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荷主の行動変容とデータ活用、TDBCで成果検証

2026年7月13日 (月)

ロジスティクス運輸デジタルビジネス協議会(TDBC)は10日、オンラインイベント「TDBC Forum 2026」を開催した。同フォーラムでは、TDBCのワーキンググループ(WG)が進めてきた実証の成果をはじめ、物流政策や経営をめぐる講演、荷主・物流企業による実践事例が報告された。

今回のテーマは「荷主が変わらなければ物流ではなく、経済が破綻する」。物流効率化に向けた制度整備が進む一方、荷待ち・荷役時間や積載効率、適正な運賃・料金の収受など、現場にはなお多くの課題が残る。フォーラム全体を通じて示されたのは、運送事業者だけに改善を求める段階から、荷主を含む関係者がデータを共有し、物流の仕組みそのものを変える段階への移行だった。

TDBCは2016年に発足し、物流、旅客、建設の事業者に加え、荷主やIT企業、行政などが業界横断で課題解決に取り組んできた。設立10周年を迎えて200社を超える企業・関連団体が参加しており、WGで生まれた仕組みを実証にとどめず、実際の業務で利用できる基盤へと育てることを重視している。

物流分野のWG報告では、WG05において、車両の位置や運行状況を共通化する動態管理プラットフォーム「traevo」(トラエボ)の活用を軸としたA、B、C、3つの分科会における取り組みを発表。共同輸送の拡大、積載効率とCO2排出量の可視化、青果物流の効率化という3つのテーマが検証された。

共同輸送を扱うWG05Aは、荷主企業の輸送ルートを登録し、往路と復路などで組み合わせ可能な輸送を探索する「traevo noWa」の利用拡大を進めた。利用企業は増加しており、今後は単なるマッチングサービスではなく、企業が共同輸送を検討するための共通インフラとして定着させられるかが焦点となる。

WG05Bは、traevoに集約したデジタルタコグラフの運行データと、荷主の出荷実績データ連携について報告。積載率、実車率、CO2排出量を自動で算定する仕組みを検証した。データ形式の違いや取引先情報の機密性といった課題は残るものの、現場に新たな入力作業を求めず、既存データから物流効率を把握する方向性を示した。

WG05Cは、輸送力不足の影響が大きい青果・生鮮物流を対象とした。産地、市場、物流会社、販売先の間で集荷・配送情報が分断され、電話や紙による属人的な手配が残る実態を整理。輸送ルートや貨物情報を関係者が共有することで、小ロット貨物の集約や共同配送につなげる構想を示した。

これらは対象業界や手法こそ異なるが、車両と貨物の情報をつなぎ、個社ごとの運行管理を企業横断の輸送最適化へ広げる試みと位置づけられる。

荷主と運送事業とのパートナーシップをテーマとするWG04では、バース予約システムを導入しても、運送事業者が希望する時間に予約できず、別の形で待機が発生している可能性を検証した。

予約希望時刻と実際の予約時刻のずれや、荷量・荷姿を考慮しない一律の予約枠などを分析し、単に入退場時間を測定するだけでなく、待機が生じる原因に踏み込んだ。今後は事前出荷情報なども組み合わせ、荷量に応じた予約枠の設定や作業能力との調整を目指す。

同WGでは本田技研工業も取り組みを報告した。GPSデータから入退場時刻を自動取得するシステム活用で、ドライバーに手入力を求めず、まず全社共通のデータで実態を把握したうえで、拠点ごとの待機要因や施設面の改善につなげる考えだ。

このほかWG02は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)など乗務員の健康課題を安全運行の基盤と捉え、具体的な対策や事例を会員間で共有する活動を報告し、デジタル化の対象を車両や貨物だけでなく、乗務員の健康や働く環境まで広げる。また、WG01は安全運送の文化醸成、03は外国人ドライバーの採用、06は運送業の現場DX(デジタルトランスフォーメーション)におけるAI活用、08は無人AI点呼、09は運輸事業者のSDGs取り組みについて報告。07では建築業における超遠隔技術による無人化施工の状況が報告された。

▲経産省・平林孝之氏

WGの活動・成果報告のほかにも、物流の変化の中で荷主が果たすべき役割についての特別講演も行われた。経済産業省商務・サービスグループ流通政策課長兼物流企画室長の平林孝之氏の講演では、物流効率化法に基づいて全荷主に求められる取り組みを再確認し、フィジカルインターネット実現を見据え、一部の大手荷主だけでなく、物流に関わる幅広い事業者が取り組むべき課題であることを解説した。

ローランド・ベルガーの小野塚征志パートナーは、物流危機への対応をコスト管理にとどめず、企業競争力を左右するロジスティクス経営として捉える必要性を指摘した。物流部門だけで完結させず、調達、生産、販売を含むサプライチェーン全体を経営レベルで再設計することが、荷主企業の重要課題になるとした。また、国土交通省関東運輸局茨城運輸支局の田中幸久支局長は、元トラック・物流Gメンの視点から物流関連制度の動向を説明。計画や報告書を作成すること自体を目的とせず、取引条件や運賃、荷待ちなどの実態改善につなげることが問われるとの認識を示したほか、国土交通省物流・自動車局物流政策課課長補佐の原田とも氏による、物流標準化をテーマとした講演も行われた。

そのほか、「事例セッション」では、企業が個別に進めてきた物流改善を、他社や業界全体との連携へ広げる動きが紹介され、サントリーロジスティクスは、鉄道や内航海運へのモーダルシフトに加え、他社貨物との共同輸送を専門組織で推進している。同社グループの貨物だけを効率化するのではなく、自社の輸送ネットワークと他社の貨物を組み合わせることで、輸送力の確保と積載効率向上を両立させる取り組みを報告した。

加工食品分野では、味の素、ファイネット、ウイングアーク1stが、伝票や輸送イベントのデータ標準化を報告した。個社ごとのデジタル化から、メーカー、卸、小売、物流会社が共通の形式で情報をつなぐ段階へ進めるもので、CO2排出量、積載効率、在庫、トレーサビリティーの可視化を目指す。26年度からはTDBCとのデータ連携も検討し、業界標準の社会実装を進める。

今回のフォーラムでは、まだ限定的な実証や参加企業間での運用から、荷待ち、共同輸送、積載効率、脱炭素、健康管理という個別課題を、共通データと企業間連携によって解こうとする方向性は明確になった。

制度に対応するために数字を集めるのではなく、集めたデータを荷主と運送事業者の対話や業務改善にどう結びつけるか。TDBCの活動は、物流DXを個社の省力化から、業界横断の仕組みづくりへ移す段階に入りつつある。

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