ロジスティクスフィジカルインターネットセンター(JPIC)は6月30日、「PI(フィジカルインターネット)実現コンソーシアム2026年度第1回全体会議」を開催した。会議で、PIの取り組みが構想・検討段階から、評価、標準化、共同物流モデルの実装へと移るなかで、各ワーキンググループ(WG)の活動を横断的に確認する場となり、PI成熟レベル検討WG、水平連携検討WG、モーダルコンビネーションWG、地方共同混載配送検討WGの4つのWGについて、今年度の活動計画と進ちょく状況が報告された。

PI成熟レベル検討WGでは、フィジカルインターネット成熟度モデル「PIMM」の運用移行に向けた進捗が報告された。PIMMは、フィジカルインターネットに向けた企業やグループの取り組み状況を5段階で評価する指標で、申請、評価、見直し、フォローアップの4プロセスで構成される。同WGでは、5社によるトライアル審査を通じて改善点を反映し、Ver.1を完成させて「設計フェーズ」から「運用フェーズ」へと移行する。7月に公開して申請受付を開始、9月中の第1回審査会開催を目指す。
運用体制としては、審査を担うアプレイザーチームと、認証取得企業によるホルダーチームを立ち上げる。申請企業の増加に伴い審査負荷が高まることを見据え、公募型の外部アプレイザー導入や、ホルダーコミュニティの自律運営を検討する。あわせて、生成AIを「6人目の審査員」として活用し、人間の審査員との比較を通じて評価の平準化、効率化、客観性向上につなげる考えも示された。
JPICでは、PIMMをCLO活動の羅針盤として、「PI実現コンソーシアム」「CLO協議会」両輪での活動を深化させていく。また、6月初旬にフランスで開催された「国際フィジカルインターネット会議」(IPIC2026)への参加では、世界的なPIアンバサダーが集う国際会議で企業の取り組みを促すツールとしてPIMMが高く評価されたことが報告された。
水平連携検討WGでは、各業界WGの取り組みをPI実現へ接続する「横串」の役割が改めて示された。同WGは、業種業態を越えたN対Nの共同物流実現に向け、標準化と共同物流を横断的に支える位置づけにある。
具体例として、化学品WGでは物流DX推進分科会の進ちょくが報告された。物流情報標準ガイドラインと各社フォーマットの差分を吸収するデータ変換ツールの開発、変換技術の活用を検討する。さらに、共同輸送の候補を抽出するツールについても、マッチングの効率化と見える化を狙い、北陸・中国地方での実証を予定する。また、化学品WGでは参加規模が87社に拡大したことを受け、法人化も検討課題となっている。手弁当運営の限界、知財帰属、中立性の確保が論点で、現行体制を継承しながら迅速な法人化も想定するという。
医薬品WGでは、帳票電子化分科会の進捗が報告された。伝票を電子化し、データを一元管理する構想。商品データの取得・共有は比較的進めやすい一方で、医薬品物流は小ロット・多頻度で、宅配便や路線便による1、2パレット単位の配送も多く、運送会社ごとの荷札対応や納品先ごとの個別ルールが実装上の壁となっている。現在の実証協力は中堅卸に限られており、社会実装に向けては大手卸の巻き込みが課題となる。
家電WGでは、これまでの検証を受けて共同物流の議論を本社単位のPoCへいったん移し、共通物流プラットフォーム分科会を4テーマに再編した。月末集中納品の見直し、返品ルールの明確化、パレット積載の推進、納品伝票の電子化を個別テーマとして扱い、標準化やレギュレーション整備を通じて短期的な成果創出を目指す。水平連携WGの議論は、こうした業界別の具体成果を、PI全体の標準化、共同物流、データ連携の枠組みにどう接続するかが焦点となる。
モーダルコンビネーションWGでは、鉄道コンテナ輸送を再設計し、トラック輸送と組み合わせる取り組み状況が報告された。同WGは4月のキックオフ以降、JR貨物関東支社とSustainable Shared Transport(SST、東京都中央区)を中心に検討を進めており、主なテーマは、鉄道コンテナ輸送をパレット単位に広げる「パレットレール便」と、平常時からトラックと鉄道を一体運用する「トラック・鉄道ハイブリッド連携」の2つだ。
パレットレール便は、5月7日からトライアルを開始した。従来はコンテナ単位が前提だった鉄道輸送をパレット単位で利用できるようにするもので、東京、熊谷、隅田川から新潟、南松本方面への計5区間で受け入れ可能な体制を整えた。WG参加企業との意見交換では、路線便の対応縮小を背景に、少量貨物の受け皿として期待する声や、環境対応として少量でも鉄道を使いたいという声が出た。一方、少量危険物への対応、着駅から遠い場合のリードタイムや価格面の課題、鉄道遅延時のケアなどが今後の論点となる。あわせて、同WGは国土交通省の「地域の事業者連携を通じた物流生産性向上推進事業」に応募した。JR貨物を幹事に、SST、埼玉県庁が参画する協議会を組成し、パレットレール便のニーズ調査を進める考えだ。
トラック・鉄道ハイブリッド連携では、鉄道寸断時に追加輸送力を手配するBCPスイッチと、鉄道とトラックを平時から組み合わせ、有事にトラック輸送力を優先順位に応じて配分するモデルを検討する。宇都宮―名古屋間を想定した、静岡貨物駅や北長野駅を拠点とするクロスドック案、東京―福岡を想定したトラックリレー案、東京―札幌を想定した船舶連携案が示され、このうちクロスドック案では静岡貨物で試験トライアルを実施した。今後は参加企業を募り、パイロットモデルの構築を進める。
地方共同混載配送検討WGでは、人口減少や高齢化が進む地方で、持続可能な共同混載配送モデルを構築する取り組みが報告された。同WGは、地方では単独企業による物流コストとサービスレベルの両立が難しくなっているとの認識を背景に、競争から共創へ視点を移し、収益性も含めて成り立つ物流モデルの確立を目指す。
今回の報告では、地方共同混載輸送の仮説を2、3か月で検証し、積載率向上や複数社の異業種連携の成立性、3年以内の完全自走を目標に据える方針が示された。コンビニ事業者と情報の取り扱いに関する宣言書の締結が完了し、7月から個別ヒアリングを実施する。対象は、常温、冷蔵、冷凍の三温度帯における現行運用、発着地点、時間軸、物量などで、現状物流を再現したうえで費用感やリードタイムのギャップを明確にする。
体制面では、ヤマト運輸主導の取り組みが個社の営業活動と見られないよう、外部の推進役を加え、全体計画や進捗、課題管理を中立的に担う体制へ見直した。ヤマト運輸は引き続き、コンビニ各社との接点や地域物流事業者との連携、実装時のオペレーションを担う。
今後は、7月中にヒアリングを終え、8-9月に対象エリアと輸送ルートを決定する。10-11月にはフェーズ1の実装テストを計画しており、青森県下北半島での対応を優先候補に、四国や紀伊半島など他地域への展開可能性も検証する。なお、異業種連携では書籍業界とコンビニ業界を軸に現状物流の再現から始めることも報告された。

意見交換では、各WGの成果を個別実証にとどめず、荷主企業が自社の物流改善計画に取り込める形で示す必要性も議論された。特に、4つのWGはいずれも10月前後に実装・テストの山場を迎えることから、CLOの中長期計画に接続しやすい「実装メニュー」として整理する案が出た。あわせて、業界を越えた共同物流には、データや商品定義をそろえる共通言語としての標準化が欠かせず、PIMMを共通の物差しとして活用する意義も確認された。
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