35社超、計120件以上に上り、自社施設への入居を前提とせず、顧客に適した施設や運用方法を提案する方針を掲げる。

荷主企業や物流事業者などが課題を共有する「MFLP &LOGI Community」も展開し、19年の発足以降、イベントを累計100回以上開催した。延べ2500人以上が参加しており、施設開発、コンサルティング、企業間コミュニティーを組み合わせ、個社だけでは解決が難しい物流課題への対応を進める。

物流現場のデータ化に踏み込んだ新たなサービスも検証する。AIカメラでトラックの車番を読み取り、入退場と荷役時間を可視化する「MFLP &LOGI Berth」(仮称)をMFLP船橋で実証した。Hacobu(ハコブ、東京都港区)のトラックバース予約・受付システムとの連携により、予約車両ごとの入退場登録自動化を実装し、今後は、荷待ち・荷役時間の把握が求められる荷主やCLOへの支援、可視化結果に基づく庫内運用改善と組み合わせたサービス化を検討する。

自動運転トラックへの対応も強化する。三井不動産は自動運転技術を開発するT2(千代田区)に出資しており、高速道路に近接する物流施設で、有人運転と無人運転を切り替える運用や、施設内の受付、誘導、入退場管理のあり方を検討する。高精度地図や車番情報を活用し、受付から誘導、入退場、荷役時間の計測までを一体化した、自動運転車両対応の施設オペレーション構築を目指す。

物流の枠を超えた事業拡大を象徴するのが、6月に完成した「MFIP海老名 &forest」だ。物流区画に加え、オフィス、研究施設、ラボなどに対応するマルチユース区画を備え、物流と研究開発機能を同一拠点に集約できる。国内初となる一部木造構造を採用し、森林資源の有効活用を打ち出す。竣工時点で満床となり、新日本空調は長野県内に分散していた研究開発機能を同施設に移転・集約した。物流施設で培った大規模建物の開発・運営力を、研究開発や産業支援の領域へ広げる。

こうした物流プラットフォーマーとしての成熟とともに、同社は「産業デベロッパー」としての姿勢も明確にする。

データセンター(DC)事業には12年に参入し、現在は稼働中の物件に、開発・推進中を合わせて計7棟を展開する計画である。今後も新規開発地の精査を進めるほか、都心型DCや、複数の利用企業に設備を提供するコロケーション事業も検討する。35年までにDC事業への累計投資額を6000億円超に拡大する計画で、国内外のDC事業者とのリレーションや、物流施設で培った用地取得、企画開発、地域との合意形成のノウハウを生かし、三井不動産が主体となって事業を進める。

一方、DCは大量の電力を消費する施設との印象や、建物規模、騒音、景観などをめぐり、開発地域の理解を得ることも課題となる。涌井氏は、地域住民への説明を継続し、防災機能や緑地整備など地域に還元できる機能を示しながら、DC事業者とも連携して地域共生のあり方を検討していく考えを示した。成長市場への投資を急ぐだけでなく、社会インフラとして地域に受け入れられる開発モデルを構築できるかも問われる。東京都日野市で計画するDCでは、緑地や遊歩道・公園を整備、防災機能についても行政と協議を進める計画だという。

物流施設の量的拡大だけでなく、物流改善サービス、研究開発施設、データセンターを一体で扱う事業構造へ移行し、開発後も顧客のサプライチェーンと産業活動を後押しする姿勢を鮮明にした。(大津鉄也)

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